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遼州戦記 司法局実働部隊の戦い 別名『特殊な部隊』と悪魔の研究  作者: 橋本 直
第二十一章 『特殊な部隊』の不死のヤンキー
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第51話 身近すぎた不死人

「嵯峨警部!見つけました!アドレス転送します!たぶん今、西園寺大尉が映している映像より鮮明だと思いますので現場の状況が良く分かると思います!」


 ラーナはそう言って端末のキーボードを叩いた。同盟本部ビルの周囲に設置された監視カメラの映像が、茜の取り出した携帯端末の上空に複数の小さな窓となって浮かび上がった。

挿絵(By みてみん)

 その中央……路上を衝撃波で薙ぎ払い、パトカーを軽々と吹き飛ばす『それ』の姿があった。


 かつて人間だった面影は一片も残っていない。無数の肉塊が絡み合い、脈動しながら、ゆっくりと芋虫のように地面を這い進んでいく。


「……嘘だろ」


 島田が立ち上がった。強張った拳が震えている。恐怖ではない、迷いを振り切る覚悟の震えだった。


「馬鹿野郎!今さら行ってどうにかなると思ってんのか!?」

挿絵(By みてみん)

 隣のランが声を荒げる。ランを尊敬してやまない島田はその言葉で一瞬我に返ったように立ち止まるが、それでもすぐに怒りの表情を浮かべて部屋を出て行こうと歩き出した。


「ここから都心までどうやって行くつもりだ?神前に干渉空間を使えって命令する気かよ!今の神前じゃあの場所に正確にオメエを飛ばすなんて無理だ!諦めろ!」


 本来ならば自分が飛び出すタイプのかなめが怒りの表情を浮かべたライダースーツ姿の島田にしがみついた。黙ってふてくされたような顔をして止めに入るサラを見て島田は我に返ると感情を殺したような視線を向けた。


「どうしたのよ正人!カラオケボックスに居た時からそう!このところらしくないわよ!いつもだったら『怪獣ショーみたいだね』とか言って笑ってるところじゃない!どうしたのよ!」 

挿絵(By みてみん)

 サラがそう言って出て行こうとする島田の手を握った。いつもならムードメーカーとして笑い飛ばすような調子の島田の変調に場は彼を中心に回り始めた。


「ああ、アメリアさん……ナイフ持ってますよね?神前でもいいわ。二人ともプラモを作るからニッパーとか刃物系のもの、持ち歩いてますよね?それがあると分かりやすいんで……俺がなんでこんなに腹を立ててるかを」 


 唐突に島田はそう言うと真剣な表情でアメリアを見つめた。


「腹でも切るのか?ここは甲武じゃねえし、オメエは『サムライ』じゃねえんだから。確かに甲武の武家は腹が立つとすぐに腹を切りやがる。公家のアタシには連中の行動は理解不能だ」 


 笑えない冗談を言うかなめに島田は力の無い笑みを浮かべた。通信端末の画面の中では空中に滞空して肉の塊と化した法術師の成れの果てと戦っている東和警察の法術対応部隊の映像が映っていた。しかし、編成されたばかりで戦闘に不慣れな東都警察の法術師達の部隊は空中に停止する能力があるというだけで何の効果的な攻撃能力を持っている訳でもなかった。ただ、空中から銃を撃ってそのすべてが肉塊の生成する干渉空間に弾かれて終る。この法術師の慣れの果てがこのような実力の法術師では太刀打ちできる相手ではないことは誰の目にも明らかに見えた。


「東都警察もやってるんだがね。法術師の空中行動ってのは結構な技量が必要なんだが……所詮はそこまでしかできねーってことか。ただ飛べるだけって言うんだったら見世物にしかならねーぞ。アタシ等を外して全部自分達にまかせてくれって見栄を張ったがいいがこりゃあただ遼州人は空も飛べるんですよって地球人に教える為だけの役にしかたってねーじゃねえか。一体連中は何がしてーんだ?自分の実力ぐらいわかっとけ!」 


 ランの言葉にしばらくかなめに押さえつけられていた島田が気がついたように映像に目をやった。


「落ち着いたか」 


 羽交い絞めにしていたかなめが力を緩めたので島田はどさりと床に倒れこんだ。


「ハイこれ。これなら何を切りたいか分からないけど大抵のものは切れるわ。下手なことに使うんじゃないわよ」 


 そんな島田にアメリアはポーチから出した小型ナイフを渡した。島田は情けない顔でアメリアを見つめた。


「馬鹿なことをするんじゃないぞ」 


 かなめが口を開くよりも早く島田は左手の手袋を外した。


「何する気だ?」 


 ニヤリと笑いつつ外した手袋をテーブルに置いて島田はナイフを右手にしっかりと握った。

挿絵(By みてみん)

「まあ、見ていてくださいよ。たぶん一瞬なんでよく見て無いと分からないかもしれませんから」 


 カウラの言葉にそう答えると島田はそのまま左手の手首をかざしてそれにナイフを突き刺した。


「自殺か!自殺志願者か……?リストカットって何かアタシ等に不満でもあったのか?」 


 そんなかなめの声は手首にナイフを突き刺しても一切血が流れないという状況で沈黙に変わった。


「やっぱりこんな小さいと分かりにくいですよね……一瞬だから分からないと言ったでしょ?血が出てない。すぐに傷口がふさがっちゃうんですよ。だからこんなもんじゃわかりにくいかもしれませんね……もう一度やります?痛いから嫌なんですけど……」 


 島田の顔が痛みにゆがんでいた。手首を切り裂いたはずのカッターナイフの刃には血の跡すらなく、切り裂かれたはずの手首には何の痕跡も残っていなかった。


「やっぱりお前も『不死人』なのか……だから隊長が不死人だって言った時に変な態度を取ったのか……」 


 カウラの言葉に島田がうなずいた。そしてようやく納得が行ったように頷いたかなめが静かに島田の肩を叩いた。場は一瞬にして島田の笑顔で静まり返った。


 『不死人』と呼ばれる不老不死の存在。誠も存在は知っていた特殊な能力者。宇宙空間に放り出されても蒸発と再生を繰り返しながら生命を維持することが可能とまで言われる不死身の存在。島田がそんな存在として誠達の前にいた。


 そして画像ではそんな兵士を作り出す過程の失敗作のグロテスクな形の意志すら持たない化け物が相変わらず空を飛べるだけの東都警察の法術師の銃弾を浴びていた。


「とりあえず分かった。でもなあ、一人で突っ走るのはやめてくれよな……死なないオメエは良い。それ以外のアタシ等が迷惑する」 


 そう言うとかなめはナイフを島田から奪い取った。その視線がようやく島田のおかしな態度に得心したと言うように一度つま先から頭の先まで彼を眺めて見せた。


「お前が言うと説得力があるな、西園寺。暴走は貴様の十八番(おはこ)だものな」 


 突っ込むカウラを無視してかなめはラーナの端末の画面に映している機動隊と化け物の戦いに目を向けた。地上から迫る機動隊の対人用銃器は化け物の進軍を止めるどころかその攻撃に敵を認識した化け物はそのまま機動隊の走行車両の群れに突き進んでそれを簡単になぎ倒して機動隊を蹴散らした。


「こんな化け物。その同類が部隊にいるなんて気持ちが悪いでしょ?隊長やクバルカ中佐みたいに力が有って何かしらの根拠があれば納得してもらえるでしょうけど。俺には力が無いんです。神前の野郎みたいに剣を出したり、ひよこちゃんみたいに人を治したりできるわけでもない。ただ死なないだけ。ただ怪我の治りがやたら早いだけ。気持ち悪いでしょ?そんな存在。たぶんあの現場に行っても俺は何もできませんよ……そう、何も……」 


 島田の言葉が震えていた。誠は周りを見回した。だがそこに居る誰にも島田への恐怖などは感じられなかった。そして、誠自身も島田が恐れているような心の変化はまるで起きていないことに気付いた。


「何を言うのよ!馬鹿!」 


 サラの平手が島田の頬を襲う。だが、島田は避けることなくそれを受け止めた。


「お前、それが怖くてアタシ等を避けてたのか?死なない兵隊?良いじゃねえか。まさに『不死身のヤンキー』の二つ名は伊達じゃ無かったってことだ」 


「くだらないな……そんな事なら隊長やクバルカ中佐はどうするんだ?二人の気持ちを貴様は考えたことが有るのか?」 


「いいじゃないのそんなこと。今更、法術師の一人や二人増えたくらいで驚く私達とでも思ってたの?馬鹿にしてくれたわね。でも島田君がいくら殴られても平気な理由が分かってよかったわ。これからは何かあった時は(おとり)として何の遠慮も無く使えるもの」 


 かなめ、カウラ、アメリア。それぞれに一言で島田の神妙な顔に応えた。見上げる島田の目に涙が光っていた。


「それならお父様も嫌われなきゃいけないわね。あの人もそれまで封印されていた使用可能なほとんどの力はアメリカ軍の実験で失われている。死なないだけの存在って言うならお父様もかなりその状態に近いわ……今は確かに一部の力は戻ってきてはいるけどどれも自分で完全に制御できる能力は失われている。島田君よりあの肉塊に一番近いのは『特殊な部隊』ではお父様ですもの」 


 茜はそう言って微笑んで見せた。


「でも本部では嫌われてるな。まあ、あれは不死であろうが死ぬ人間であろうが関係なくあんな生活と態度を取ってれば本部の人間だって嫌みの一つも言いたくなるってものだ」 


 茜の島田へのフォローはカウラの正確な嵯峨の性格の分析で台無しになった。


「カウラ。それは言わない約束だろ?そんなことみんな知ってることなんだから」 


 茜に声をかけるカウラの言葉が変な方向に向かっているのをかなめがたしなめると言ういつもには無い奇妙な光景がそこに展開された。そこにはいつもの彼女達の平静な態度が戻ってきていた。


 死ぬことも、年をとることも出来ない不完全な生き物。それは嵯峨が自虐的に自分を評するための言葉だと思っていたが、誠に一番近い先輩と言う立場の島田がそんな存在だと分かると誠の頬に自然と笑みが浮かんで来た。


「なんだよ皆さん妙に冷静じゃないですか。知ってたんですか?俺が死なないってこと知ってて黙ってたんですか?」 


 島田は涙声でそう言いながら立ち上がった。


「そう言うお前も神妙な顔での告白の割には冷静じゃないか。あのさっきの画像を見てた表情。今にも泣き出すんじゃないかと心配したぞ。ただ、貴様のタフさは異常だとは思ってはいた。一週間も寝なかったらたとえ戦闘用人造人間の私でも身体がもたない。それを貴様は『疲れた』の一言で済ませてしまう。異常な体質の持主だと言う認識はあった」 


 カウラの言葉にかなめもアメリアも大きくうなずいた。


「そうよ、島田君が喧嘩をしたとかバイクでこけたとか言って寮に帰って来た時、服はボロボロなのにほとんど無傷だったじゃない。そんなの月に一度は見せられたら誰だっておかしいと思わよ」


 アメリアはいつもアルカイックスマイルで島田を見つめた。まじまじとアメリアの糸目に見つめられて島田は思わず照れ笑いを浮かべていた。

 

 それを見て茜は安心したように再び端末の画像に視線を移した。次々に地上に展開して干渉空間を張ってなんとか肉塊の侵攻を止めようとする東都警察の地上に待機していた別の法術対応部隊の防御網を突破して暴れまわる肉の塊が優勢に見えた。それでもなんとかその無茶苦茶な進軍を止めようと今度は一般の機動隊が新たな装甲車両を持ち出して機関銃で応戦する死闘が続いていた。


「東都警察が法術対応部隊と言う切り札を切るだろうということもたぶんこの化け物を作った人達も予想していたと考えるべきですわね。でも、見たところまだこの『不死の兵隊』は見た目ばかりでなく制御能力、そして再生能力の面でも不完全ですわ。さっきの島田君みたいに切ったらすぐに塞がってしまうような再生能力は無いみたいで、銃器の攻撃が当たるとその部分の再生には時間がかかるみたいですしね。流れ弾でも当たったんでしょうけどあの塊のあちこちから体液が流れ出ているのが見えますわ……これを作った人の技術はまだ『不死の兵隊』の完成には程遠い」


 画像で、若干とは言え東都警察の銃器による攻撃のダメージを受けている化け物を観察していた茜がそう言った。


「この程度のものが開発目的だとすれば、もし(わたくし)や誠君、それにクバルカ中佐やかえでさんクラスの法術師の攻撃には耐えられないでしょうし、現在東和陸軍で開発中の対法術兵器を使えば簡単に排除されてしまう。このテロを企んだ人間は何がしたかったんでしょう?確かに東和陸軍には治安出動の権限がないから東都警察だけを相手にする事になると考えればこの程度の能力で十分かも知れませんが、時間さえかければ東都警察でもこの事態は十分収拾できると思いますわよ。先ほどから明らかにこの化け物が展開する干渉空間の強さは弱まっています。確実に東都警察の攻撃は効いているんです……もし同盟厚生局の目的が同盟機構本部ビルの破壊にあるのならあまりに無謀……と言うかこの行為はまったくの無意味です」 


 誠もその茜の言葉の意味が分かっていた。嵯峨の情報網にすら引っかからない巧妙な秘匿技術を持った特殊な研究開発組織。それが確実に時間稼ぎにしか使えない法術師をこのタイミングで覚醒させて見せた。それがこれほどのすぐに東都警察に包囲されることが確実な都心部という場所を選んで現れるにはそれなりの理由があることはすぐに分かった。


 そもそも同盟機構内部でも同盟厚生局は医療を管轄する組織である以上、予算的には優遇されている組織である。同盟機構内部でも遼州同盟を地球圏から守るというその発足の目的から一番優遇されている同盟軍事機構に次ぐ組織が同盟厚生局だった。その組織が自分達に一目置いている同盟機構本部ビルを襲撃する理由がまず無い。この化け物がこの場所で起動する意味は同盟機構に対する敵対行為などではない。その事だけはこの場にいる全員の共通認識だった。


「ここでトラブルを起こす必要があった。ここでないと意味がなかった。だから同盟厚生局はこの場所を選ばざるを得なかった。ここである理由は同盟厚生局自身には無いんだ。動くだろうな、この事件のきっかけを作った別の奴が。こんな目立つ場所で騒ぎを起こすことを望んでいるこの化け物に対抗する、いいや、それを上回る法術研究の成果と言うものを持った奴が……それこそさっき茜が名前を挙げたうちが誇る法術師達と互角にやりあえるクラスと勝負できるのが出て来るぞ……同盟厚生局も技術自慢かも知れねえが利用されてるんだよ……だから本来こんな場所でやりたくないのにこの場所でこの化け物を起動させた。これから出てくる本命の『使える』法術師を作れる連中の技術力を誇示するためにな。そいつ等には同盟本部ビル前で自分達がこの化け物に勝利することに意味が有るんだ……だからそいつ等はこの場所を選んだ……そして同盟厚生局も嫌々この場所を選ばざるを得なかった……」 


 そんなかなめの言葉で画面に目を戻すと、機動隊の正面でぼこぼこと再生を繰り返していた肉の塊が突然半分に千切れた。


 そんな威力のある『光の(つるぎ)』を使える法術師が東都警察に居るという話は東都警察の内情に詳しい茜も知らなかったのでその顔は驚きに包まれていた。一方、ランは難しい表情を浮かべたまま画面を黙って見つめていた。


「西園寺、本命の登場だ。コイツもアタシ等の敵だ。そしてこの同盟厚生局が『不死の兵隊』を目指して作り上げた何にもできない肉塊なんかよりはるかに手ごわい相手だ。なるほど、同盟の偉いさんにこれを見せたかったわけか……同盟の無力さを思い知らさせるためにな」 


 そう言ってランは見切ったように端末に目をやった。そして誠も彼女の考えを理解したいと思って画面に目を向けた。


『ぐおうおおおお……』 


 うなり声を上げるかつて法術師であったもの。そして周りを警戒する機動隊の法術師達は空中でどこから訪れるのか知れない第三勢力への警戒を開始した。


 画面には時折、肉塊の周りを舞うような人影が見えた。ただ、その速度があまりに早いためにカメラはそれに追いつくことが出来ないでいたため、その姿は断片的にしか画像には映らなかった。


「なるほどねえ。ドローンカメラがついて行けないような動き、完成され過ぎてる。まるでかえでの戦い方を見ているようだ。勝負は初めからついてるな。あんなバケモンを作る必要が無い程度の技術を持ってる連中がいる。このバケモンを造った連中……十中八九同盟厚生局だろうが、連中は当て馬にされたんだ。アタシ等の捜査は噛ませ犬製造研究所を必死に追ってただけ。この完成された法術師を作った連中に言わせればすべてが無駄だった……そんなところか。同盟も、アタシ達も結局はこいつ等の敵じゃねえ……それを示して見せたかったわけだ」 


 かなめの言葉に合わせるようにして宙に浮いている東都警察の法術対応部隊が次々と影さえ見えない新手の法術師により撃墜されていく。時折その動きにドローンカメラが追い付いて映る黒い影の数から、その法術師が三人いることが分かった。


「完全に覚醒した法術師を作る技術……西園寺さんの言う通り、これは別組織ですね。これならば確かに即、僕達の敵対勢力として対抗することが出来る。しかも、この動きに対応するなんて僕じゃ無理ですよ。最低に見積もっても茜さんクラス。下手をすればその上の日野少佐と互角クラスかも」


 誠はその影の正体を理解した。干渉空間と時間スライド法を使えるだけの力量を持った法術師が三名、化け物と機動部隊員の両方に攻撃を開始していた。そんな事が出来るのは『特殊な部隊』でもかえでとランくらいしかいない。


「でも非合法研究の成果のデモンストレーションにしたらやりすぎよね。この化け物を作った組織、まあ同盟厚生局なんだけど、そことデモンストレーションをしている完成された法術師を作った組織って息が合ってるのかしら?私には到底そうは見えないんだけど。わざわざ負けて相手の引き立て役になるために出てきたってわけね……しかもその連中がこの場所を同盟厚生局との戦いの場に選んだということはこの組織は同盟機構そのものを敵とみなしている……それだけは確実に言えるわね」 


 アメリアの言葉もむなしく地上からの一斉射の弾丸が完成された法術師にいとも簡単に叩き落されていく光景が画面を占めることとなった。


「どちらも相当派手好きなんだろ?この化け物を作ってる同盟厚生局の連中も、法術師を作ったどこの誰とも知れない人間も。まあ、見ている限りこの法術師を作った連中が同盟に恨みがあるのは間違いなさそうだけどな」


 そう言いながらかなめはいつもの残酷な笑みを浮かべていた。


「派手どころか……ある種、狂気を感じるな。こんなところでその力を見せたら普段、クバルカ中佐が言うように法術師は手の内を明かしたら終わりと言うじゃないか。その手の内を全部明かしてる。一体何がしたいんだ?同盟機構に喧嘩を売るにしてもやりすぎだぞ」


 カウラのその言葉に一同は唇を噛み締めつつ頷いた。


「そうさ、どこかで悦に入りながらこの光景を眺めているだろうな……完成された法術師を作った連中は。一方、不完全な『不死の兵隊』しか作ることのできない同盟厚生局はそれこそ地団駄踏んで悔しがっている事だろう……これほど技術の差があると同盟厚生局の連中が哀れにすら思えて来るよ。そしてこの完成された法術師を作った連中は次には同盟本部ビルを直接襲うかもしれねえな……そんなことまで思えてくるほどそいつ等の技術は高い」

挿絵(By みてみん)

 かなめの言葉に誠はその残忍な研究を指導する指揮官を想像して自然と鳥肌が立つのを感じていた。


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