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「ねえ?私が年を取って皺皺のよぼよぼのおばあちゃんになってもずっとずっと好きでいてくれる?」
「なんだよ急に・・・ん~~君が皺皺のよぼよぼのおばあチャンだったら、僕も皺皺よぼよぼのおじいちゃんだね。ずっと一緒だ。これまでも、これからも変わらず愛している」
少年から、青年へと階段を上ろうとする若木のように美しい少年。
二人は思わず周りが照れくさくて叫びたくなるような話をしていた。
「じゃあ、私が別人になっちゃったら?すごく性格が最悪なの。あなたが他の誰を見るのも嫌で、四六時中べったりなのよ。束縛だってするし、毎日我が儘ばかり」
「それは返って嬉しいかも・・・・。君の最悪ってその程度?それなら僕は君を連れ歩こう。片時も離れることがないように、ずっと手をつないでいよう」
「だったらすごく楽しいわね。どこへだって一緒にいけるわ」
「今も、これからもずっと一緒だよ。来世があるならその来世さえ。
きみこそ僕が嫌になるかも・・・」
「そんなことありえないわ。私はあなたの何もかもが大好きよ。そのつややかな銀の髪も。吸い込まれそうな蒼の瞳も。甘い言葉を紡ぐ唇も。私を抱く腕も。抱きつきたくなる広い背中も。」
「僕もその輝く黄金の髪や碧の瞳、どんな甘露より甘い唇に、僕のためにあつらえたかの様に腕に添う身体も。何より君のそばにいると幸せを感じるし、優しいが時に僕を振り回す性格も、何もかもを愛しているよ」
「私、あなたのためなら何でもできるわ。きっと空だって飛べる。」
「じゃあ僕は君のために争いのない世界を創ろう。きっと君のためなら世界をこの手にできる」
「ふふ。私たち無敵ね。でも怪我したらやあよ?」
「大丈夫さ。怪我したら君が付きっ切りで看病してくれるんだろう?」
「もちろんよ。私の手料理だって振舞っちゃうわ」
「・・・・」
「なあに?その微妙な顔」
「君の手をわずらわせなくても、我が家には料理人がいるから大丈夫だよ」
「手料理は食べられないってこと?」
「・・・・・」
「ふ~~~~ん」
「っぷ。だって君の作るものは芸術性に富みすぎて、キッチンが壊滅してしまうじゃないか!!」
「練習するわ!そのころには上手になるもの。そのころ後悔しても遅いんだからね!!」
「ごめんごめん。」
「・・・・・」
「君が料理ができなくても大丈夫。美味くなるまで待てるだけの時間があるだろう?
僕たちはずっと一緒だよ」
「・・・それだけ?」
「きみ意外見えない」
「ふふ。後は?」
「結婚しよう」
「けっこんね」
「受けてくれる?」
「結婚?!」
「ああ。これからも、僕の隣にいて欲しい。互いの気持ちだけでも充分だけれど、世間のみんなに僕のものだと言わせてくれ」
「・・・・」
「ジュリア?」
「嬉しい」
「え・・」
「嬉しい!!って言ったの!!ああ、ハイル愛してるわ!!私あなたの奥さんになれるのね!」
「僕が成人する秋がきたら、義父上に挨拶に行くよ。そしてきみの大好きなカルニーチェの花が咲き乱れる春に式を挙げよう」
「素敵ね。三年年経てばあなたの伴侶になれるのね」
「たくさん僕の子供を生んでくれ」
「もちろんよ。幸せな家庭を築きましょうね」
美しく咲き乱れる花々に囲まれ、二人は箱庭で永遠を約束した。
世界に互いだけしか見えない二人の、幸せすぎる誓い。
誰もが温かくて、思わず微笑んでしまうような幸福な風景だった。
そこには忍び寄ってくる暗闇の足音などまだ何も聞こえてはいなかった。