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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

どうせ初ボスのフランソワ

作者: 山田 勝

「サバゲニキ!銃飽きた。軍隊格闘技で戦っていい?」

「ダメだ。でも、チョロいな。ナイフで戦うのならいいよ。ナイフスパーの最終テストだ」

「なら、僕もいいよね」

「危なかったら俺が銃で撃ってやるから実戦で覚えろ」




 ああ、チョロい。俺たちはサバゲ中に異世界に転移をした。

 実銃で殺し放題だ。

 領主同士の争いに雇われて、俺たち三人だけで数千の軍勢の働きをしているよ。



「そのナイフは俺が考案したのだ。ククリナイフを参考にしてな。視覚的にどう扱って良いか分かるようにした。日本じゃ銃刀法違反だと言われて皆にボコスカ叩かれたけどな」


 この世界ならやりたい放題だ。皆、それぞれ好きな銃を扱い。・・・・


 カチャ!カチャ!


「サバゲニキ、銃の動きが悪くなった・・そろそろ交換しようか?」

「ああ、そうだな。この森を抜けたら交換しようか。敵も俺たちを恐れて後退したな」

「食事にしよう」



 ・・・日本において、銃を扱う公務員以外で銃を習熟しているのは猟友会とヤクザのみと言われている。ヤクザが密輸した銃を何十年も使えるように整備をしているのは、時々、ヤクザの発砲事件が報道されることから推定されるとされている。



 しかし、彼らは知らなかった。軍隊の本質を。

 軍隊は古今東西を問わずに革新的だ。

 敵が新兵器を使ってきたら少なからず現場で対処する能力があるのだ。


 ウクライナ戦争で嘲笑されていたがロシア戦車に対ドローン対策の柵を設ける姿が映像で流れている。現場の兵にとっては命がけなのだ。

 この世界においても・・・


「森を抜けたな。ここからは平原だから楽だ・・・何だ。平原に荷馬車が円を描いて止っている!荷馬車には丸太が乗っている。内側に兵がいるのか」


「サバゲニキ、これは対騎兵戦術だよ。これでローマ軍を撃退したゲルマン民族がいたよ。エヘン、僕は戦史マニアなんだ」

「馬鹿、知っている。とにかく撃て!」


「「もちろん」」


 しかし、彼らの銃弾は通らなかった。





 ☆☆☆敵陣営



 ダダダダダ!


「これが、死の咆哮、鉄礫が飛んでいる音ですな」

「やっぱり、鉄礫は丸太を通さないな」


「ドレーク隊長!一番隊準備出来ました。バブかけ完了です」

「よし。奴隷隊に訓示、奴らを討ち取ったら奴隷身分から解放する。今日から市民だ。行け!」


 彼らは奴隷を特攻させる戦術を選んだ。

 バブをかけて、若干の治癒能力が施されている。


 しかし。


「やっぱり一番隊は全滅か」



「・・・命中率は300メートル超えると途端に悪くなる」

「過去の文献によると木の幹には貫通しない。池に飛び込んだ者は助かったと言います」


「都の賢者の話だと、鉄礫は早いが軽い。密度って奴が厚いものは通しにくいとのことです」


「そうか・・・編成を急がせろ。100人特攻させて弾切れを起したら、本隊がロングボウで一斉射撃だ。ほら、奴ら、弾を入れる動作をしているぞ」


 時間が過ぎ。奴隷達の数も少なくなった。


「81番から90番はここで待機。残りは・・・99・・100、あれ、101人いるぞ。おい、調達官、買いすぎでは?奴隷1人につき銀貨3枚だ。予算無駄にするな」


「奴隷商がおまけしてくれたのですよ。小さい子だし、おまけに栄養失調だって」

「まあ、いいか、こいつにもバブをかけろ!1人で突っ込ませる」

「了解です」


 名もなき1人の少女がいた。彼女も特攻作戦に参加させられた。





 一方、転移者達は始めはいつもの殺戮ターンになるかと思ったが焦燥が顔と態度に現れ始めた。



「はあ、はあ、はあ、皆、老人と子供じゃないか?マガジン間に合わないよ!」

「サバゲニキ、どうしたら良い」

「セミオートだ。一発一発で殺せ!」


「あああ、奴ら一発じゃ死なないよフルオートで撃つよ!」

「馬鹿止めとけ!」


「5.56ミリ弾の設計思想は、一人を重傷にして助けに仲間3人が必要。つまり、一発で4人の戦力を無効化する・・・でも奴ら1人が怪我しても突っ込んでくる。馬鹿すぎて設計思想が間に合わない感じかな?」


「馬鹿、こんな時にもウンチクか?手を動かせ。マガジンに弾を入れろ!」


「弾は何で自動で充填されないんだよ!これは欠陥転移だ!」



 ついに、101番目の少女の番になった。


「行け!これでおしまいだ!」

「さすがに100人では厳しかったな」

「でも、これで、弾切れを起したか確認する。ロングボウで一斉射撃か。こいつが突撃をしたら、丸太を積んだ荷車を前にして出るぞ」


「ほら、クソガキ行け!武器ももったいない。この短刀をもっていけ」


「はあ、はあ、はあ、はあ」


 短刀を持ち、特攻に出された少女は、よろけながらも3人の元に向かった。


「ああああ、何だよ。これは戦争なのだ、撃てよ、撃て!」


 ババババババ!

「馬鹿、フルオートやめとけって言ったろう!ウワワワワーー!」


 連射の反動に銃が躍り。

 奇跡的に弾は少女に当たらずに、止めようとしたリーダーに当たった。

 そして、もう一人は逃げ出した。


「同志討ちだ。転進だ。弾がない。建て直すよ。このクエストはキャンセルだ!」


「おい、待てよ。これは事故だよ!えっ!」


 少女が辛うじて肉薄をして、首を短刀で刺した。


「ギャアアアアーーーー!」


 少女はまるで家畜を屠殺するように首を斬った。村で狩りをしていた経験が役にたった。


「・・・これが武器。ボウガン?引き金は同じ?」


 少女は銃を取り逃げるもう一人に向かって撃った。


 バン!


「ギャアア!」


 少女は撃ったと同時に倒れた。体力を消耗した。バブは短時間だったのだ。


 やがて、隊長と側近達がやってきた。


「ほお、まぐれとはいえ。武勲だ。約束通り拘束の首輪を外してやれ」

「了解」

「そうだな。褒美はこのパンで良いであろう。ワシの食いかけだがな。白パンだ」


 少女の初報酬は食べかけのパンであった。


「では、君は今日から市民だ。まあ、明日には女神様の御許に行くがな」




 ☆一年後


 深夜の冒険者ギルドにあの少女が現れた。


「これ・・・」


 ドン!とギルドの受付に置かれたのはネームドの盗賊たちの首だ。


 当直の受付嬢は顔を青ざめる。


「ヒィ・・・こんな。受けてから、1日たってないじゃないですか?」


 奇妙な魔法杖を携えたソロの冒険者だ。

 名は・・・名簿を確認する。


「名はフランソワ・・・様。何故、少女なのに・・男の名?」

「受付嬢失格、名を男にすると敵は誤認しやすくなる。深夜に来たのもそのためだ・・狩人は正体を獲物にバレてはいけない・・・」


「そうだわ。ギルマスもいますの。あ、ギルマス」


「フランソワ、指命クエストが入った」

「断る。貴族嫌い」

「そういうな。相手は異世界人だ」

「異世界人?危ない奴?」

「その銃を使う危険な奴がこの近辺をウロウロしている。冒険者ギルドで乱射をした」

「そう・・・受ける」



 私は小さな村で生まれた。

 飢饉で村が全滅しそうになり。人買いに売られ。

 おまけとして、戦闘奴隷として戦わされた。


 あの日以来、奇妙な言葉が聞こえる。


『称号、剣で銃を倒した者よ。能力を授けます。現代武器召喚、魔力を対価に武器を召喚出来ます』


 お腹が減り良く村で狩りをした。

 段々とこの銃とやらの使い方が分かってきた。


 ドワーフに整備を依頼し研究してもらい。

 自分でも整備出来るようにした。


 銃は遠くから撃つことが出来る。





 ☆☆☆


 橋のたもとで商人風の男とローブを羽織った男が話をしている。

 まるで、商人が商談をしているように見える。


 しかし、2人は盗賊団の団長と不良転移者である。

 転移者はローブで黒髪と黒い瞳を隠している。冒険者ギルドで乱射をした転移者だ。


「はあ、また、フランソワだって?銃を使う?聞いたよ。それ俺にとっては初ボスってレベルだよ」

「へへへ、アポロン様なら大丈夫だと思いますがね。それを退治してくれたら、このギガント盗賊団の特別の幹部にして差し上げますぜ」


 畜生。俺は田中たなか阿呆論あぽろん、銃を使うチート能力者だが、皆がフランソワにはかなわないと鼻で笑う。


 だから、ちょっと能力を見せたら、おたずね者だ。もめごとは決闘でつける冒険者の世界ではないのかよ!

 この世界でも法律だらけだ。


「でもフランソワって、どうせ初ボスでしょう?簡単だよ。どこにいるの?」

「じつは姿が見えないのでさ。警護をして頂けたらいづれ現れるでしょう・・・ウグ!」


 ドン!と団長の体が揺れた。


「あれ・・」


 バン!

 俺の胸が熱い。


「え、俺、倒れているの!な、もしかして、撃たれた!」


 ここでおしまい!やだよ・・!



 ・・・・・・・



 フランソワは500メートル先にいた。


「・・・何で、彼らは近接だけで戦うのだろうか・・・」



 私は探している。あの時の隊長だ。

 奴隷使いのドレーク。

 傭兵団の長らしい。


 しかし、知識が足りない。


「お金を払うので文字を教えて欲しい」

「はあ、どうせ、銅貨だろ?」


 と頼むが誰もが首を横に振る。

 私は公式には駆け出しの冒険者、薬草探しのメリーだ。


 しかし、一人だけ話を聞いてくれた。

 聖女のお姉さんだ。目をキラキラ輝かせて承諾してくれた。


「感心な子なのです。薬草探しの子ですね。お名前は?」

「メリーです」

「私はロザリーなのです!」


「お金・・・」

「いらないのです!文字を覚えれば教典を読めるのです。これも布教の一環なのです」


 彼女から文字をならいクエストを調べる・・・

 領地争い。


「奴隷使いのドレーク・・?」


 こいつだろう。

 私はお姉さんあてに金貨の袋を冒険者ギルドに預ける。


 そして、ドレークが敵として係わるクエストを受ける。


「この依頼を受ける・・・」

「分かったわ。薬草探しね。つぼみを摘もうとする殿方がいるから注意よ」


 受付嬢も分かっている。隠語を使う。


 私は旅立つ。


 情報ギルドに寄り情報を流してもらう。


「え、フランソワがこのクエストを受けた・・・と流して欲しい?お嬢ちゃん。いくら何でも凄腕の暗殺者だ。お嬢ちゃんの身が・・・冒険者ギルドマスの紹介状?分かった」


 誰も私がフランソワ本人と思わないみたいだ。

 情報ギルドでは暗殺者のカテゴリーか。


 さて、行こうか。



 クエストの内容は、領地争いとか婚約とかいろいろややこしい。

 どこかの老貴族が伯爵令嬢を妾として寄越せと要求し。

 争いが勃発したが、令嬢側の騎士団は千に満たない。


 老貴族の軍は一万か。

 王家が裁定に乗り出したが、それまでに決着をつけるようだ。

 私は令嬢側だ。


 1万か・・




 ☆☆☆


 一方、老貴族側にはフランソワ暗殺の情報が届いた。


「はあ、はあ、はあ、死神フランソワが狙っている!奴は貴族嫌いで依頼はうけないのではないのか?」


「ご安心を、侯爵閣下、手はあります。奴は、遠方からの射撃一辺倒、300メートル周辺には見張りを配置しています。

 この丸太の陣地にこもれば勝ちです。今夜にでも令嬢に裸踊りをさせましょう」


「うむ。ドレークよ。頼むぞ」


「「「「ギャアアアアアーーーーー」」」

「化け物だ!」

「悪鬼だ!鉄の馬に乗っている!矢が通らねえ」



「何だ。外が騒がしいのう」

「喧嘩でしょう。見てきます。閣下はここを出ないで下さい」

「ああ、もちろんだ」


 ドカーン!


 な、何だ。丸太が爆裂した。俺たちも倒れた。中には木の破片が刺さっている者もいる。


 耳が聞こえない。しかし、煙の中から子供ぐらいの背の・・・銃を持っている奴が現れた。


 ま、まさか、フランソワ、奴は遠くからの射撃のワンパターンではないのか?


 全身マダラ模様で、鉄兜もマダラ模様だ。顔も仮面で隠している。目はドワーフの工房眼鏡か?

 手には銃を持っている。姿はまるで悪鬼だ。


 バン!


 奴は侯爵を殺し。

 そして、俺には、


「ウグ、これは何だ!」


 口に食べかけのパンを突っ込まれた。


「まさか、お前は、あのときの少女・・・」


 バン!



「フウ、逃げるか」


 私はバイクに乗り。このままかける。防弾チョッキ、レッグガード、アンクルガード、あらゆる防具を身につけたが、矢は刺さらないが痛かった。


 弾倉は一つを切ったが、追ってくるものには手榴弾や残りのTNT爆薬を投げつける。

そう言えば、何故、転移者は銃一辺倒なのだろう。異世界には殺す武器が沢山あるが考えても仕方ない。


 これで追ってくる者はいなくなった。



 復讐か?それともこの世界に対する憤りか。

 感情がわいてこない。


 それから、私は・・・依頼主に会わずにそのまま冒険者ギルドに帰った。





 ☆☆☆冒険者ギルド



「スゲーよ。フランソワ、悪辣侯爵を討伐したってさ。それも一人でだ!」

「ああ、フランソワって平和の意味がある。どんな冒険者なのだろうか?」

「大男で異世界の騎士との噂だな。いるんだな。正義の冒険者って」



 皆は、感動に浸っている。

 意味が分からない。あっ聖女様だ。



「メリーちゃん!いた!大変なの。あれから金貨のお布施があって・・」

「ロザリーさん」

「でね。貴方、何歳?」

「12歳・・・」

「なら、私の孤児院に行きましょう!」


 私は一日中、如何に殺すかばかり考えるようになった。聖女ロザリーが眩しくてしかたない。


「いい・・・」

「まだ、教えきっていないのです。今度は手紙の書き方を教えるのです」


「そうだ。メリーはロザリーの孤児院に下宿しなさい」

「ギルマス」


 ギルマスが介入してきた。

 小声で言う。


(あれから貴族の問い合わせがひっきりなしだ。王家も関心を示している。隠れなさい。道具はギルドで預かる)


 仕方ない。これも身分を隠すためだ。


「でも・・仕事がある。時々抜けるけど、それで良いなら・・」

「そうだ。聖女殿、メリーにはギルドのお使いも頼んでいるのだ。ほら、メリーは足が速いから」

「やったのです!メリーちゃんはうちの子になったのです!」


 聖女様の笑顔を見たらうれしい気持になったのは何だろう。


 まだ、この世界は捨てた物ではないのかもしれない。




最後までお読み頂き有難うございました。

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