15 聖長針 時刻(とききざみ)
チョウ、きれいだったな~。
さて、どうしよう。
迷った。(二回目)
「ご主人様」「ここどこですか?」
「さあな、僕にもさっぱりわかんないよ」
「え~」
「五郎丸とこがねはわかる?」 「野生の勘とかでさ」
『わからないですわ』
『拙者もでござる』
んー。この世界ではコンパスが使えるかな?
「《物質創造》」「方位磁針」
磁石を回転させないと同じ方向向いてるかわからないな。
『カパッ』
カバーを外して、針を回す。
止まった。
何回か繰り返す。
でも、おんなじ方向で止まる。
「この世界は地球と同じく惑星?自体が磁石なのか」
太陽も昇っては沈むのを繰り返している。
この地は自転か公転をしているのか?
地図も欲しい。 ラニカの両親を探すためにも、必要だ。
空から見たらわかるかも。
「ラニカ」「ちょっと待ってて」
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「《物質創造》」「双眼鏡」
んー。あれは、チョウの花畑だな。
ということは、その先に見えるのがストレスが溜まった街だな。
『主』『あっちにも街のようながあるでござる!』
五郎丸に言われた方向を見ると確かに街のようなものが見える。
飛んでいってもいいかもしれないが、ラニカにも体重がある。 何十分も抱えるほど僕はハイスペックじゃない。
『スタッ』
「ラニカ」「マウンテンバイクを出して」
「は~い」
「それと……」
「物質創造」「ヘルメット、2つ」
忘れてた。頭を守らないと。
「よいしょ」
ラニカの頭につける。
「ご主人様、これは?」
「マウンテンバイクを安全に乗るためのものだよ」
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日が暮れてきた。今日も野宿だ。
「料理を作って~」「ラニカ~」
『コクり』
さぁ、ラニカが料理を作ってくれてる間になにしよう。
そうだ! 聖剣召喚をしよう。
「《聖剣召喚》!」
「……」
ナニモオコラナカッタ。
何で?
んー。
あっ、そういえば僕のステータスってラニカの鑑定と違うのが出ているんだっけ。
たしかそこにかいてあったやつは~。
どれどれ。
あのときのメモ帳を見る。
フムフム。
よし、今度こそ。
「《聖針召喚》!」
「うわぁ!」
手元が光ったかと思うと何かが出てきた。
「なんだこれ?」
大きさは25cmほど、先が尖っている。反対は穴が開いている。
ん?
外せない……。
右手が固まったように開かない!?
持ちかえられるか?
できた。
どうやらこの針のようなものは落とすことができないようだ。
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ふう、美味しかった~。
「ご主人様……」
「ん?」
モジモジしている。トイレか。
「行っていいよ」
と言ったとたんにものすごい速度で走っていった。
「これが何か聞かないとな」
『ブゥゥゥゥン』
何か飛んでる。
クワガタだ!
「オトモダチにな~って」
ー条件ー無し [コクワガタ]がオトモダチになった。
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種:コクワガタ(Dorcus rectus)
スキル:
《飛翔》《勇敢》
称号:
〔王者に挑みし者〕
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『ござる!』
「どうした五郎丸?」
『こやつは毎度毎度、拙者の食事の邪魔をしてくるやつでござる!』
このコクワガタが?
確かに大きいし、強そうだな。
『何でござるか!』
『喧嘩なら買ってあげるでござる!』
珍しく五郎丸が興奮している。
あっ、バトり始めた。
『ガチガチ、バキッ』
『ブゥゥゥゥン』
あっけなく五郎丸の勝利。このコクワは何がしたかったんだろう。
「スッキリ~」
あっ、ラニカが帰ってきた。
「ラニカ~」「これ何か鑑定してくれる?」
「はい」
「えーっと」
「名前は聖長針 時刻」
「説明はとある武器の片割れ、合わせると時渡りが使えるようになる」
「スキルは《縫合》と《一点集中》だって」
時間? 見た目はまんま縫い針なのに・・・・。
「ありがとう、ラニカ」
今日はもう、寝よう。
そして明日、あの街に行こう。