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妻が貴族の愛人になってしまった男  作者: 重原水鳥
第三粒 ルイトポルトの社交界デビューの裏側で
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【91】三オパール家の確執

「確執、ですか?」


 三オパール家の成り立ちは覚えている。


 この国の貴族として印象深いのは、王家の血を引く近親者である、〇〇(なんとか)ダイヤモンド公爵家の系譜の者たち。

 そしてルビー侯爵家、サファイア侯爵家、エメラルド侯爵家をトップとしてそれぞれの血を引く分家が存在している、三大侯爵家だが、勿論貴族の系譜はこれだけではない。ジュラエル王国には様々な一族が存在している。


 三オパール家は初代が三つ子によって創設され、始祖が三人いる特殊な家だ。

 それにより、一族はブラックオパール、ホワイトオパール、ファイアオパールの三つに分かれている。各々のトップたる伯爵は同名を担う者たちを取りまとめるものであり、三人の伯爵の意見を総合し、オパールの意見とする。


「ええと、ブラックオパールは穏健派と言われていて、ホワイトオパール家は過激派と言われていて……それが理由で、あまり仲が良くないとは聞いております」

「うーん。それぐらいか。なら、昔はこの三家の間にそれはそれは恐ろしい確執と恨みの連鎖があった事は、知らない訳だな?」

「う、恨みの連鎖、ですか?」


 物騒な単語に目を白黒させるとトビアスは頷いた。


「そうだ。同じオパールの名を関していても、三家の意見が綺麗に一致する事は少ない。当然、何かの折にオパールの一族の総意を出そうとすれば……意見が通らない家が出る事になる。そうした小さな確執から始まり、次第に三つの一族の確執、敵対関係は激しくなっていき……現伯爵様の祖父君の代の頃は、足の引っ張り合い、泥の擦り付け合い、果ては殺人まで起きるほどのろくでもない状況であったんだ」


 三つの家は切っても切れない関係性。

 どこか一つの家が危機に陥れば、残りの二家は手助けをしてきた。


 だが三つの家が団結して戦わねばならない敵が長くいなかった事により、様々な負の感情がお互いにだけ向けられ、どんどんと強くなっていた時代があったとトビアスたちは語った。


「始まりは意見が正面からぶつかりやすいブラックオパール伯爵家とホワイトオパール伯爵家の争いから始まったらしいが、ファイアオパール伯爵家も二枚舌でブラックホワイト両家にいい顔をして最後に漁夫の利を狙ったりと、三家はいがみ合うひどい状態だった。勿論俺やトビアスはそのころ生まれていないが、親や祖父母世代からは聞いたことがある。酷いもんだったそうだ。お互い己の家の利権だけを求め――まあ貴族としては正しくもあるが、度が過ぎるほど求めていたそうだからな」

「プライドをかけた争いにより三家の断絶は深くなっていた。最もその関係が激しくなっていたのが、現伯爵様の祖父の世代で……あまりの争いにそれぞれの家そのものが疲弊していたというのに、争いはやむ気配がなかった。そのような状況を厭うて三家で手を取り合おうと動いたのが、先代伯爵様たちの代だったんだ」


 ルイトポルトからみれば、亡き祖父の代の話である。


「先代伯爵は家の垣根を超えて協力関係をきずいて、己の子供たち――つまり現伯爵やメルツェーデス様――を積極的に交流させ、お互いの絆を築いた。更に当時三オパール伯爵家には男児と女児が一人ずついた事から、婚姻を結び、繋がりを強くした。これを始めとした様々な政策によって、三オパール伯爵家の関係はかなり改善している状態だ。……だがそれは、あくまで本家同士の話なんだ。本家の意向に同意した分家もいる一方で、強く反発した分家孫分家らも多かった」

「どうしてですか?」

「個々人の抱えるしこりが多すぎて、先代たちも解決しきれなかったんだ」


 トビアス曰く、本家同士の争いであれば本家当主が主導となって落としどころをつけられる。

 だか一分家や更にその下の孫分家たちの小さな諍い一つ一つを解決していく事は、不可能に近かった。争っていた時期が長かったために、数も多かったのだ。

 恐らくそうした争う関係全てを把握しきるのは、いくら一族を取りまとめる当主とはいえ難しい事だっただろう。

 特に重要かつ根が深く当主の力添えが必要そうな家同士の争いは解決させられたが、末端に行けば行くほど、本家当主の目から漏れ、一族全体が宥和の方向に向かっていても、それに反発するようになっていった。

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