【90】バルナバスのその後
前章で入れられなかっただけで、忘れていた訳ではないです。
【注意事項】
【スッキリ、サッパリ、ざまぁ】ご希望の方はご注意ください!
先に記載しますが、ともかくあちらこちらの顔色伺う判決に感じる人も多いかと思いますし、こんなのあり得んだろと納得出来ない方もいらっしゃると思います。
不快に感じたらブラウザバックでよろしくお願いします!
「ルキウス。時間はあるか?」
ある日の夕方、トビアスはルキウスにそう声をかけてきた。
「はい。問題ありません」
既に今日の仕事は終わっている。今日のルキウスの業務は他のルイトポルト専属の使用人たちと共に、手紙の仕分けをする事であった。
最近、ルイトポルト宛ての手紙がとてつもなく多い。ルキウスの主人の社交界デビューが近いからだ。
そのパーティーに先駆けで、ルイトポルトに自分を覚えてもらおうとしてか、分家の子供の名前での手紙がとかく多かった。
「この家はあちらの分家、ここはあそこの分家」
と説明されたものの、ルキウスには覚えきれそうにもない。
ルイトポルト専属の侍従で使用人たちを取りまとめているリーダーなどは当然把握しているようであった。将来的には、ルキウスも彼のように数多の貴族の事を記憶しなくてはならないと思うと、やや気が重くなってしまったのはここだけの話である。
トビアスに連れられて、ルキウスは伯爵家の一室へと移動した。それは小さいながらも応接間の一室で、部屋の中にはオットマーがいた。
「?」
一体何の話をするのかと首をかしげるルキウスは、トビアスに言われるがままに腰を下ろす。
「急にすまなかったな。お前の試験前に、妙な不安を抱かせるのはよくないだろうと思っていて、お前にはちゃんと報告が成されていなかった件を伝えようと思ったんだ」
「件……?」
「この前の襲撃者と首謀者であったバルナバス・ファイアオパール卿の処遇についてさ」
「!」
そういえば確かに、聞いていない。
あれこれ決めるのは自分ではないのでルキウスは強く意識していなかったが、普通、扱いが決まれば屋敷の中であれやこれやと話されているはずだろう。だのに、そのような話題はルキウスの耳には一切届いていなかった。
「その……どのような罰が下されたのですか?」
貴族と平民の争いならある程度想像も付くが、今回は貴族同士の争い。ルキウスには着地点がいまいち想像つかなかった。
だがそれでも、トビアスが教えてくれた着地点は想像を超えていた。
「襲撃者たちは正式に裁かれる事となった。そしてバルナバス・ファイアオパール卿の方だが……慰謝料と、バルナバス・ファイアオパール卿の長期にわたる謹慎という事になった」
「……それだけ?」
ルキウスは目を丸くした。
襲撃者が裁かれるのは納得がいく。が、首謀者という結論が出たというバルナバスに下される罰が謹慎だけという事が、信じられなかった。
その後具体的な慰謝料の額を聞いて、平民からすると気絶しそうな額であるという事は分かった。だが貴族であれば捻出できそうな額であったし、やはり、それ以外の罰が謹慎だけというのが納得いかない。
平民同士での争いだって、もっと罰らしい罰が下るだろう。むち打ち何回、のように。
「お前が不満に思うのも無理はない」
はあ、とトビアスはため息をついた。
その態度と二人の表情から、二人も心から納得したわけではないらしいという事が分かった。
「確かにメルツェーデス様は一度嫁いで戻ってこられた方だし、あまり語りたくない事情もお持ちだ。とはいえ伯爵様の実の妹。そのような人物を襲い誘拐しようとまでたくらんだ者に大して、いくらなんでも罪が軽すぎる」
「慰謝料は勿論、あちらの子爵家が崩壊しないギリギリぐらいまでは搾り取っているが……歴とした罰はないからな」
そんな意見を聞きながら、もしかすれば屋敷の中で話が広まっていないのは、スッキリする結論ではないから皆口にしないようにしていたのかもしれないとルキウスは思った。
「……何か、理由があるのですか?」
ルキウスには理解できなかった。だが、ブラックオパール伯爵が、意味もなくその結末にするとも思えなかった。
ルキウスは直接は伯爵を知らない。けれど普段の穏やかな表情などとは違い、その内面はかなり……ルキウスの感覚でいうと、怖い人だという印象がある。
「勿論理由がある。むしろそのしがらみがなければ、バルナバス卿に下される罰はもっと強いものになるはずだっただろう」
とオットマーがいう。言葉を引き継ぐように、トビアスはルキウスに尋ねた。
「ルキウス。お前、三オパール伯爵家の確執は、どこまで知っている?」
バルナバスさん再登場は予定がありますがだいぶ先と思われます。




