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妻が貴族の愛人になってしまった男  作者: 重原水鳥
第二粒 ルキウスと狩猟祭
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【83】別邸

 ルキウスの一週間の仕事禁止令は呆れた事に伯爵家中に広まっており、どこにいってもルキウスは追い返される事となった。

 この仕事なら良いだろうと下女下男らの仕事を手伝おうとした所、彼らからも「ひとん仕事奪うな!」「仕事はしちゃあかんと聞いてるぞ!」「さっさと帰んな!」と追い出されたルキウスは、それならと騎士たちの訓練所へと行った。


 基本的に訓練は好きではないが、せめて体を動かせれば……と思ったのだが、そこからもルキウスは追い出される事になった。


「仕事をするなってのは、体を休めろって事だろう? 流石に今お前に稽古をつけて、怒られるのはごめんだ」


 数日前まで「やはり弓兵隊に入れ!」と騒いでいたイザークにまでこう言われたルキウスは亡霊のようにふらふらと部屋に帰り、自分の部屋のベッドに倒れた。


 動かないので腹も空かずそのまま昼が過ぎ夜が過ぎ朝が過ぎ昼が過ぎ――そこでルキウスが文字通り部屋から一歩も出ていない事に気が付いたトビアスが、ルキウスを背負って使用人たちの食堂へと連れて行き、遅い昼食を無理矢理取らせた。

 動いていないためか食欲がないとルキウスは宣い、サラダをもそ……もそ……と食した。


「俺らの職務に子供の世話はないはずなんだがな?」


 とオットマーは呆れた顔をしながら言った。

 トビアスも否定はしないで苦笑しつつ、いつもの数倍元気のないルキウスにこう話しかけた。


「休みの間、何もない訳ではないぞ。ルキウス」

「……? どういう事でしょうか、トビアス様」

「お前の悲願が叶うという事だ」


 その言葉にルキウスは残っている方の片目をぱちくりと瞬いた。



 トビアスの言葉通り、次の日、ルキウスはルイトポルトに呼び出された。その際、両親の骨が入った箱を持ってくるように言われて。

 両親を大事に抱えながらルキウスが屋敷の玄関までくると、そこには馬車が一台あった。


「ルキウス。来たな、おはよう」

「おはようございます、ルイトポルト様」

「さあ乗ってくれ」


 と、ルイトポルトはルキウスに馬車を指さした。てっきり、待機している馬に乗っていくのかと思ったので、自分がまるで客のように馬車に乗るのは気が引けた。

 が、ルイトポルトがそうと命じているのだから、それを拒否するのも失礼にあたる。恐る恐る、ルキウスは馬車に乗り込んだ。


 馬車にはルイトポルトも乗り込んできた。ルキウスの同僚でもあるルイトポルト付きの使用人が、ドアを閉めた。

 馬車の近くに控えていた馬には予想通りトビアスとオットマーが乗っているようだった。


 ルイトポルトが外の御者に声をかけ、馬車が動き出す。


「ルイトポルト様。あの、どこへ……?」

「ふふ、秘密だ。……そういえばルキウス。喉、前より調子がよくなったみたいだな」

「そ、うですか?」

「ああ。良かったよ。随分長く、喉の調子が悪かっただろう?」


 その悪い状態が常態化しており、大して違和感を感じていなかったルキウスは、片手で喉をなでた。


 馬車に乗っていた時間は、そこまで長くはなかった。


 連れてこられたのはブラックオパール伯爵家の屋敷から少し離れた位置にある邸宅だった。


「ここは我が伯爵家のいくつかある別邸の一つなんだ。こじんまりしていて悪くないだろう?」


 と、ルイトポルトが説明をしてくれた。

 確かに普段ルイトポルトが暮らしている屋敷と比べればかなり小さいが、それでも平民が暮らす家と仮定するとかなり大きな立派な屋敷である。祖父母・父母・子という一家が丸ごと住んでも全く問題なさげな家だ。

 少なくともルキウスの感性ではこじんまりとはしていない。

 とはいえそれはあえて言わず、こくりと頷くに留めておいた。


「こちらだ、ルキウス」


 ルイトポルトについていく。先頭をルイトポルトとトビアス、真ん中にルキウス、後ろにオットマーという形で移動していく。ここまでの移動についてきていた同僚や御者は馬車に残った。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  ようやく父母を落ち着かせる事が出来るか。  長かったなあ。
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