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妻が貴族の愛人になってしまった男  作者: 重原水鳥
第四粒 ルイトポルト、貴族学院へ ~1年目~
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【136】ピジョンブラットルビー伯爵家主催・弓術大会に向けてⅡ

 トビアスから宣言された装いをそろえるための採寸や布の合わせなどはすぐにやってきた。日程自体には多少の余裕があるが、仕事は早くて損はない。


 ルキウスの仕事は人形のように立っている事である。たびたび動くように指示も出されるので、それに合わせる。


「今回は弓術の大会だ。当然だが、夜会のような礼装は、場にふさわしくない。だからといって、ただ動きやすさだけを追求した鍛錬着のような恰好では、貴殿の主たるルイトポルト様の格を落とす」


 インゴはそのように説明しながら、ルキウスに衣装を合わせていった。


 あれこれとインゴがデザイナーと話している間、ルキウスは無になって人形の如く立っている。


「装飾は多すぎてもよくないだろう。マントなどをつけれるのであればつけたかった所だが、邪魔だろうから不要だ。襟に小ぶりな黒蛋白石(ブラックオパール)を散らすのはどうだろうか?」

「当店の取り扱いの中に該当する石があるか確認いたします」

「いや、石であれば当家に在庫がある。それを持って行ってくれ」

「畏まりました」

「服の布は黒を基調としたいところであるが……ふむ、この時期だと長時間、外に立つ事を考慮すると難しいか」

「そうでございますね。裾には赤と……ルイトポルト・ブラックオパール様を模して赤の混じった刺繍を施す形はいかがでしょうか」

「悪くはない。襟元には不要だ。石が目立たねばならないからな」

「少し寂しい気もいたしますが」

「あまり豪勢にし過ぎても難しいだろう。ルキウス自身は平民だ。今回の大会にはルビーの一族に属する、名誉貴族も多く参加する筈だ。その方々よりルキウスが豪勢に見える恰好をしていたとしたら、身分をわきまえていないと捉えられるかもしれない」

「お言葉ですが、ブラックオパールの一族を代表するような形でご参加されるのでしたら、問題はないのではないでしょうか」

「そのあたりは問題ない。ルキウスは当日、ルイトポルト様より賜った弓を使う予定だからな」


 ルキウスが参加した初めての狩猟祭。あの狩猟祭前にルイトポルトが父であるブラックオパール伯爵から賜り、狩猟祭後にルキウスに下賜されたあの弓である。

 使わないままなのも問題なので度々使っていたが、今回の大会ではあの弓と、狩猟祭でも使用した、羽部分が変わった染め方をされている弓を使う予定である。


「だがそうだな。……眼帯に関しては、新しく仕立てるか」


 ビクリとルキウスは肩を揺らす。

 普段、清潔な布で汚くならないように巻いている事が多い。流石に客人が来ると決まっている日などはちゃんとした眼帯をつけたりもしているが、意外とちょうどよい眼帯を手に入れるのは難しく、自然と布を巻くだけにとどめる事が多かった。

 どうせ布の下には、眼球を無くした空洞があるだけである。


「うん、そうしよう。眼帯であれば多少凝っても違和感がないだろう」

「そうでございますね!」


 デザイナーとしてはあれこれと手を加えられる方が嬉しいのだろう。嬉々として、インゴと共にどのような眼帯にするかという話をしだす。

 当然、頭部の採寸もする。布を取った時、インゴの後ろにいたデザイナーが顔をひきつらせたのにルキウスは気が付いたが、触れなかった。

 最初から()()()()()()()()と言われていたとしても、実際に中身を失い、眼窩部(がんかぶ)を見て気持ちが良いものがいる筈はない。

 むしろ、実際に見たのは初めての筈なのに、全く動じた様子のないインゴの方が凄いのだ。


(このように……何があっても狼狽えないようになりたいものだ……)


 そんな事を思いながら、頭部の採寸をされる。それから、どの程度の範囲に布があれば良いかの話もする。


 特に問題もなく採寸が終わり、ルキウスはホッと息をつく。

 話を聞いていた限り、見た目が自分が付けるのをためらうものになりそうなのは、眼帯ぐらいか。まあ確実に目立ちはするが、眼帯が占める面積はさほど広くない。服一式が派手なものになっているよりかは、よほど、飲み込める。


 そんな事を思いながら、ルキウスは(本日の日課をすませるか)と、鍛錬場に向かって歩いて行った。

 申し訳ありません、次回更新まで間があいてしまいます。

 よろしくお願いします。

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