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妻が貴族の愛人になってしまった男  作者: 重原水鳥
第四粒 ルイトポルト、貴族学院へ ~1年目~
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【126】ルイトポルトの学生生活Ⅱ

 出来れば。誰かを貶めたくはない。

 ルイトポルトはまず、レヒタールとジビラの二人を頼ることにした。

 現状、ブラックオパール一族内では最もルイトポルトに血筋が近い二人は、分家の中でも発言力があるという。

 実際に、二人は同期の分家の令息令嬢に「ルイトポルト様に付き纏いすぎだ」と忠告をしていた。だが、むしろ「同じ屋敷に暮らしているからと上から目線だ!」と反感を買ってしまっているようで、忠告はそこまで効いていない様子であった。


 ルイトポルトが入学するまでは、ブラックオパール伯爵家の本家筋の血筋の令息令嬢として、ブラックオパールの血族の学生たちの中心的存在だったというレヒタールとジビラ。


 今では手のひら返しをするがのごとく、二人を疎むものまで出ていると聞き、ルイトポルトは大変申し訳ない気持ちになった。


「二人に協力して欲しいのは……私の周りに彼らが集まっている事で、何か問題が起きていないかという事を出来る限り調べてほしいのだ」

「すぐ行いましょう」


 レヒタールはすぐにそう返答した。


「とは申しましても……現時点で、ブラックオパールの名を貶めている事には代わりがないと思いますわ。己の行動を顧みれるようにするしかないのでは?」


 ジビラは眉をひそめながらそう口にした。彼女が言うのは、メルツェーデスが匂わせた方法をすれば良い、という事だろう。確かに、誰かひとりでも酷い状況になっているのが見えれば、多くの者は冷静さを取り戻すだろう。否定しきれず、ルイトポルトは苦笑した。


「全くだ。私が言葉一つで彼らを纏め上げられない故に、二人には迷惑をかけてしまう。ただ、血族を大事にするブラックオパールという家に生まれた以上、私は意味もなく分家の者たちを切り捨てるような真似はしたくない」


 ルイトポルトが次期当主として認められていれば、もっと彼らはルイトポルトの言葉を聞くはずだ。


 はっきり言って、ルイトポルトは全く認められていないのだ。


 それをルイトポルトも理解している。しかし、だからといって言う事を聞かぬものを罰せば良いとだけ考えるような事は、したくはないという思いが彼にはあった。


「誰かほかの学生に迷惑をかけてしまったとか、あるいは教授から叱責を受けた、とかでも良い。実際に問題を起こしてしまった学生の名を広めるつもりは更々ないが、全体に通じるような事であればなおの事良いと思っている」

「お任せくださいませ。今の時点でいくつか、話は聞き及んでおります。より正確に情報を集めてまいります。高学年であれば私が。……二年であれば、ジビラが情報を集める事が出来ますので。出来るな? ジビラ」

「勿論ですわお兄様。すぐに集めてみせます」

「頼むよ」


 レヒタールとジビラは早速情報収集をしてきてくれた。


 数日後には、ルイトポルト入学後、ブラックオパールの血族の学生が起こした小さな失態が複数纏められて提出された。


 代官として働く祖父を持ち、その部下として文官という立場で働く父インゴを持つだけあり、レヒタールもジビラも学生とは思えぬほどによく纏められた報告書であった。


「……周囲からの忠告もあれば……教授から咎められたものもあるようだ。だが、一番は……これだな」

「はい。ルイトポルト様の仰る通り、一番の問題はそちらかと」

「全く同族として恥ずかしい事ですわ」


 レヒタールとジビラも同意見だという問題。


 それは、授業の欠席記録であった。


 貴族学院は広い。本当に広い。

 その広い学院の中に、沢山の授業用の教室があり、学生たちは選択している授業の教室まで歩いて移動するのだ。


 お陰で入学前まであまり運動をしていなかった者などは、最初のころは筋肉痛に苦しむ事になるという話がある。閑話休題。


 話を本題に戻すが、移動しなくてはならないという事は――休み時間ギリギリまでルイトポルトの周囲にいれば、必要な移動に時間をあてる事が出来ず、授業に遅刻するという事だ。

 遅刻は同じ授業を受ける学生たちからも、そして教授からも、悪い意味で目立ち……悪印象を持たれる事になる。

 更に、どうあがいても間に合わない――或いは教室に行ったところで大して授業を受ける事が出来ないと自己判断した数人は、特定の授業を欠席するようにしているようであった。


 十分に、彼らを諫める内容として使えるだろう。


「ありがとう、レヒタール殿。ジビラ嬢。流石ヘーゲン大叔父様の令孫だ。素早い仕事で大変助かる」

「ありがたいお言葉でございます」

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― 新着の感想 ―
 こうやって「身内の不始末」を統制・制御出来てようやく一族の頭領としての一歩を踏み出したと言えるか。
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