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かくも世界は醜くて~魔導師学校の陰陽師~  作者: おおよそもやし
空空周りて行先なし
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80/117

『先輩』とは?

「哨戒任務?」

「ああ。すまないな。またご指名だ。」


 休暇明け初日。つまり登校数時間後。学校生活再開直後。まだ鈴代たちにも会えてない。どころか高梨とすら会話してない。

 そんな時間に加持上官が申し訳なさそうに転送してきたメッセージには、ズラズラと堅苦しい文体で任務内容が綴られていた。


「えーっと、つまりこの周辺地域を哨戒……っていうか探索?捜索?して解放軍の拠点を見つけ出して叩く……ってことですか?」

「そうなるな。」

「……つくづく、1年生に任せる内容じゃないですよね?」

「……そう、だな。」


 加持上官も同じ考えらしく、沈痛そうな表情で頷いた。

 いつの時代も中間管理職って大変なんだなぁ……。

 えぇーっと、行くのは吉川姉弟と、西宮(さいぐう)さんと、私と___


「……あれ?今度は1年生全員行くんですか?」


 メッセージの中に並んだ名前に驚いて顔を上げると、加持上官の眉間の皺はさらに深くなった。


 きっと今ごろ、久米上官も同じような顔してるんだろうなぁ。責任者みたいだし。

 現場の心を上は知らず、私は任務よりも上官たちの胃が心配になった。


***


「……ダメでしたね。」

「話しかけないでくれ。姉さんに見られたら技かけられる……」

「あ、態度が悪いことの自覚はあったんですね。」


 私と吉川文目は学生用の天幕に向かって歩いていた。

 さすが久米上官、学生はなるべく待機させていたいらしく「今日はもう休みなさい」と言ってくれた。いい大人〜。やっぱり、ああいう子どもを守れるような大人になりたいよね。

 対して少し先を行く吉川文目はあからさまに不機嫌そうだ。組替え断られちゃったからなー。残念。

 嫌な相手と行動したって、効率落ちるだけじゃんねー?


 心の中で文句を言ってみても、却下されたことに変わりはない。

 だったら何か、他のことを考えよう___と思っていると、突然足がもつれて体勢を崩した。


「わっ!?とっ、とーお!?」

「何やってんの。」

「見ての通り転びかけただけですけど。」

「ふーん。怪我すんなよ。」

「お?」

「俺の評価に響くだろうが。」

「はー!?かわいい1年生を労わろうとか心配だとか、そういう感情ないんですかー!?」

「……しん、ぱい……?」

「考え込まないでくださーい!そんな目で見ないでくださーい!!!」


 なんだこのー!面倒見悪い先輩だこと!

 私がギャンスカ騒いでいると、ふと笑い声が聞こえたような気がした。

 それだけなら気にしないけど、なんだろ……()()()()気がする。

 ってことは怪異?でも、そういう呼び寄せる系の怪異は大抵海とか山にいるし……何より、魔導師ばっかりの基地の近くになんているだろか。

 すぐに見つかって始末されるのがオチだと思うんだけど。

 ……ってことは気のせいかな。いやでも、念の為見回りくらいはしといた方が良いやも……


「……い、おい後輩。先輩の話はちゃんと聞けや。」

「あだー!?」


 痛たー!?

 突然引っ張られた頬の痛みに驚いて吉川文目の方を見ると、めちゃくちゃ不機嫌そうにしていた。なんなんだよーう、人が真剣に考えごとしてたのにー!


「なにふふんれふかー!」

「何言ってんのか分かんねー。」

「ふぁふぁへー!」


 お前のせいじゃろがー!

 抗議の意味も込めて両腕を突き上げてブンブンと振り回すと、吉川文目はゲラゲラと笑いながらも手を離した。


「はー……ちょっと先輩。ひりひりするんですけどー……これ、怪我___」

「冷やしときゃ良いだろそんなモン」

「誰のせいだと!?」

「先輩の話聞いてなかったお前のせいだろ。」

「うがー!」


 なんだよもー!

 人間性の問題だってことは分かってるけど、同じ1個上だった平里も西園寺も面倒見が良かったし何より優しかった。

 それに比べてこいつ……こいつは……!


「……子供っぽ……」

「おい後輩、今何て言ったよ。」

「いえ何でもー。っていうかちょっと気になることあるんでその辺見てきて良いですか。」

「は?却下。」

「何でですかー」

「俺も行かなきゃ行けなくなるだろ。俺は休みてーの。」

「私欲!」

「ってか、こんだけプロの魔導師がいるんだぞ?お前みたいなのが見回ったところで意味ねーだろ。」


 ……確かに、そう思われるのも仕方ないか。

 一応前線な訳だから、ここに詰めてる魔導師は熟練度の高い人ばかり。対して私はぴよぴよの1年生。

 条件だけ並べるとどうしても弱い。っていうかめちゃくちゃ弱々しい。


「うー……たしかにそうかもですけどー……」

「わかったら解散解散。どーせ明日からも同じことの繰り返しなんだから、今日じゃなくても良いだろ。」

「はぁーい……」


 私は渋々と返事をして、大人しく吉川文目の後ろをついて行った。


 ……後でこっそり抜け出したろ。

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