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かくも世界は醜くて~魔導師学校の陰陽師~  作者: おおよそもやし
千を越えても壊れぬように
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気を取り直して参りましょー!

「……と、いうわけで!今日こそ修行!しましょう!」

「そういえばそうだったな。」


 当主たちも、片付けに来た女中さんたちも退出し終わって、すっかり誰もいなくなった客間で私は高梨と茜塚と向かい合って座っていた。

 昨日の襲撃ですっかり頭から抜け落ちていたらしく、高梨は『修行』のことを思い出したように頷いた。


 まー、『盟約』について聞けたから目的は達成できてるんだけどね。この絶好の地形とメンバーを活かさない手はないよね。


「先輩、修行って何するつもりなんですか?対人戦闘とか?」

「んー……まずは山道に慣れてもらおうかなって。茜塚と私はともかくとしても、高梨先輩はこういうごちゃごちゃした足場に慣れてなさそうだし。」


 山……もとい、自然の中の地形はかなり変則的だ。固い岩肌があったと思えばずるずるな泥沼があったり、雨上がりに乾いた地面を歩いていたら突然ぬかるんでいたり。平坦に見えても起伏があったり。

 ちょっとした距離でも地面の状態が全然違う、なんて状況も珍しくない。

 だから、色んな地形を1箇所で使える山は訓練に最適なのだ。多分。

 兄さんもそう言ってたし。

 だから、できることはできる内にやっとこう。


「ってな訳で、動きやすいのに着替えたら門の外で集合してくださいね。はい、行くよ茜塚!」

「待ってください先輩!わたし着替えがな___」

「私の着ればいいんだよー。幸いここ実家だし、昔着てたのくらいあるでしょ。

ね!時雨さん!」

「はい、まぁ、ありますが……古賀様、随分と慣れましたね。」


 障子をすっと開けながら時雨さんはそう言った。やっぱりいたか。


「慣れなきゃやってらんないでしょう?」

「まー……それには同意しますが。」

「え!?」

「そこにいたんですか!?」


 驚く2人をよそに時雨さんは頬を掻いて頷くと、扉の方へしずしずと歩き出した。

 まー。たしかに気配あんましないもんね、時雨さん。さすが…なんだろ……隠密?


「じゃ、行こっか茜塚。高梨先輩は着替えたら来てくださいねー。」

「あ……はい。」

「あ、ああ……分かった。」


 驚きすぎて動揺が見て取れる2人がなんだか可愛らしくって、微笑ましい。

 やっぱりまだまだ子どもだなぁ。


 私は茜塚の背を押して扉の外へ連れ出すと、高梨に小さく手を振った。


***


「こちらはいかがでしょうか。」

「茜塚〜。こっちは?」

「え、えっと……」


 例の倉の奥。

 葛籠から服を取り出しては敷物の上に広げていく時雨さんと私の間で、茜塚は困ったような顔をしていた。


 ……ホントはテキトーに動きやすそうなの選んでもらうつもりだったんだけど……意外と量が多すぎて……。

 それに茜塚がかわいくって、どうせなら似合うの着せたい!ってテンション上がっちゃったんだよねー……。


 ま、それは置いといて。

 今、目の前には『運動着』とひとくちに言っても実用性重視のものからデザイン重視のものまで、揃っている。

 以前……前世で茜塚が訓練のときよく着ていたのは制服だったから、どういうのが好みか分からない。

 だから、とりあえずどんな系統が好きなのか選んでもらおうと思ったんだけど___


「えっと……うーん……」


 選択肢のあまりの多さに混乱しちゃってるっぽいんだよなー。餌猫みたいに若干怯えてるんじゃないかって気すらしてくる。

 うぅーん……それなら聞き方を変えてみよっかな。


「茜塚。そしたらこっちとこっちだったらどっちがいい?」

「えっと……こっちです。」


 機能性重視のものとデザイン重視のものを両手に掴んで見せると、茜塚はしばらく迷ったあと機能性重視の方を指した。

 なるほど、この系統ね。


「それじゃあ、こっちとこっちだったら?」

「それなら……こっちです。」

「りょーかい。」


 同じように何度か繰り返して、最終的に赤と黒の上着と同色の膝丈ズボンになった。中に着るのは黒しかないから、選んでもらうのはここで終わり。


「じゃ、茜塚。私も着替えてくるね。時雨さん、茜塚が着替え終わるまで外で待っててあげてくれますか?」

「分かりました。」

「はい。お任せ下さい。」


 茜塚が頷いたのを確認して、私と時雨さんは倉の外へ出た。そして時雨さんはその場に留まり、私はまた自室へと引き返した。

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