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かくも世界は醜くて~魔導師学校の陰陽師~  作者: おおよそもやし
魔導師学校の陰陽師
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嘘でしょ?

「これが装備品かぁ〜。なんかかっこいいね!」

「リンリ、ベルト捻れてるよ。直してあげるからこっちおいで。」


 あれから数分後。食堂の円いテーブル席で私たちは待機していた。

 無事に装備品を支給されて安堵している私の隣の席で、鈴代がはしゃいでいる。


「よいしょ…と。もう良いよ。」

「ありがと!しーちゃん!」

「ちょっ…リンリ!?」


 若村が丁寧な手でベルトを直してあげると、鈴代はにこにこと笑って若村に抱きついた。

 若村も口では焦ってるけれど満更でもないように笑っている。


……私、ここにいていいのかなぁ。なんだかお邪魔じゃない?


 目の前でイチャつく2人から視線を逸らして、手元にある装備品の詰められたトランクを開いた。

 中身は急所を守るためのプロテクター、オルゴール程の大きさの結界装置、魔導拳銃、そして。


「これは…?」


 ひらがなの『し』の横から触角が生えたような形をした、針金とシリコンを足したような不思議な素材のものが入っていた。

 しげしげと持ち上げたり引っ張ったりしながら眺めていると、若村が怪訝な顔でこちらを見た。


「何しているの?」

「え?…あ、これが何か分からなくて…」

「?ただの通信機でしょう?なんで見た事ないの?」

「つうしんき。」


 これが?


 こんな形でどうやって音声とか伝達するんだろう。

通信機を見つめて固まっていると、若村は私の手からそれを奪って私の右耳に掛けた。そして触角のような部分をこめかみと耳の出っ張り___副耳に当たるように調整すると、自身の通信機に触った。


『こういうことよ。』

「うひゃっ!?」


 突然頭の中に若村の声が響いて私は飛び上がった。


『大丈夫?』

「大丈夫です、けど…。なんかゾワゾワする〜…」


 耳を押さえてワタワタとしていると、その様子を見ていた鈴代がなにか悟った様子でぽんと拳を手の上に置いた。


「古賀さんってもしかして結界の外から来たの?」

「え?……そうですね、一応…。そこまで離れてはなかったと思いますが。」

「そっか。それなら知らなくてもしょうがないよね。」


 鈴代はそう言うと、自身の通信機を人差し指で2回素早くつついた。


「古賀さんも、やってみて。」

「あ、はい。」


 真似してトントン、とつつくと視界に突然半透明の画面が浮かび上がった。


「うわっ!?」


 AR…ではないよね?だって眼鏡とか掛けてないわけだし…。

 歯車、受話器、てるてる坊主、吹き出し___

 じっと画面を見てみると携帯端末のホーム画面に似ていることに気付いた。


 もしかしてと思っててるてる坊主のアイコンに指を重ねると、『連絡先』と書かれた画面に切り替わった。

 その下には『鈴代莉々』『若村静鶴』と書かれたタイルが並んでいる。


「すごい…っていうかいつの間に連絡先が登録されて…?」

「多分だけど、グループ申請しに行った時に親機か何かで名簿と一緒にしてたんじゃないかしら。」

「なるほど。」


 つまりこれは昔で言うとこの『一人一台タブレット』ってやつか…。両手塞がらないのがとっても良い。画面も割れる心配がないし。

 ただ、視界に干渉されるのが少し心配だな。もし()()()()()()()()()()()()()()()()判別つかないかもしれない。


「古賀さん?どうしたの、難しい顔して。」

「ああ、いや。なんでもないですよ。ただすごいなぁって思って。」


 千年。ホントに千年後なんだ、ここは。

 そう思い知らすには充分な技術の進歩に胸がジクリと痛んだ。…考えるのはよそう。『道連れにしてくれ』なんて怪異に頼みかねない、しね。

 沈んだ気持ちを切り替えようと頬をぺちぺちと叩いてプロテクターを手に取った。


…ん?なんかこっちは前世とあんまり変わりがないように見えるんだけど、気のせいかな。


 不安になって傍らの魔導拳銃と結界装置の魔導回路を観察してみた。目の近くに持ってきてじーっと目を凝らして見ると、結界装置に見覚えのある回路が刻まれていた。…いや、まさか。

 そんな馬鹿な。これは、この回路は彼の___。

千年経ったはずなのに、なんでまだ使われて___!?


 私が戸惑って結界装置を握りしめていると、ふと教官の声が響いた。


「よし、これで全員組めたな!それでは全員外履きに履き替えてゲートホールへ移動するように!」


 その声で我に返って結界装置をトランクの中へ元通りに収めると、深呼吸して鼓動を落ち着かせた。


 「じゃあ行こっか〜。楽しみだな〜ダンジョン。」

「もう、リンリ。怪我しないでよ?」

「はーい!分かってるよー。」


 和気あいあいとじゃれあっている2人の様子にほっとして、私たちは食堂を後にした。


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