グループ決め
「…どうしよっかな…」
周りの学生たちはわいわいと楽しげに話しながらグループを作って、どんどんと教官のところへ装備一式を受け取りに行っている。そんな中でも、私の周囲に誰も近寄ろうとしなかった。
まるで台風の目みたいだな、私。ここだけ人が避けていくから…。
前世では能力が高すぎて兄さんと私だけこういうときに弾かれていたから、ちょっと憧れてたんだけどな。まぁ、起こってしまった以上は仕方ないもんね。
最悪あぶれ者同士でも組ませてもらえないかなー、と伸びをすると、ふと二人の女の子がこちらに向かって来ているのが目に入った。
この辺の誰かに声掛けに来たのかな。それならここにいたら邪魔になるかも。
そう思ってさらに隅の方へと移動しようとすると、「待って!」と鈴のような声に呼び止められた。
反射的にピタッと動きを止めてそちらに目を向けると、ふわふわの赤毛を2つに結んだ女の子がほっとした風に笑った。
「あ、あの!!わたし、鈴代莉々です!こっちは___」
「あたしは若村静鶴。昨日はどうもありがとう。」
「わ、私は古賀爽耶です。…昨日?」
何かあったっけ?
声を掛けられたことに少し驚きながらも思い出そうと人差し指をくるくるとさせていると、若村が長い黒髪を揺らして微笑んだ。
「昨日、リンリが雪村のお嬢様に絡まれてたところを助けてくれたでしょう?」
「雪村…ああ!」
そういうことか。見下してた立場の人間の前で恥かかされた、と思ってるからあんなにうるさいのか。彼女は。…嫌な人だなぁ。
「本当にありがとうございました!」
「いいですよ、気にしないで。…それよりも、私に話しかけて大丈夫なんですか?」
ぴょこんっとお下げを跳ねさせてお辞儀をした鈴代に、不安になってそう声を掛けた。すると若村が暗い表情で俯いた。
「もう目を付けられていることに変わりはないもの。それだったら…こそこそしてるだけよりも助けてくれた人の味方になった方がずっといいに決まってるでしょう?」
「たしかに?」
そうかも?
筋を通した方がいい、ってことなのかな。多分。
「だから___古賀さん。あたし達と一緒に組んでくれないかしら。」
「いいんですか?」
「ええ。…ね、リンリ?」
「うぇ!?は、はい!一緒に組んでいただけたら…嬉しいです、けど!もしお嫌なら__」
「嫌なわけないですよ!」
私はあわあわとしている鈴代の手を握ると、ぎゅっと両手で包んで目を合わせた。
「よろしくお願いしますね。」
「は、はい!」
にっこりと優しく微笑むと、鈴代は安心したように笑った。
「それじゃあ、3人集まったことだし。装備もらいに行きましょうか。」
「うん!そうだね!行こ!古賀さんもはぐれないでね!…あ。」
「別にタメ口で良いですよ、鈴代さん。」
しまった、と口を押さえる様子が可愛らしくて、なんだか前世の後輩を思い出した。自然と頬が緩んで胸が温かくなった。
会いたいなぁ…もう、会えないけど。
寂しさと少しの後悔が心に影を落として胸が苦しくなった。
もう、終わったことなんだ。
それを振り払うために、私は目を瞑って息を吸い込んだ。
「古賀さーん?大丈夫?来てるー?」
「大丈夫ですよー!そっち向かってます!」
そして流れの入り乱れている人波に足を踏み入れると、目の前の仲間たちを追いかけた。