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かくも世界は醜くて~魔導師学校の陰陽師~  作者: おおよそもやし
紅白咲かず枯れ落ちて
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因縁?

 ひとしきり笑ったあと、布施は簡潔に、要点だけ教えてくれた。


 魔導師と陰陽師が互いにいがみ合っていること。

 魔導学園が朝廷、つまり政府を掌握していること。

 そして、この国が大きく分けて3つの勢力による内乱状態であるということ。


「…内乱…ですか?」

「はい。現在の倭は陰陽師による『常世教団』、魔導師による『魔導学園』、そして陰陽師・魔導師・一般人による『日本(ヒノモト)解放軍』の3つの勢力が領土を巡って争っている状態です。

 簡単に表しますと、『常世教団』は赤い蝶のマークをつけた隠密集団、『日本解放軍』は高性能な魔導具や霊具を所持している軍隊といったところでしょうか。」


 常世教団…なぜかその名前を聞いたとき、脳裏に後輩の姿が浮かんだ。そういえば、彼女の権能も蝶々だったな…。

 千年前になにか大事件があったみたいだけど、あの子たちは無事だったのかな…


 生きてたら、こんなことにはなって……


「古賀さん?大丈夫ですか?」

「あっはい。大丈夫、です。」

「それなら良いのですが。…それでは続けますね。」


 布施はそう言って、淡々と説明を続けた。


 勢力図はきっかり東西や南北などに分かれている訳ではなく飛び地になっていること。

 『魔導学園』も『常世教団』も霊域、つまりダンジョンは貴重な資源とみなしているため、攻略されずにいること。

 怪異、つまりモンスターも同様に放置されていること。

 それらに対抗するために『冒険者ギルド』___特殊な武具を持たせた一般人の組合が作られたこと。

 そして、その現状を打破すべく数年前に蜂起したのが『日本解放軍』であるということだ。


 説明を聞く限り、たぶん平里は『日本解放軍』の所属だろうな。

 だって平里は守りたがりだし。世話焼きだし。

 魔導師だけー、とか。異能者だけー、とか。そういう贔屓は嫌がるから。

 いるとしたら連合だろうな。だって平里は弱者を見捨てられないから。


 ……だから死ぬんだ。


「…この辺りでやめておきましょうか。」

「え?」


 あ、いけない。またボーッとしてた。

心配そうな布施に「大丈夫」と言おうと口を開こうとしたけれど、布施は静かに人差し指を私の唇に当てた。


「彼らが心配なのでしょう?」

「えっ違っ…!そういう訳じゃ」

「ふふ、誤魔化さなくても結構ですよ。」


 心配…心配、してるのかな。

 どっちかというと、兄さんも平里もそばに居ないことが前世含めてなかったから不安なのかも?


 …っていうかそもそも『彼ら』って、吉川姉弟のことだよね?平里のことバレてないよね…?

 居心地の悪い不安を抱えながらも、布施が微笑んで差し出した手を、私はそっと掴んだ。


***


「…古賀さん!?」


 布施に手を引かれて病室の方へ戻ると、廊下で雪村たちにばったりと出会った。


「なんでそっちから来るんですの?」


 訝しげな顔でこちらを見てくる雪村が、たった1日…意識なかったのも合わせて数日ぶりなのになんだか懐かしく思えて、思わず___


「雪村さーん!!!」

「きゃあ!?」


 布施の手を解いて抱きつくと、雪村は素っ頓狂な声を上げて私の頭を叩いた。


「な、何するんですの!?」

「いたた…だって〜…」


 安心しちゃったんだもん。気づいてなかったけど、ずっと緊張してたんだ、私。

 とはいえ急に抱きつくのはダメだったよね。びっくりしちゃうし、何より不快に感じる人だっているのだから。


「……ゴメンナサイ。」

「あ、あら?古賀さんにしてはずいぶんと素直…って、騙されませんわよ!そんなしおらしくしたって!」


 素直に謝ったのにこの言われよう。どんだけないんだろう、私の信頼度。

 私は雪村のこと好きだけど、雪村はそうじゃないんだろうか。…いや、少なくともお見舞いに来ようとしてくれるくらいには好いてくれてるんだから、それなりには…いやでも…。


 何となく悔しくてむくれていると、布施がくすくすと笑って頬をつついてきた。


「布施さん!やめてください!」

「ふふ、すみませ、ふふふ…」

「ふーぜーさーんー!!!」


 もー!何がしたいんだ、この人は。

 高梨の反応的にてっきり危険人物かと思ったらコレだし、全然読めない。

 再び伸びてきた人差し指をぺしんっと弾くと、布施はまた笑っていた。なんでそんな楽しそうなんだろ。


「あ、あの。古賀さん…?その方って…?」


 そんなふうに戯れている様子を不審に思ったのか、おずおずと遠慮がちに鈴代がそう尋ねてきた。

 そういえば私もさっき初めて会ったばっかりなんだった、馴染みすぎて忘れてた。

 私はすっと布施を指し示して、紹介するべく口を開いた。


「この人は___」


 布施さん、と言いかけたところで、急に背後から腕を掴まれた。


「えっ?って、うわっ…!」


 バランスを崩して腕を掴んできた人物の胸に後頭部で頭突きをかましてしまった。

 痛そう。でもさすがに自業自得だよね、コレは。

 私悪くない。悪いのはお前だけ。


 その面拝んでやろうと振り向くと、そこにいたのは白い軍服を着た、少壮の___


「…久米上官!?」


 「どうしてここに?」と尋ねる暇もなく彼は私と布施の間に割って入ると、この間とは違う、底冷えするように冷たい視線で布施を睨みつけた。


「…なぜ、貴様がここにいる。」

「なぜ…と、言われましても。そういう配属命令が下ったから、としか…」


 これまた打って変わって、射抜くように久米を睨みつけながら微笑む布施の雰囲気に、思わず身震いした。

 体感で5度くらい室温が下がった気がする。


 因縁があるのは結構なことだけど、私の前でやらないで欲しい…!

 2人が勝手にバチバチやってる間、雪村たちとわいわいしてたい…!!!


 そんな願い虚しく、誰も動けぬまま布施と久米上官の口喧嘩…のような会話を静かに見ていることしかできなかった。


 …兄さん、こういう時ってどうしたらいいんだろうね。

 わかんないや。

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