空夜
ショッピングモール1階、食料品売り場西側エリア。
「…なんだか嬉しそうだね。良いことでもあったのかい?」
騒乱の跡がそのままに放置された売り場で、試食コーナーにベーコンをつまんで珈琲色の髪の軍服の女が尋ねると、同じく軍服姿の黒髪の青年はぱっと笑った。
「それはもう。この上なく良いことがあったんだ。」
「ふーん。それにしては頬が腫れているように見えるけど?」
パタンとケースの蓋を閉じながらどうでも良さそうに掛けられた問いに、青年はこれまたにっこりと笑った。
「うちの子にね、ちょっと。やりすぎてしまったみたいで怒られてしまって…。」
「なるほど。君、親バカなんだな。」
「ふふふ。当たり前でしょ。
…それにしても、死んだ時はもう2度と会えないかと思っていたけど…2人仲良く頑張ってるみたいで良かったよ。ああ、やっぱりかわいかったなぁ。」
そう微笑んで、青年は踊るような歩調で出入口の方へと向かっていった。
「…怖ー。」
女は、足元の小狐を抱き上げて青年の後を追いかけた。
「待ってくれよ、カザハヤくん。奴らは連行しなくてもいいのかい?」
小走りで青年に追い付くと、女はびっと通路に転がされている黒装束たちを指さした。
「必要ないよ。…それに、『魔導学園』が今回の騒動を『常世教団』の仕業だと勘違いして食い潰しあってくれれば、私たち『日本解放軍』が少ない労力で両方とも潰せるしね。」
「おおっと…性格悪いな君…。」
「いえいえ、ホマレさんほどでは。」
「おい。それはどういう意味だい?」
「ははは。」
そのまま2人は壊れて動かない自動ドアをこじ開けて、夜闇のなかに消えていった。




