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かくも世界は醜くて~魔導師学校の陰陽師~  作者: おおよそもやし
泥中を迷う
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魔も霊も等しく、

 ひたり、ひたりと水気を含んだ足音を立てて、白い人形(ひとがた)は姿を現した。

 四つん這いのまま周囲を見渡すように伸びをすると、ぐりんっと、身体中の瞼が開いた。


「伏せろ!」


 平里の指示の意図を察して、短剣を手放して床に伏せて目と耳を塞ぐ。念の為霊力で鼓膜を保護。

 そうこうしてる間にカランと空き缶が転がるような音と炸裂音が響き、怪異の呻き声が上がった。


 手榴弾…いや、閃光弾か。

 さっすが平里、用意がいい!


「ォアアアア…」


 炸裂音が収まったのを見計らって身体を起こすと、私はもう一振の短剣を引き抜いて盲目状態になった怪異の首を切り落とした。


「ア゛、ヴ…?」

「っと、そい!」

「…ッア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛…」


 転がった怪異の頭を掴みあげて、一気に霊力を流し込む。すると怪異の頭部は断末魔を響かせて黒ずんだ塵となって消え去った。


「胴体の方は…」


 手についた塵を軽く叩いて払って短剣を拾い上げながら目を向けると、ちょうど撃たれて動かなくなったところだった。


「終わり?」

「…気配なし。一旦終わりだな。」

「そっか。お疲れー!」

「はいお疲れ。」


 一安心、ということでハイタッチしようと挙げた左手を避けられた。


「なんで!?」

「じゃー、次の手がかり探すぞー」

「ひ…羽世!ねえってばー!」

「この辺は何もなさそうだなー」

「聞けやー!」


 無視すんなー!このやろー!

……


「…ていっ」

「痛っ」


 なおも無視し続ける平里の態度に少し焦りを感じて、向けられた背中にチョップした。


***


「そういえば、さっきの何かなあ。百目?」

百々目鬼(どどめき)じゃないか?場所的に」

「あー、万引き…」


 周囲を警戒しながらも、気を張り過ぎないようにちょくちょく雑談を挟んで広い通路を進んでゆく。

 左右に並ぶ飲食店の看板をちらりと見て、平時ならこの通路いっぱいになるくらいのお客さんがここを歩いてたんだろうな、と想像した。

 きっと、全てとはいかずとも笑顔や喜楽の感情で溢れかえっていたんだろう。

 それが今や怪異蔓延る霊域に___。


「…頑張って解決しなきゃ。」

「そうだな。…前方50メートル先、2体。狙撃するから周囲の警戒任せた。」

「りょーかい!」


 私が側方に控えたのを確認すると、平里は制帽を被り直して前髪を全て帽子の中にしまい込んだ。そして、ずるり、と上衣の裾から真っ白な魔導狙撃銃___魔導回路が禍々しく緋色に光っている___を取り出すと、平里はそのまま横向きにしゃがみこみ片膝を立て、その上に銃身を載せて構え、即座に一射した。


「…ヒット。1体消失。」


 そう言いながらも、慣れた動作で銃身を立てて素早く魔力を再装填し、再び射撃姿勢に戻った。


「…っ」


 その数秒後に引き金が引かれ、今度は青い光がシュンッと風鳴りだけを残して、前方の暗闇へまっすぐ呑み込まれていった。


「…2体目消失。周囲に敵性反応なし。戦闘終了。」


 平里はそう言うと、深呼吸して銃を上衣の中に戻した。


「魔力入れとかなくていいの?」

「結界術の応用を魔力でやって入れるスペース作ってるから大丈夫だ。時間が経てば勝手に充填されてる。」

「へー。できるんだ。」


 前世の時は「結界術は霊力でしかできない」って言われてたのに、すごいなあ…ん?


 …え、ホントにどうやってんの?結界術の権威とまで言われた此岸級(Sクラス相当)の風早さんですら「無理」って言い切ってたのに?


「…企業秘密?」

「企業秘密。」

「ちぇー」


 だめかー。残念。


「それにしても、相変わらず目が良いよね。見えないとこにいる怪異見つけられるなんて、権能使ってるみたい。」

「っ!?…」


 何気なくそう言うと、平里は露骨に驚いて黙り込んだ。

 え、なにその反応。まさか…


「…マジで権能持ってたり、する?」

「……うーん、まあ一応…」

「マジで!?なんで!?」


 魔導師なのに!?どういうこと!?


 魔導回路と魔力電池がなくても、魔力を消費しての詠唱や陣の形成だけで同等の事象を起こせるのが魔導師。

 霊力を消費することで霊符や権能を用いて事象を引き起こすのが陰陽師、だったはず。

 異能者は霊力と魔力の両方を持っているとはいえ、魔導師が霊力を使うのも、陰陽師が魔力を使うのも燃費がかなり悪くなる。だから基本的に両方扱う、なんてことはないんだけど…。


 魔導技術が使えるのが魔導師だけじゃないように、権能を使えるのも陰陽師だけじゃなかったってこと?

それとも。


「…魔力がものすごい高かったけど、実は陰陽師だった、とかなの?」

「それは違う。俺は___」


 平里がそう言いかけた時。

凄まじい轟音が、床の下から私たちを突き上げた。

風早さんに関しては今は忘れて大丈夫です

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