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かくも世界は醜くて~魔導師学校の陰陽師~  作者: おおよそもやし
泥中を迷う
22/109

平穏とはすり抜けるもの

 ___数分後。


 加持上官の後をてくてくとついて行って、先程のだだっ広い空間まで戻ってきた。

 上官は私たちに中央付近まで来たあたりで、「その場で待機するように」、と言ってどこかへ去っていった。手持ち無沙汰で暇なので、吉川弟の周りをくるくる歩き回ってちょっかいをかけたところ、なぜか高梨も一緒になって回るという珍事態が起きた。

 「なんで高梨先輩まで一緒になって回ってるんですか」と吉川弟がかなり動揺しながら問いかけたところ、高梨は「古賀が回っていたから理由があると思って一緒に回った」と当然のように答えてきた。

 信頼というか盲信なのでは、と私が一層高梨を心配していると、いつの間にか戻ってきていた加持上官が、なんとも言えない表情でこちらを見て立ち尽くしていたのだった。


***


「…あー。番号。」

「1」

「2」

「さーん」

「四!」

「五〜」

「…6」

「よし。全員いるなー。」


 やる気の差が激しい点呼を終えて、加持上官をぐるりと半円に囲む形で整列をした。

 それをを見届けると、加持上官は軽く咳払いをして口を開いた。


「えー。まずは1年生3人。Sクラスにようこそ、と本来なら言いたいところなのだが…」


 そう言って上官は目を伏せた。

 わかった、なんか事件起きてるなこれ。そんでもって全員教室に入るよう言われたのはそのせいなんだな?これ知ってる、前世でもあったもんこの感じ。

 ……やだぁ。帰りたいー…。せめて兄さんが一緒ならなー…。いないけど。


「但馬南部にある大型商業施設にダンジョンが出現した。危険度はC+と推測される。」


 しーぷらす…乙寄りの丙って感じかな…ヤバいじゃん。そんなのに一般人が巻き込まれたら___


「推定被害人数は700-800人。救助に向かった先遣隊との連絡も1時間前を最後に途絶えている。」


 ヤバいじゃん。なんで丙認定してんの。普通に乙等級以上でしょソレ。

 …あ。これを私たちに話したってことは、もしかして。もしかしなくても。


「そこで諸君ら学生部隊に、救助要請___まあ、つまり出動命令が下された。名前を呼ばれた者は前に来るように。」


 やっぱりー!!!嫌だー。…まあでも、さすがに?昨日初めて怪異と交戦した(ことになってる)新入生をそんな場所に放り込んだりは___


「1年、古賀爽耶。」

「なんで!?」

「文句言わないでくれ。理由は自分の胸に聞きなさい。」

「…分かりません!」

「そうか。良いから前に来なさい。」

「はぁーい…」


 なんでー。っていうかいきなり1人目が私ってなんでぇー。うえーん。

 駄々こねたろかな…。意味無いか。


「2年、吉川文目。3年、吉川翠。以上3名で現場に向かってくれ。」

「少なくないですか?」

「古賀、発言する時は挙手をしなさい。」

「はい!」


 加持上官に冷たくそう諭されて、反射的に背筋がピンと伸びた。加持上官は私を一瞥すると、ため息を吐いた。

 さよなら、平穏な学校生活…つくづく私は平穏と縁がないらしい。ちくしょう。

 それを見ていた吉川文目は、哀れみの目を私に向けて、肩を軽く叩いた。

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