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かくも世界は醜くて~魔導師学校の陰陽師~  作者: おおよそもやし
魔導師学校の陰陽師
13/96

¿相対?

 ぽたり、ぽたりと天井を伝い落ちてきた雫に青年は、足を止めて首を傾げた。

砂漠の地下の、石で固められた通路。通常ならば地下水が石のひび割れからしみ出てきた、と考えて終わりだっただろう。だが、ここは霊域(ダンジョン)だ。砂漠なら見渡す限りの青空と砂地を、洞窟ならば閉鎖的な岩場を。表層的なテクスチャを貼り付けただけの霊力の磁場に、地下水脈なぞ存在しないのだ。

ならば、考えられる可能性は2つ。

 1つ目は、水を扱える怪異(モンスター)が付近に出現した可能性。

 それならばここまで水が来ても不思議ではない。ただ、そういった怪異は水辺を好むため、こんな砂漠にいるとは考え難い。

 2つ目は、水に関連した魔導具を所持した魔導師がいる可能性。

 こちらの方が可能性としては高いが、探知機に大きな魔力反応もなかった点から除外される。

 それならばなぜ___と青年は考え込むと、やがて雑念を振り払うようにゆるく頭を振ってゆっくりと歩き始めた。


***


「まーた分かれ道か。」


 カンバラはうへぇ、と嫌そうな表情でそう呟いた。


「アリの巣みたいだな。」


 すっかり回復した高梨が足元の小石を拾い上げながら話しかけると、カンバラはさらに嫌そうな顔をした。


「無闇に触るなよ。…っていうかなんで急に馴れ馴れしくなってるの、お前。」

「さあ…」

「さあ?って、お前。自分のことだろ。」

「自分でもよく分からないのだから仕方がないだろう。」

「なんじゃそりゃ。」


 そんな他愛もない会話をしながら高梨が小石を地面に戻すのを見届けると、カンバラは諦めたようにため息を吐いた。


「置いてくれば良かった…」

「見学させてくれるって言ったのにか?」

「…やっぱ腕、いっとく?」

「すみません。」


 地上で掴まれたときの痛みを思い出してか高梨が腕を押さえて口を結んで黙った。カンバラは鶸色の瞳を細めてじとりとその様子を見つめていたが、不意に耳に届いた物音にばっと臨戦態勢をとった。


カツン、カツン。


 ゆっくりと近付いてくる足音になんともいえぬ不気味さを感じながらも2人が通路の奥を睨みつけていると、ぬっと影から溶けだすように帽子を目深にかぶった軍服姿の男が姿を現した。


「!」

(いつの間にこんな近くに…!?)


 カンバラと高梨があまりの気配の無さに慄いていると、男は軍帽に付けられた次縹(つぎはなだ)色の飾り紐を揺らしながら首を傾げた。


「子ども…?どうやって入ってきたんだ?」


 年若い、青年の声でそう呟くと、男はしっしっと追い払うようなジェスチャーをして再び口を開いた。


「ここはお前らみたいなのがくるような場所じゃない。今すぐ帰るなら見逃してやろう。」

「そういう訳にもいかない、って言ったら?」

「はぁ…無益な殺生は避けたいんだがな。勇敢と無謀を履き違えるな、ガキ。」

「あはは、そうかもね。…ところで、洞窟地形(エリア)と砂漠地形の通路が隠してあったのってなにか知ってる?」

「……言うわけがないだろ。」

「それもそっか。」


 「逃げろ」とでも言いたげな態度の目の前の男は、恐らく敵ではあるが悪人では無いのだろう。

 カンバラが残念そうにかぶりを振って男に相対すると、男はゆっくりと白い魔導拳銃を構えた。


「それなら仕方ない。…恨むなよ。」

「そっちこそ。」


 カンバラは軽い口調でそう返しながら高梨がゆっくりと後退するのを横目で確認した。そして___

 銃口から青白い光線が放たれると同時に、カンバラは地面を蹴って駆け出した。

予約投稿ミスりました

次回更新は2024年1月6日予定です

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