行動規範
突破口は見えた。問題はどうやってそこまで辿り着くか、だ。
ようやく見つけた方法が最善策だと錯覚してしまうことは多々あることだから、慎重に見極めないと取りこぼしてしまう事だってある。そうなったら最期だ。僕も皆も、誰も彼もが死んでしまう。
そのうえで百合と京のこともあるし、できれば最小の負担で最大の結果を得たい所だけれど……どうしようか。
そういえば今も隠れている数人は果たして味方か、いやそうだとしてもその前に戦力たりうるのか。邪魔だけはしないで欲しいところ……
「君が納得したのなら、まぁ、うん……まあ、いいか……いいのかな……?」
「ダメですか」
「ダメって訳ではないけど。私が伝えたかったのはそういう意味じゃないんだよねぇー……」
「はぁ」
他にどんな意図があったというのだろうか。と、いうか違った受け取り方されてぐだぐだ言うのなら最初から言えば良いんじゃなかろうか。神様だから「言挙げ」がどうこう言ったところで、正しく伝わらなければ何の意味もないというのに。うざったい。
「……」
「怒ってる?」
「苛立っているだけですよ。」
「……そっか……」
悲しげに目を伏せる姿はまるでただの人のようで、圧のある霊力と不釣り合いに見えた。
回りくどい伝え方を好むのは神様らしい。けれどそれで伝わったか伝わっていないかを神様はあまり気にしない。どころか尋ねられることを嫌う神様が多い。
なのに、彼女は『伝わらなかったこと』を気にしている。
……宇迦之御魂神でこれならば、伊邪那美命もまたミクラサラの人間の部分の弱点も残っているのだろうか。それとも、個人差でしかないのだろうか。
個人差なら、僕も……少しくらいは昔みたいに戻れるのだろうか。
サヤがやっと心を開いてくれた、あの頃の僕に。
……考えたって仕方のないことか。今はそれどころじゃない。やるべき事は山積みだ。だから、まずは手近な問題から片付けていこう。例えば、そう_____
ずっと覗き見をしている不届き者を退治する、とか。
視線を向ける。まだ出てこない。足を向ける。反応はない。一歩踏み出す。次いで二歩目。三歩。
「……神原くん?どこへ_____あ。」
反応はない。つまり逃げることもしない。
バレているかもしれないと思いながらも何もしないのは余程の愚か者か____それか、よっぽど腕に自信があるかだ。
前者なら捨て置いてもいい。目の前にミクラサラとの再戦が迫っている以上、僕らに無駄な労力をかけている暇なんてないのだから。
だけどもし、後者なら?……交戦前に襲撃されて、彼が疲弊して火力が足りなくなってしまったら?
それだけは絶対に避けなければいけない。だから先に手を打っておかないと。
「……どなたかは存じ上げませんが」
そう前置きをして僕は、足元の小石を蹴り飛ばした。ひゅっと風鳴りだけを残して砕け散った小石は、その粒ひとつひとつの当たった地面が少し抉れるほどの威力だ。
当たれば死……まではいかなくとも、この時代の水準から考えて大怪我することは必至だろう。
砕けた小石は砂埃に紛れて風に運ばれてしまう。証拠も残らない。つまり、余程動体視力が優れていない限りは後続に教える術がないのだ。
これは脅しだ。彼を守るための。
……僕らが、救われるための。
「さっさと出てきて下さい。見ての通り忙しいので。」
敵意を剥き出しにした顔で。サヤなら絶対にできないような表情で。
僕は散乱した瓦礫の奥の彼らを睨みつけた。
次回更新は1週お休みして11/1になります。
よろしくお願いします。




