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第一章 #9.第二試合、vsフィーリ その2

「さあ~このナイフで君を…」

(あの魔法は近接距離だと使えない。何故かはわからんし正しいかもわからんけど…)

となればまずは…


「切り刻んでぇ~って、どこ行くニャあっ!??」

ハルトはくるりと身を翻すと、全速力で逃げた。

仮に近接距離であの魔法が使えないとしても、シンプルにその距離での戦闘はフィーリの方が優位だ。

馬鹿正直に立ち向かえば、それはそれで負け確である。


故に、ハルトの一手目は"逃げ"。

スケルトンの馬力を活かして全力の逃げを行う。


「待つニャあぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

後ろから猛スピードでフィーリが追ってくる。

生身のフィーリが普通に追いすがってくるのは恐ろしいことだが、流石に追いつかれはしないようだ。

とはいえ、このまま永遠に逃げられるかというと実はそうでもない。


スケルトンのバッテリーは、一時領域として即時利用できるエネルギーであるメモリ・エーテルと、備蓄領域として待機しているエネルギー=ディスク・エーテルに分かれている。

メモリ・エーテルが枯渇すれば、そこに再チャージされるまでの間は予備電源での動作となり、機動力が大幅に低下するのだ。


ハルトは、急停止して振り返る。

猛然と向かってくるフィーリに、エーテルハンドガンを乱射する。

銃口から青いエーテル流が放出されてフィーリに向かう。

フィーリは面食らったように立ち止まり、それを回避した。


ちなみにエーテルハンドガンはメモリ・エーテルのみで構成されており、それが枯渇するとスケルトンの備蓄領域からエネルギーを補充する。

よってこちらも永遠に撃ち続けることはできない。

使えるエーテルを撃ち尽くすと、ハルトはまた背を向けて逃げる。


今の一瞬で、スケルトンのメモリ・エーテルが多少回復できた。

それを使ってまた逃げる。

「ニャあぁぁぁっ!!!男らしく戦えニャぁぁぁぁっ!!」

後ろからフィーリの罵声が聞こえる。


(男らしくって…闘いに男も女も無いだろ…勝つか負けるかだけだっての)

ハルトはフィーリの罵詈雑言を完全スルーし、ひたすら走る。

そしてメモリ・エーテルが減って来たところで振り返り、まあハンドガンを撃つ。


勿論、そんな下手撃ちが当たる筈は無い。

単なる時間稼ぎである。

それを2度、3度と繰り返した。


そして…

「ニャっはっはっはっー!!もう鬼ごっこは終わりかニャっ!??」

ついにフィーリに追いつかれ、正面から対峙する事になった。


スケルトンのメモリ・エーテルは4分の1程。

これ以上逃げると、エネルギー切れ状態の時に追い付かれて

詰んだだろう。

ハルトとしては狙い通りの展開。

対するフィーリは余裕を見せているが、その額には玉の汗が浮かび、肩で息をしている。

これも狙い通り。


後は…

「…随分疲れてそうじゃないか。もうヘトヘトだろ?ギブアップしたらどうだ?」

「余計なお世話ニャ。獲物は黙って…」

ハルトは一気に距離を詰めた。

鋼鉄の右拳を振り回す。


不意を突いたつもりだったが、フィーリはそれを軽く躱す。

さらに拳を振る。

周囲の建物を薙ぎ倒しながら、小柄なフィーリに迫る。

「そんな大振り、当たらニャいよ〜だ!」

「そうかよっ!!」

スケルトンの攻撃はフィーリに届かない。しかし、反撃も無い。

(予想通り…!こいつ、休んでやがるな…!鬼ごっこした甲斐があった…!)


ハルトはさらに拳を振り上げた。

フィーリはそれを見てバックステップした。

そしてそれを見て、今度はハルトも退がった。

「ニャっ!?また逃げる気かニャっ!??」


ハルトはスケルトンのメモリ・エーテルを使い切る勢いで、最大出力で連続バックステップをする。

(あいつにはこっちのエネルギー残量はわからない筈…!釣れろ…!!)


「逃がさないニャあっ!!」

フィーリはナイフを構え、走りながら詠唱する。

「常世に在りし幽なる魂よ。影に宿りて現世に来たれ!シャドウ・タイド!!」

ハルトの影は、フィーリの側に伸びている。

フィーリはその影を狙って、ナイフを振り上げた。


(今だ!!)

「スケルトン!パイロット強制排出(パージ)!!」

ハルトはスケルトンから押し出されるように飛び出した。

さしものフィーリも、それは想定外だったらしく驚愕に凍り付いている。

ハルトはパージの勢いを活かして、手に持っていた瓦礫…逃げながら拾っていた…をフィーリの頭に叩き付けた。

「ニャあっ!??舐めた真似を…」

ハルトはとフィーリは絡み合うように倒れた。


そこからは完全にノープラン。

揉みくちゃになりながら、とにかくナイフに手を伸ばす。

フィーリはハルトの狙いを悟るや、すぐにその腕を払い除けようとする。


ハルトの勝機はここしかない。

死に物狂いで追い縋る。

ナイフを持つフィーリの手を掴む。

どうにかそれをこちらに引き寄せようとするが、フィーリの腕は動かない。

小柄なのに物凄い筋力だ。


腹部に膝が叩き込まれた。

体が重くなる。

「ニャはははっ!君、そんな力でボクに勝とうなんて、甘すぎぃっ!!」

フィーリはハルトの手を振り解いて、ナイフを逆手に構えた。

(くっそぉっ!!?こうなりゃヤケクソだぁっ!!?)

ハルトは地面に落ちていた瓦礫を拾い上げ、破れかぶれに振り回した。

その瓦礫はフィーリには勿論当たらなかった。

が、盲滅法(めくらめっぽう)な攻撃は、偶然にも()()()()()()()()()()()()()


ギィぃぃぃぃぃっ!!

フィーリの影が悲鳴を上げた。

フィーリの右半身が一気に赤い靄に覆われた。

「ニャぁっ!??しまったニャっ!???」

「そういう…事か…!!自分の…影にも攻撃が入る…それが制約か…!!」

ハルトは動かなくなったフィーリの右手からナイフを奪い取った。


「ちょっ!?ま、待つニャ!??話せば、話せばわかる…」

「待たない」

ハルトは少し横にズレてフィーリの影に狙いを定めると、力一杯突き刺した。


ギィギガギギィィィィ…

影が断末魔の声を上げ、フィーリの全身が赤い靄で包まれた。

『そこまで!試合終了!ハルト・アヤノチームの勝利だ!』


********************

こうして、初日にして突然の模擬戦は幕を閉じた。

ちなみに、第三試合ではトモヤがルナに顎で使われつつ、最後は囮として単身突撃させられ、敢えなく撃沈。

ルナはその隙を突いてチカとレーナを持ち前の毒魔法にかけて、後は逃げ回るという見事な遠距離戦を展開し、勝利した。

生贄にされたトモヤは、それでも鼻の下を伸ばして嬉しそうだった…

読んで頂き、どうもありがとうございます!


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