第一章 #5.出会って早々模擬戦
「今から模擬戦をやる。準備して第三闘技場に集合しろ。」
今日から心機一転、異世界高校生活がスタートだ!
友達作って勉学に励み、女の子といい感じになってキャッキャうふふ出来るんじゃね!?
なんて甘い事を考えていた時代が、ハルトにもありましたとさ…
自宅待機が解けて初めての登校日。
うきうきしながら登校したハルトを待っていたのが、ドニー先生の一言だった。
出会って早々模擬戦とかすんの…?
ハルトは渋々と運動服に着替えて第三闘技場にやって来たのだった。
「来たなボンクラ共。…まずは先に言っておく。前言は撤回する。約束だからな。俺がお前らを一人前に育ててやるよ。」
全身包帯まみれのドニー先生は、人喰いカマキリでも見るような顔で俺を見た。
「中には色々ツッコミたい奴が混じってるが…」
盛大なため息。
心なしかクラス中の視線が集まっているような気がして首の後ろがゾワゾワする。
「だがやるからには手加減はしない。地獄の学院生活にしてやるから覚悟しとけ。…まあ敢えてここに残ってる奴らには無用な忠告かもしれんがな。」
今ここに集っているクラスメイトは、ハルトを入れて12人。
ドニー先生との闘いの後に自信喪失による辞退者が続出し、結局元の半分も残らなかったのだ。
「では早速模擬戦を始める。オビー先生、チーム分けを頼む。」
「わかりました。」
オビー先生は相変わらずカフェ店員のような優雅な雰囲気で、ハルト達12人を2人1組の6チームに分けていった。
そして決まったチーム分けと対戦相手が次のようなものだ。
第一試合
リーザ・ブルーローズ
"ヤマブキ村の"クルミ
VS
エリー・ヴァージニア
サキ・アイバ
第二試合
ハルト・サトウ
アヤノ・モトヤマ
VS
アリアス
フィーリ・"ナイトウォッチ"
第三試合
トモヤ・イバラ
ルナ・"ノクティルカ"
VS
チカ・ナガツキ
レーナ・エルフリー
こうやって改めて並べられると…女の子ばっか残ったという事に気付く。
最初は半々くらいだった筈だが、知らぬ間にハーレム展開に…これは…良い。
などと小さくガッツポーズをするハルトに、1人の男子生徒が話しかけてきた。
「ハルト。お前の相手、あのヤンキーみたいなやつじゃん。大丈夫か?」
「トモヤ。うーん、どうかな…俺生身だとクソ雑魚だからなぁ…そういうお前の方は…チームメイトがやべぇじゃん。」
「ああ。ヤバイ。何がって…」
そこでトモヤは意味ありげに言葉を切った。
ハルトも近くに人がいない事をしっかりと確認する。
聞かれたらまずい内容だ…慎重に…
そして2人で目を合わせると、同時に言葉を発した。
「「エロさが」」
このクラスには色んな事情で1組と2組に入れなかった者が多く集まっている。
そしてトモヤのチームメイトであるルナ・"ノクティルカ"は…
「あらぁ?2人して、私のウワサかなぁ?」
当の本人が、いきなりハルトの後ろからのしかかって来た。
背中に物凄く大きな、弾力と柔らかさが絶妙な、2つの球が押し付けられる。
ハルトはそれが何であるのかを考えないよう、全力で頭を真っ白にした。
ソレは男の夢と希望が詰まったアレであり、ルナの香りたつような妖艶さを飛躍的に高めるアレである。
ソレに触るという事はまさに大人の悦楽である筈でソレが背中にグリグリ押し込まれているなんて事がある筈がない。
けれど必死に誤魔化すハルトの頭とは裏腹に、その身体、特に腰から下がどえらい反応を示しつつあり、ハルトは釣り上げられた魚のように暴れてなんとか脱出した。
「るるる、ルナさん…」
向き直ったハルトの目に、先程まで触れていたソレが飛び込んでくる。
ルナの戦闘服は動き易さを重視した…ためなのか分からないがとにかく露出と強調が凄い。
胸元は大きくはだけており、その魅惑的なラインが半分以上丸見えである。
美しく鍛えられた腹筋をこれでもかと露出し、さらにタイトなスカートには深いスリットが入っている。
あちこちに見える肌色から蜜のように濃厚な香りが漂い、視覚でも嗅覚でもハルトを刺激してくる。
「うふふ。よろしくね?トモヤくん。」
ルナは次にトモヤに近寄ると、凶器的な胸元を寄せてさらに破壊力マシマシにして悩殺した。
「は、はい…ルナ様……」
トモヤは既に、ルナの靴でも舐めそうな勢いでメロメロになっている。
「じゃあ…あっちで秘密のお話をしましょ?2人っきりで…ね?」
ルナがトモヤの耳元で囁くと、トモヤは仔犬のように舌を出してぶんぶんと首を縦に振った。
彼は最早ルナの下僕のようだ…
(わかる…わかるぞトモヤ…男はアレには…逆らえないものだもんな…)
ハルトは涎を垂らしながらルナに連れられていく旧友に生ぬるい…いや羨望の眼差しを送った。
「…っと、そんな事してる場合じゃなかった。俺のチームメイトはっと…」
アヤノ・モトヤマはハルトと同じく召喚者である。
眼鏡をかけた図書館にいそうな子…
ハルトの持つアヤノのイメージはそんな感じであった。
果たして再会した彼女は…
「あ、あ、あの…ハルト…くん…同じチーム…ですね。が、頑張りましょう」
そう言って小さな力瘤を作る彼女の性格は幼かった頃とあまり変わっていなさそうだ。
ただ大人しそうな顔とは裏腹に、その身体はルナに負けず劣らずグラマラスである。
ルナとは異なり、アヤノの着ているのは無地の白Tシャツだ。
下は紺色の短パン。
…何故か体操服にしか見えない。
そしてその体操服はアヤノの肉体美を隠せておらず、というかそのアンバランスさが逆に異様な魅力を発揮している。
(な、なんなんだウチのクラスは…女子のレベルがバグってるぞ…)
ハルトはアヤノが動く度に揺れ動く白シャツの下ばかり目が行くのを、仁王像の如き目力でどうにか制御する。
「ああ、よ、よろしく。アヤノ…さんはどんなスキルなんだっけ?」
「は、はい。私は最初、超速読という本を物凄く早く読めるスキルを授けられまして…」
「ほうほう、なるほどなるほど」
「で、そのスキルが進化しまして、かくかくしかじかでごにょごにょ…」
「えっ!?それ…凄くね!?こ、これは…これで勝つる…!!」
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「お前ら、そろそろ集合しろ。始めるぞ。」
ドニー先生の声に、作戦会議をしていたクラスメイト達が集まって来た。
第三闘技場で再現されているのは、市街地。
と言っても流石に地球のような高層ビルが立ち並ぶようなものではなく、所謂"中世ヨーロッパ風"都市の街並みだ。
石造りの建物や道路が続き、そこかしこには教会などの大きな建造物も並ぶ。
それが3km四方にも渡って用意されており、必要に応じて区画を区切ったりする事も出来るという。
そして今回の模擬戦はその中の1区画を使って行われるらしい。
「以上だ。質問はあるか?」
ドニー先生は一旦そこで説明を止める。
すかさず、ブロンド髪の美少女…リーザが真っ直ぐ手を上げた。
「魔法具の使用は許可されますか?」
魔法具…リーザの杖やエリーの聖剣など、魔法を強化したりそれ単体で魔法を発動できる武具・道具の事だ。
恐らくハルトのエーテル・マシンも魔法具という扱いになる…筈なので、ハルトにとっては死活問題だ。
「許可する。全力でやれ。」
思いの外あっさりと魔法具の使用許可が出た。
ハルトはそっとガッツポーズをした。
「ただし!テメェのはダメだ!!」
ドニー先生は親の仇であるかのようにハルトを睨んで付け加えた。
「えぇ〜それじゃ勝負になりませんよ…俺、魔法具無いと雑魚オブ雑魚なんで」
「自信満々に言う事じゃねぇだろ…あの後始末どんだけ大変だったと思ってんだ…」
「いやでも、俺ほんとに何も戦闘スキル無いですよ…?瞬殺されちゃう…」
ドニー先生は物凄くめんどくさそうに腕を組み、考え始めた。
「ならお前…あれだ…もっと弱いやつ…こう、誰も死なないと確信できるようなやつ…ならいいぞ」
「えー」
「なんだそのお菓子もらい損ねた5歳児みたいな顔は」
「いやー、つまんないなぁと思いまして…」
「…お前のお陰で俺の骨が何本折れたか、教えてやろうか?」
ドニー先生は包帯でぐるぐる巻きの腹を見せつけてくる。
そう言われるとハルトはぐっと言葉に詰まってしまう。
「わかりましたよ…なんかちょうどいいやつ探しときます。」
「よし。」
「…半殺しならいいです?」
「本気で良いと思って言ってんのか?俺の骨がどんだけ…」
「わかりました、わかりましたよ!」
「よし…他に質問ある奴はいるか?いないな?さっさと第一試合を始めるぞ!」
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