ナリア本領発揮
「二人ともお待たせぇ~!ってどうしたの、ボロボロだけど~…。」
戻ってきたホロケウはナリアを連れて二人の元に戻ってきたのだが、ターシットとユキのボロボロの様子を見て驚く。
「ホロさん、お帰りなさい!いやぁ、ユキさんに手合わせしてもらっていたら楽しくてつい…。」
ターシットはユキと手合わせをしたことをホロケウに伝える。ターシットはユキと手合わせできたことが嬉しかったため興奮気味に話した。ホロケウは驚いたが、ターシットの性格上当たり前にあり得る話だったため、やっぱりなという思いから苦笑いを浮かべた。
「して、こちらの方は?」
「あぁ、ナリア・ジェリーフィッシュちゃん。彼女は特性に呪術師っていうものあってね…。」
「いいよ、ホロさん。細かい説明は私がするから。」
ダンジョンを観察するように見ていたナリアは二人に視線を移した。簡単な挨拶を済ませるとナリアは自分のことと現在のダンジョンの状況の説明を始めた。ナリアの特性に呪術師というものがあり、相手に呪いの魔法をかけることができる特性である。かけるということは呪いがかけられているかどうかもそういった視点で見ればすぐにわかるのだという。
ナリアがダンジョンを見た結果、ホロケウの推測通りユキは一種の呪いがかかっている状態だった。呪いにも精神的なもの、身体的なものなどがあり、これは一種の精神的な呪いであった。
「でもホロさん凄いね。私もそんな視点で今までダンジョンを見てなかったからダンジョンボスが呪われているなんて思いもしなかったよ。」
「いやぁ、ユキさんみたいな人と出会ったからたまたまだけどねぇ。」
急に褒められたことで照れ笑いを浮かべるホロケウの横で、右の瞳を壺菫色に光らせたナリアがもう一度ダンジョンとユキを見る。ナリアのこの妖しく光る瞳は邪眼と言う。呪いはかなり特殊なものらしく一般的に視認することができない。ただ呪術師でなくてもある程度魔法に長けた魔術師であればその雰囲気を感じることはできる。しかしその詳細までは把握できないのが呪いであった。邪眼はそのように一般的には不明確な呪いを視認でき更にその構成が詳細に見ることができるようにするのだった。
「うん、やっぱりユキさんの精神はこのダンジョンに縛り付けられているような状態だね。表面的ではなくかなり深いところで…。恐らくダンジョンが生み出された時に同時にかけられているんだろうね。」
「もし我がその呪いを解かずしてダンジョンから出ようとしたらどうなるのだ?」
「うん、恐らく死ぬ。精神ごと破壊されるような形になるから魂の完全消滅のような状態になるだろうね。」
「成程…。自分がそのような状態であったとは非常に興味深いものだ。」
ユキは自身がまさか呪いを掛けられた状態でこのダンジョンに呼び出されたとは思っていなかった。ダンジョンを守るというのは自分にとって自然なことで、その声は本能的なものだと思っていた。ナリアが来てくれたことで改めて自分の状況を理解した。
「ナリアさん、ユキさんの呪いって解けるんですか?」
「ターシットだっけ?呪いだったら私に解けないものはないよ。ユキさん、大したこと無さそうな呪いだけどちょっとこの呪い根深いから頭に響くかも知れないけど…。解くよ?」
「ナリアよ、承知した。頼む。」
ユキが承諾したことを確認するとナリアは再び邪眼を発動させた状態で開いた右手をユキに向けた。
「深く刻まれし呪いよ、今ここで消滅せん!解呪!」
「ぐわぁぁぁぁぁっ!」
ナリアがブレイキングカーズを詠唱するとユキの体からどす黒い気が放たれた。ユキは頭を押さえ苦しみだした。どす黒い気は徐々に激しく大きくなりそれに同調するかのようにのたうち回るユキの体から放たれると、徐々に小さくなっていき消失した。
「うん、これで終わり。ユキさん、気分はどう?」
「フッ、死ぬかと思ったわ。しかし、何とも頭の中が澄み渡るようだ。」
「そう、良かった。」
ユキが顔を上げて笑顔を見せるとナリアもそれに応じるかのように微笑んだ。様子を見ていたターシットは初めて見る解呪に目を輝かせる。それと同時にこれでユキも一緒に旅ができるのかということを素直に喜んだ。
「しかし、ユキさんが呪いにかかっていたってことはさぁ~。」
「そう、ダンジョンが作られるときに呪いをかけられる存在が間違いなくいるってことだね。」
ホロケウがとりあえず解呪を成功したことを確認するとずっと疑問に思っていたことを口にした。ナリアもそれに同調する。ターシットとユキも訝しげに話に耳を傾ける。一族に対する呪いなどこの世界にも生まれながらにして呪われるということはある。しかしそれは先代が何かしら呪われるような状態であったが故に、その後生まれた後継者も生まれながら呪われてしまうということである。
そうなると自然と呪われるなんていう状況は考えられない。ダンジョンを生み出しそこのモンスターにあたかも使命かのような呪いをかける存在がいるということである。異世界と呼ばれるダンジョンとこの世界を繋ぐような存在、そんな者が存在するのだろうか。そんな話をしてる時だった。突如ダンジョンが崩れ出した。
「まずい、消失する。急いで出ないと!」
ナリアが声を上げると全員入り口に向かって動き出した。全員が外に出た直後、ダンジョンはまるでそこに何もなかったかのように消失したのだった。
「これは、ユキさんが解放されたからってことですか?」
ターシットの問いかけにナリアは恐らくと頷いた。今まで攻略してきたダンジョンがボスを倒すことで消えたことを考えると、ユキがダンジョンの呪いから解放されたことでそのダンジョンは制御できなくなり消失したのだろう。
「ユキさん、ダンジョンから出てみて大丈夫ですか?」
「ふむ、どうやら何ともない様じゃ…。これで共に行けるぞ、ターシットよ!」
ユキは今までの厳格そうなイメージから考えられない満面の笑みを見せターシットの頭を胸元に抱き寄せた。ユキの柔らかいものの感触が顔に伝わりターシットは顔を赤らめる。
「ちょっ、ユ、ユキさん!?」
照れるターシットをよそにユキは更にその頭を抱き寄せるのだった。ホロケウとナリアもそんな嬉しそうなユキをうんうんと頷きながら見ていた。




