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私のペットは皆何故か凶暴です(仮名)  作者: じゃがいも
まずは味方を作りましょう
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武勇伝





「さぁさぁ、1番人気な桃金豚と黄金鳥のソーセージだよ〜。」



ステーキ皿の様なお皿には、大きくて太めのソーセージが乗っていた。

ジュージューと鳴る鉄板からは、暴力的なまでの匂いが漂って来る。



ナイフとフォークで一口分切れば、パンッパンに膨れたぷりっぷりの塊から、プシャッと勢い良く肉汁が飛び出して来る。



ふぅふぅと冷ますのもそこらに口に放り込めば、途端に口の中で暴れ回る熱塊。

ちょっと後悔しながら、涙目ではふはふはぐはぐと食べ進める。



一口噛み締めれば、途端にジュワッと溢れ出て来る肉汁。

すぐにふわっと香る、ハーブの香り。

口の中に広がる豚や鳥の、ダイレクトな旨みや甘みやコク。

次いでやって来るピリリと舌を刺す胡椒と、ちょっと濃い目の塩気。



ビールに合いそうな濃いめの味付けは、長時間食べれず酷使した体と、水分と塩分が涙で抜けた体には暴力的なまでの美味しさだった。



「んぅ〜っ!んっまぁぁ〜……。」



「そりゃあ、私達で作ってるからね。」



ほうっと恍惚に息を漏らせば、フフンと少し誇らしげに女将さんが笑った。




「えっ!!凄い!!じゃあ2人とも天才だね!!」



「そう?ふふふっ。」



私は勢いそのままに、目をキラキラと輝かせて驚嘆する。

すると女将さんは目をぱちくりと瞬かせた後、照れ臭そうに笑い、店主は優しそうな目でありがとうなと笑ってくれた。



「はい、サラダも食べな〜。」



次に来たりんごサラダも、凄く美味しそう。


木製のサラダボウルには赤や黄色のプチトマト。

緑や紫の葉野菜。

黄色やオレンジの人参やパプリカ等、様々な物が色鮮やかに皿に盛られている。



色鮮やかなそれは、見てるだけでも楽しい。



1口食べればシャキシャキシャクシャク。

色んな食感が面白い。


ドレッシングはオリーブオイルに酢等、今回もシンプルな味付け。

でもりんごが入ってる為、甘酸っぱくてさっぱりとした味わい。

こってりとした食事の後でも、パクパク食べれちゃう美味しさ。






口の中がさっぱりした所で、次はいちじく。



くし形切りにされた皮付きのいちじくに、ぱくっとかぶりつく。

途端に、鼻に抜ける甘い香り。

ジュワッと口の中に広がる、甘過ぎない優しい甘さ。

柔らかい果実に、プチプチとした食感が面白い。


手と口の周りが汚れるのが唯一の弱点だけど、それを補って余りあるぐらいには美味しい。

ジューシーで甘過ぎない優しい甘さは、万人受けする味だ。



甘い香りに誘われてパクパク食べれば、いつの間にか手と口の周りはベットベト。

女将さんが笑いながら、奥からおしぼりみたいな物を出してくれたので有難く拭かせて頂く。



いや、本当。

いちじくの唯一の弱点だよね。

優しい甘さで美味しいんだけどね。

しょうがないよね、皆誰だってこうなるよ。


おじさんにも髭みたいだって笑われたけど。






おじさんは昔やった馬鹿な失敗談から武勇伝まで、料理を食べながら次から次へと面白おかしく話してくれた。





3人は元々昔からの幼なじみだったらしく、幼少の頃から作り上げた気安い関係は、私の暗くなった心を少し明るくした。




良い格好しいのおじさんがドヤ顔で武勇伝を話し、時々女将さんからツッコミが入る。

たまにおじさんが困って旦那さんに助けを求めれば、旦那さんが容赦なく切り捨てて笑いを誘ったり。



女将さんと旦那さんの、結婚するまでの拗れに拗れまくったすったもんだ話だったり。

幼少の頃から続く、聞いてるこっちが焦れったくなる様な有りし日のぴゅあぴゅあの思い出話が、おじさんから暴露されたり。

傍から見てて焦れった過ぎてムカついたおじさんが、2人のキューピットになった話だったり。





おじさんが失敗談を話せば次から次へと話題に事欠くことは無く、フラれ回数通算100連敗中のおじさんが今夢中なのは大人なお店で働くキャリーさんって言う女性の素敵さ加減だったり。


美人で明るく親しみやすいのに、おじさんへの当たりだけやたらと強く、冷たくツンツンしてるのが逆に良いというのがおじさん談。



しれっと度々毒舌をかます割りには、面倒見が良く懐も深い人柄で、本当に元気が無い時は優しく、元気な時は当たり強めと飴と鞭が絶妙らしい。

おじさんはデレデレ状態なので、その女性に良いようにコロコロされてるんだとか。



それはもう、この街の女子ネットワークの中で有名になり過ぎて、名物おじさんと化しているのでは…。




そんなどこか残念なおじさんのお陰とも言うべきか、何とも言えないような沈黙の空気とかも無く、何か腫れ物を触るような空気も無く、明るく楽しい食事が出来た。

私自身話せそうな話題は何も無いし、突っ込まれて断るのも、微妙な空気も嫌なので非常に助かった。





そんな漫才みたいな会話に、時にドン引きしながら、笑い過ぎて時に笑い泣きしながら食べた食事は、そりゃもう暖かくて美味しくて。



久しぶりにも感じられる楽しい食事は、転生する前の楽しかったであろう平和な生活を、ぼんやりと思い出させた。

それは解像度の悪い画像で見るような、少しぼやけた様な感じで。




でも、あまりもう思い出せなくて。

それが、悲しくて。




でも、その時の感情だけは残っていて。

少しの楽しさと、少しの切なさを私に残した。










甘くて、少し苦い夕食の後。



湯船に浸かる事は流石に出来なかったけど、共同のシャワー室みたいな所で体を洗わせてもらった。

現代よりも全く泡立たない物ではあったけど、石鹸も使わせてもらえた。


女将さんには私一人では分不相応なぐらい、一等良い部屋に案内された。


普段自室で使ってる私のベットよりもふっかふかで、疲れからかその日はネガティブな事も考えず、夢も見ずにぐっすり眠れた。








朝日が昇る前に起きて、簡単な朝食を食べて



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