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私のペットは皆何故か凶暴です(仮名)  作者: じゃがいも
まずは味方を作りましょう
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眠り薬の効果は



《コンコン》



「入れ。」



大丈夫。

絶対飲ませる。


決意した顔はドアの前で止め、どうしていいか分からないような不安げな顔を作る。

何かを決めたような勇ましい顔をして、不審がられない為だ。


あの薬が、いつ効くのか分からない。

もしかしたら、遅効性かもしれない。

そうなるとなるべく時間稼ぎをしたい。

それならば決意を固めたような顔より、不安げな顔の方が不自然では無い。


まぁ、苦もなくその顔を作れるあたり、私自身も多分に気持ちは入ってはいる。

でもそっちでも大丈夫だ。

嘘を上手くつくコツは、少しの真実を混ぜる事。


色んな漫画等にも出てくる、有名な話だ。



深呼吸して、私はドアを開けた。




「失礼します。紅茶をお持ちしました。」



「あぁ、逃げなかったのか。偉いな。」



逃げた所で面倒な事にしかならないし、そうなったら益々、またお前来るだろ。



「そこにかけたまえ。」



「失礼します。」



ロングジョー卿の向かいのソファに座る。

ニヤニヤとしまりのない下卑た顔は、めちゃめちゃ気持ち悪い。



「こちらがロングジョー卿の物になります。」



「あぁ。……ふむ、一応交換しておこう。」



「いえ、それは止めた方が宜しいかと。」



「ほう?」



「私が飲む物はお客様の為の紅茶とは違い、普段お客様が飲んでいる物より安く、味もかなり落ちた物になります。」



「ふむ。……まぁ、いいだろう。こんな子供に何か出来るとも思えない。」



「……何の話でしょうか……?」



心底不思議そうな、不安げな中でも戸惑う感情を見せれば、ロングジョー卿はフンと馬鹿にしたように笑う。


そしてロングジョー卿は、苦もなく紅茶を一気に煽った。

私はなるべく、時間をかけるように少しづつ飲む。



ニヤニヤと下卑たしまりのないだらしない顔は、私を上から下まで舐め回すようにジロジロと見つめる。



「何も心配しなくていい。少し痛いかもしれないが、すぐに良くなる。」



「……お水はもう飲まれましたか?」



「フッ。あぁ、飲んだよ。水も紅茶も飲んだが、それでもこれからする事は変わらないよ。」



「……そうですか。」



「フッ、残念だったね。だが、君もまだ小さい。お小遣いはその分弾んでやるから、その金で甘い物でも買うといい。」



「……ありがとうございます。」



「私は優しいからな。他の者より多くあげよう。」



「……、ロングジョー卿のご配慮、痛み入ります。」



「まだ紅茶を飲んでいるのかね。」



「猫舌な物で。」



「全部飲まなくたって、私は良いんだぞ?」



「いえ、いえ。もう少し、もう少しだけお待ちくださいな。」



「フッ。早く飲んでも遅く飲んでも、結果は変わらんぞ。」



「えぇ。ですが、ロングジョー卿は紳士でお優しい。そんな貴方様なら、私がこの紅茶を飲むまでは、待ってくれるでしょう?」



「うん?……うむ。あぁ、そうだとも。私は紳士的で優しいからな。覚悟を決める為に君がその紅茶飲み干すまでは、それぐらいは待ってやるさ。時間はたっぷりとあるからな?」



「……えぇ、えぇ。とてもロングジョー卿は紳士的でお優しいですね。」



「君は歳はいくつだね。」



「5歳です。」



「ほう?体は少し小さい気がするが?」



「少々、体が弱かった物で。」



「それはそれは。可哀想に。」




「……。」




「親は?こんな所で働いて、何も言わないのかね。」



「えぇ。最近の流行病で2人とも亡くしまして。」



「フッ。……可哀想になぁ。それでこんな所で働いているのか。」



「えぇ、まぁ。他に知り合いもツテもありませんでしたので。ここなら3食食べられると聞いて。」



「だがそんな身の上話を聞いた所で、同情はするがする事は変わらないぞ。」




「えぇ、えぇ。ですからせめて、お小遣いを少々増やして頂けないかと。」



「ハハッ。君、良いね。そういう子は嫌いじゃない。無理矢理やって手酷く扱うのも悪くないが、従順な子も好きだよ。素直に従うなら、私も悪いようにはしない。なるべく痛くないようにしてやろう。」



「……、ありがとうございます。」



「……そろそろどうかね?」



「えぇ、えぇ。もう少し、もう少しで飲み終わりますので。」



「ふむ、あまり手間をかけさせないでくれ。私もあまり、気が長い方では無いんだ。それこそ君だって、手酷く扱われたくは無いだろう?おや。何だか…、凄く、眠く――――……。」



「ロングジョー卿……?」



ロングジョー卿は、ぐぅぐぅと気持ちよさそうに寝入ってしまった。



あぁっ!!

やっと来たか〜っ!!

長かったーっ!!!


でもタイミングはバッチリ!!

助かった!!

でももう本当に、あのお婆さんに騙されたのかと……!!

もう本当に、どうしようかと思った……。




ロングジョー卿は、すっかり寝入ってしまっている。

この分なら、明日の朝までぐっすりだろう。



あぁ、本当に助かった。

あのお婆さんマジありがとう!!

疑ってごめんね!!!


音をなるべく立てずに部屋から出て自室に戻れば、いつもの寝る時間になっていた。

これならこのまま戻らなくても、何も言われないだろう。



あぁ、助かった。



これから職務に戻るとか気まず過ぎるし、事情を知っている人に会ったら何て説明していいか分からない。

何なら親とかに会ったら最悪だ。

責められる事は間違いないし、私自身もこれまでの事もあり、彼等を一発張り倒してしまいそうだ。

勿論気分的には、一発なんかじゃ全然足りないが。


そんな荒ぶる気持ちをどうにか鎮める為にも、今日はもう大人しくしておいた方がいいだろう。


メイド服から、あの日イケおじに買ってもらった寝間着に着替える。

着替える時に濡らしたタオルで体や髪を拭き取ったので、最低限綺麗にはなったはずだ。


少し大きめの白のフリフリの服に、フリフリのパンツ。

裾や袖や全体的に所々付いたリボンが、より可愛らしさを増している。

しかもパンツなので、動きやすくて大変素晴らしい。

私はパジャマはワンピースじゃなくて、絶対パンツ派だったので大変ありがたい。

元々フリフリを着るタイプではなかったが、嫌いでは無いしこれはこれで好きだ。

それを着る勇気と美貌を持ち合わせてなかっただけで、ちょっとはこういう物も着てみたい願望はあった。

それが叶ったのだ。


毎夜ファッションショー気分である。



今日の事はとりあえず、色々と考えず明日にしよう。

人は夜考えても余計な事しか考えないらしいし、確かにそれは真実だろう。


ベットに入れば未だ昂っていた気は、少々落ち着いてくる。

元々、この事が無くても今日はとびきり忙しかった。

私自身もヘトヘトだ。

うとうととした眠りに誘われて、私は夢の世界へと落ちていった。





ロングジョー卿は、朝食を食べてこの家を去っていった。


私はその間率先してキッチンを手伝い、外に出る事は決してしなかった。


とりあえずひとまず、一難は去った。




問題は親だ。



昨日はバタバタと館内を走り回ってはいたが、それでも基本はキッチンから出なかったし、今日だって午前中の仕事はキッチンになるだろう。

ひとまずは、親とたまたま鉢合わせなんて事は起きない筈。


ロングジョー卿は昨夜お酒に酷く酔い、水持って行った私と話している内に、たまたまタイミング良く眠ってしまっただけだ。


そう。

それ以上でもそれ以下でもないのだ。

実際嘘ではない。

真実を言ってないだけで。



そして、親は私をどこで見たのか。

どこで知ったのか。


探りを入れる必要がある。


基本的に、キッチンメイドは外を出ない。

出るとすれば、料理長が呼びつけられるぐらいか。

それも2人の文句やわがままを聞くぐらいで、それ以上の話はしないはずだ。

雑談に応じるぐらい仲が良ければ、呼びつけから帰ってくる度、料理長が毎回げっそりした顔をしない筈だし。


となると、1番接触する可能性が高いのはハウスメイドだ。

彼女等の仕事は、一応館内の掃除。

だがこの家は慢性的な人手不足も相まって、両親の身の回りの世話も、彼女等が持ち回りで担当している。


彼女等も別に、無駄な話は出来るだけしないだろう。

でも自分が不利になった時に私を売るなり、気をそらす為の道具にするなりして、口を滑らす可能性も無くはない。


彼女等も別に私の味方な訳では無いし、面倒な事になりそうだから、積極的に私の話をしないだけで保身の為ならそういう事もするだろう。




となると、怪しいのはハウスメイド。


ハウスメイドのファイブ・オ・クロッ(午後の休憩)クに出れば、何か分かるかもしれない。



だったら、午後からの仕事は掃除にしよう。




逸る気持ちを抑えて、私はキッチン内を走り回った。



ブレスレットの値段を3,500クローネ→35,000クローネにしました。

桁を1つ上げて、ぼったくり感UP☆

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