地獄のティータイム
これは、私の状態も分かってないんだなぁ。
何せ、本当に孫は生きているのかとまで言われる始末だ。
手紙の束を見る限り、むしろ私が産まれる前から会ってない感じなので孫の顔すらもちゃんと見れてないのかもしれない。
うーん、手紙の内容を見る限りは、親戚はまともそうだ。
何しろあのクズ両親が、会わないって選択をしてる時点で若干友好が持てそう。
親戚達に今の現状や私の生存等を知らせる為にも、どこかで折りを見て一報を送った方が良いだろうな。
私から手紙を出す為に、新しい便箋を出してスカートのポケットに入れる。
ちょっと中がぐしゃぐしゃになりそうだが、この時間以外に来るのは流石に危ないかもしれない。
私の命がかかってるので、親戚達には甘んじてお許しいただこう。
そっと音を立てないよう部屋から出ると、私はまた何食わぬ顔で仕事に戻った。
最近はまたトゥイーニー業に戻り、あの激務の日々を何とかこなしている。
ちなみに、あれから執務室にこっそり忍び込むようになったのだけど、まったく気付かれる様子は無い。
この家の防犯、マジで心配になるぐらい本当にザル。
そして今日も今日とて、相変わらず地獄のティータイム。
ちなみに今日は、ハウスメイドのティータイムに出るらしい。
あーやだやだ。
面倒っていったらありゃしない。
でもポロッと重要な事が聞けたりもするので、聞かない訳にもいかないのだ。
「そういえば聞いた?奥様ったら最近また、パーティー用の新しいドレス買ったらしいわよ?」
「またぁ?そんなに買ったって、もう少し痩せなきゃ綺麗に見えないでしょ。フフッ!」
「ねぇ?お金の無駄よねぇ。」
「本当本当。1回着て出かけたら二度と着たくないとか言う癖に、それならじゃあ古いドレスとかを私達に下げ渡してくれればいいのに。」
「それすらもしないしどこかに売りもしない。部屋にはドレスやらアクセサリーが溜まるばっかりだし、本当馬鹿みたい。」
「本当本当。でもね、実は私……、だいぶ前に何年も前の古いドレス、実は売っちゃったのよね!」
「え!!嘘?!本当に?何それ凄くない?」
「本当本当!フフッ!それにこの子だって前やった事あるらしいわよ。ね?」
「フフフッ!実はね。だって、奥様ばっかりずるいじゃない?私達だって色々我慢して、ご飯だって贅沢してる訳じゃないんだもの。どうせ気付いちゃいないんだし、一回着たら手も付けないんだもの。絶対バレないでしょ!」
「えぇ?何それずるくない?」
「あら、そんな事言うけどあんただってこの前やってたじゃない?そのお金はどこやったのよ?」
「え?何も買ってないわよ!」
「いいからここで白状しなさいよ?」
「あ〜、実はね。フフフッ!アクセサリー買っちゃったわ!!」
「え?!どこのよそれ?」
「実はね……、前言ってた場所で買ったの!」
「あぁ、何だ、あそこか。あんな所ダメよ。前買ったら私も、不良品混じってたもの。使ってたのもすぐ壊れちゃったし。」
「え?そうなの?ハァ。勿体ない買い物しちゃったかも。」
「今度見てあげようか?」
「え?悪いからいいわよ、そんなの。」
「いやいや、いいからいいから。遠慮しなくていいわよ、私達の仲じゃない?」
「そう言えば、あんたも何か壊れて失くしたんだっけ?」
「あ、そうなのよ!!せっかく買ったのにさ!」
「フフッ!どこでも置いておくからよ。あんたってばこの前も変な場所に置いてたし。」
「はぁ〜、本当どこ行っちゃったのかしら?」
「知らないわよ、適当に置いておくから。」
「そういえばあの子ってまだ生きてるの?」
「あの子って、あのボサボサの汚い子?」
「そうそう。最近見ないからどこ行ったのかと思って。」
「そういえば最近、あの子にご飯も飲み水もあげてないわね。」
「あぁ、まぁ別にいいんじゃない?誰もあの子が居なくなったって困らないでしょ。」
「確かに。むしろ感謝して欲しいぐらいだわ。父親からも母親からも見捨てられて、あんなになってまで惨めったらしく生きてたんだもの。早く亡くなった方があの子の為よ。」
「最近は殴っても蹴っても反応悪いし。ハァ、昔は泣いて謝ってくるから楽しかったのにねぇ。今じゃ何の反応もしないから、気味が悪いったら。」
「本当にね。悪魔にでも憑かれてたんじゃない。あの子見ると不幸になりそうだもの。フフッ。」
「まぁでも、居なくなってくれて良かったわ。誰が死体とか片付けてくれたのかしら。」
「さぁ?でも最近見たら、もぬけの殻だったわよ。」
「誰か適当に片付けてくれたのかしらね。」
「私達使用人は皆嫌ってたんだし、誰がやっても不思議じゃないでしょ。ありがたいわ〜。」
「フフッ。今頃獣のお腹の中だったりして。」
「ありえる、フフッ。あ〜ぁ、可哀想に。」
「フフッ、いい気味よね。私達は色々我慢してるっていうのに、領主様達は言いたい放題、機嫌が悪くなればすぐ暴力は振るうし物も飛ぶ。」
「自分達は贅沢三昧。オマケに領主様の気分で、時間や場所を選ばずお相手しなきゃいけないし強引だし。これぐらいあの子に痛い目に遭わせたっていいでしょ。」
「一応あれでもあの人達の子供なんだしね。それらの親の責任を、子供であるあの子が取るのは当たり前の話しよね。」
「まぁアイツマジで口臭いし、自分勝手に強引にしてきて気持ち悪いけど、口止め料の金払いだけは良いのよね。」
「でもあれなら、もう少しお金上げるべきでしょ。気持ち悪いったらありゃしないわ。あんな端金じゃ、大きな宝石が付いたアクセサリーなんて夢のまた夢よ。」
「確かに。有名デザイナーがデザインした服もあんなんじゃ買えないし、そこそこの値段のアクセサリーやお菓子ぐらいかしらね。」
「あのドレスも肥え太った奥様が着るぐらいなら、私が着た方が絶対似合うと思うんだけど。」
「プッ。ダメでしょ、本当の事言っちゃ。」
「でもまぁ、奥様が呼ぶ男の人って皆イケメンだし、あの中の一人ぐらいとなら私もご相伴にあずかりたいものだわ。」
「確かに。自分達ばっかりずるいわよねぇ。」
「この前あの肌の白い可愛い子と私、目が合ったのよ。そしたらニコって笑ってくれてね〜。もうちょっと頑張れば付き合えちゃうかもしれないわ。」
「え。ずるーい、私もあの子狙ってたのに。」
「いやいやその子も良いけど、付き合うならあの背が高くてガタイがいい人が良くない?あの小麦色の肌に筋肉。顔もイケメンだし最高だと思うんだけど。」
「いやいや、あのクールな子も捨てがたいわよ。あの冷たい目。最初は冷たい態度取られるのに仲良くなるときっと優しいんだわ。あぁ、素敵……。」
メイドさん方は、頬に手を当ててうっとりとため息を着く。
彼女達はまるで純粋な少女の様な顔で、きゃあきゃあ騒ぎながら休憩部屋を出ていった。
ついについに!!
実際の虐待の犯人が見つかりました〜!!
しかもハウスメイドの皆様方から、虐待の言質も取れました〜!!
ドンドンパフパフ〜!!
いやぁそれにしても、堂々とした虐待宣言やら領主様との関係やら、よくそんな話した後に純粋な少女の顔で恋バナ出来るなぁ。
しかももうすぐ付き合えそうって言ってたけど、本当なのかな。
何か話した訳でもないし、特別仲良い訳じゃないんでしょ?
ニコって笑いかけられただけって、それただの営業スマイルだと思うんだけど。
でもまぁ本当にそうだったとして、本当に恋してるなら可哀想かもなぁ。
これからあの人達、この家から追い出すつもりだし。
ほぼほぼ叶う見込み0じゃん。
捕まるかは分からないけど、公爵家から追い出したっていう事実だけで風評被害とかもたぶん凄くなるよね。
お金もあんまり稼げなくなるかもだし、もしかしたら会う事すら出来なくなるかもしれない。
うぅん……、まぁでも、小さい子供1人に寄って集って虐待してる訳だからねぇ。
こちとら実際死にかけてるし。
レティシアちゃんを幸せにし隊、第1号会長としてはやっぱ、許す事は出来ないかな。
何なら強火オタの私的には八つ裂きにしたいレベルだし。
うん、やっぱ絶許。
お前ら覚えとけ。
レティシアちゃんはお前らのせいで地獄を見たんだ。
甘〜い幸せな恋が出来ると思うなよ。
震えて待っとけ。