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私のペットは皆何故か凶暴です(仮名)  作者: じゃがいも
まずは味方を作りましょう
20/43

手紙
















ウン、イケルイケル。










リスクも結構高いけど、行けなくは無いしリターンもデカイ!







ってか、リスクとかもはやそんな事言ってられない気がする!










何かもうこれ時間との戦いな気がするわ…………。















こうなってしまうとどうしても気が急いでしまうけど、一旦落ち着かないと。








挙動不審でバレてしまったら目も当てられない。









目を閉じて、小さく1つ深呼吸する。














大丈夫、大丈夫。








きっと上手くいく。









私ならやれる。









私なら上手くいく。










どうにかなる。








大丈夫。








レティシアちゃんの為にもどうにかする。










大丈夫。








絶対どうにかなる。









よし。






もう大丈夫だ。







目をゆっくり開けて、深呼吸をまた1つ。







うん、大丈夫。













潜入してゆっくり馴染みながら、今後どうしていくのか決める予定だったけど、そんな悠長な事言ってられないかもしれない。









せめてまずは、状況の確認の為に執務室に早く盗み見に行かないと。




















もう既に、手遅れ状態だとしても不思議じゃない。





















チャンスはそれからすぐに訪れた。










いつも通りの態度で、いつも通りの業務をこなす。






業務内容も落ち着いて、メイド達がサボりだした頃。

辺り一帯はシーンと静かになって人っ子一人、人影も見えない。











今日は本当は別の部屋の掃除だけど、近くには執務室。





絶好のチャンスだ。






何食わぬ顔で執務室に入り、まずは帳簿の確認。






税麦等の徴収量、ここ何十年分のやつは〜。




あ〜、散らかり過ぎててどこにあるか分かんないな。




とりあえず隠しやすそうな場所。





よく聞く場所としては、例えば本棚の中とか〜。













お〜い。



そんなんでいいのか。




もう見付かってしまった。



















本棚だと思った棚は、実は本なんか1冊も置いちゃいなかった。












本棚に入っていたのは、本に見せ掛けて中がくり抜いてあるだけのただの箱。







中には、乱雑に紐で綴じられている今年分の帳簿の束が入っていた。





















本には心躍る素敵な、めくるめく世界が自由に広がっている。





王道の素敵な王子様との恋から、幼なじみとの甘酸っぱい恋愛や、執事との禁断の恋。


勇者や魔王、魔法やドラゴンとかが出てくるわくわくドキドキな王道冒険譚。


異世界中を旅して書いた、見た事も聞いた事も無い不思議な植物や食べ物が出てくるファンタジー小説。














そんな心躍る素敵な世界が、ここには1つも無いのか…………!!




こっちの世界でも、それぐらいの小説ならあるんじゃないかと思ってたのに!!




ましてやしかも、ただの経済書や専門書も何も無いようだ。





旦那様は本を読まないのか?



いやでも貴族なんだし、一応あれでも領主だ。



そんなんでやっていけるのか?







いや、でも噂通りならありえるぞ。



小説とかは好みがあるからまだしも、噂話の通りなら、貴族なら読むべき本や読んどいた方が有利に進めるような状況でも、あのボンクラぶりなら、難しい本は読みたくないとかそんな事を言いかねない。



ちょっとぐらい何か無いかな〜とか、後々暇が出来たらゆっくり色々と読めないかな〜とか、色々考えていた私としては由々しき事態だ。



この部屋1冊も本無いのか。


悲しすぎる。




色々落ち着いたら日当たりのいい部屋とか暖炉の前とかで、小説片手に昼寝しておやつ食べてと、悠々自適な暮らしをしようと思ってたのに……。










私の計画がちょっと遠のいた……。










何ならこの屋敷中探しても、無いのかもしれない。





つらい…………。






















うぅん、悲しいが本はまた後で。



当初の予定通り、何なら予定より早く帳簿が見つかったのだ。

喜ばしい事じゃないか。




めくるめく世界はまた今度、お預けだ。

お楽しみは取っておこう。



とても悲しいけど。













気を取り直して帳簿の先月分の所から見ていく。







うーん?


これ……は、多いのか少ないのか…………?







基準が分からないから何とも言えないかな。







これは領主が代替わりする前まで、遡って見ていくしかないか〜。







見逃してる部分が無いように、でもそこそこ急ぎながら中をチェックしていく。














去年のは別の箱に入ってるのかな。

















本棚を漁ると、数十年分のは全て本棚の箱に入っているようだ。




勿論本棚全てが箱という訳ではなく、中がくり抜かれてない、つまりただの重石ぐらいにしか使えそうにない物も沢山入っていた。








ただまぁちょっと、数時間ちょっとでは見られる量ではない。



気長に読んでいくしか無さそうだ。





日が傾きかけてきた頃、サボれる時間もそろそろ無くなって来た。

気付かれたら元も子もないし、結局やっぱり全部読めなかったけどしょうがない。




また今度だ。





ガックリした気持ちで部屋から出ようとすると、服に引っかかってローテーブルの上に乱雑に置かれていた高い高い紙のタワーが崩れ、少し雪崩落ちてしまった。










あっぶな〜。

全部落ちるところだった〜。









手や体でギリギリガード出来たので、派手な音もそんなにしなかったはず。

多分気づかれてはいない。














も〜、何でこんなに置いてあるの〜?









ちょっとは整理してよ〜。

私も綺麗好きって訳じゃないけど、こんなに散らかってたら使いにくくないのかね?









体でガードしてる傾いてしまったタワーを、慎重に元に戻す。




こんな所にこんなに沢山置かなくても。


いや確かに、散らかり過ぎてて他に置く場所も無いんだけどもさ。










ため息を付きながら、雪崩落ちた紙の束を1つづつ拾って元に戻していく。








ん?





リベルマン家から?




私が見つけたのはリベルマンと書いてある手紙だった。





よくよく紙の束から探してみると、結構紙質の良い紙にミミズが這ったような綺麗な筆記体で、裏にリベルマンと記されている手紙の束が見つかる。






それから手紙にしては本当に豪華な紙質の、無地の何も書かれていない手紙が結構な量であった。







うーん……?





これ……は、リベルマン家と裏に書いてあるって事は送り主がリベルマン家。



旦那様が出す予定の物……、にしては結構な量が。


しかもだいぶ前に出された様な、日が当たっていたのかだいぶ色褪せてしまった様な物まである。






これは、親戚からの手紙では…………?





うーん、まぁ人の手紙を盗み見るというのは良くないんだけど、まぁ今更と言えば今更。


執務室に不法侵入してる上、部屋を荒らして領主の許可無く帳簿まで内緒で見てる。




まぁ別に、元々良い子って訳では無いし。


しかも封は既に開いてるから見たってバレないし。





うん、これからの事に役立ちそうな何か重要な事書いてあるかもだし…………。




ええいままよ!




ちょっとドキドキしながら、中に入ってる手紙を見る。






中身はびっちりと旦那様に向けて、母親からの、祖母からの愛がめっちゃ詰まった内容の手紙だった。







具合が悪いのかといった心配や、孫に会わせて欲しいとか、本当に孫は生きてるのかといった事や、久しぶりに顔を見せに家に帰って来ないかという誘い。


拗ねているならいい加減にしなさいとか、最近の領土の事情に対してのお叱りの言葉だったり、領民の為にも金銭の援助を受け領民に還元してやって欲しいという願いであったり。


何故王家からの手紙までちゃんとした返事を書かないのかとか、何故会いに行った際に毎回会ってくれないのかとか、何か事情があるならちゃんと聞くから何故返事1つ寄越さないのかとか。







何かもう、祖母が可哀想なぐらいの内容だった。




他の手紙も全部似たり寄ったりで、祖父からの手紙や叔父からの手紙、リベルマン家本家からの手紙はかなりの数。


手紙にしては豪華な紙質の手紙も王家からで、こちらの内容も娘にいい加減会うよう言ってくれっていう事だったりやっぱり似たり寄ったり。







うぅん……、これは…………。



手紙の内容から見るに、何を書いても誰が書いても返事1つ送らず王家からの手紙も返しはするけど暖簾に腕押し状態。

悲しくなるぐらいの一方通行。




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