外の世界
扉を少し開けると、夢から覚めるなんて事は起こらなかった。
代わりに暖かい日差しが降り注ぐ。
小屋から出て周りを見渡すと、少し離れた所に貴族が住むような大きな屋敷が見える。
その屋敷から隠されるように、背の高い草花や木々が立ち並ぶ中にひっそりと、この小さな小屋は建てられていた。
え、何これ魔女の家?
テンション上がる〜。
わーいとか現実逃避しつつも、とは言えこの体調不良では楽しい気分に素直に浸りきる事も出来ない。
これってお腹が空き過ぎてるからでは。
この明らかに痩せこけた体は体調不良でよく回らない頭でも、確実に体に良くない事だけは分かる。
何か食べねば。
碌に食べてないように見えるこの体は、親がいないのだろうか。
それとも虐待の類いだろうか。
出来れば誰かに頼りたい所だが、頼った所で悪人だった場合一発アウトである。
大きな屋敷に行くべきか、どうするべきか。
あの屋敷に住んでる人が良い人だった場合は良いが、悪い人だった場合この状況だと不利にしかならない。
かと言って、自給自足と言うのも難しい。
重い体を引き摺って小屋の周りをぐるっと1周してみても、何か良さげな食べ物は無い。
せめて木の実とかあればなぁと思いつつ、半眼で大きな屋敷に目を向ける。
道のりはさして遠くはない。
ちょっと歩けば常人であれば多分すぐ。
しかしこの体ではなかなかの苦行だ。
しかも悪人だった場合を考えると、忍び込むのが1番良いのではないか。
良い人だったら謝ればいいし、ついでに食べ物もくれるだろう。
けれど悪人だったらどうにもならない。
髪はきっとボサボサで、少し体がベタつくがとんでもない異臭が鼻につく訳では無い。
服も薄汚れた飾り気の無い白いワンピースではあるが、裸足である以外は特別動きにくい訳では無い。
これはイケるのでは?
そう決心した私は多少の危険は承知の上、なるべく見つからないよう屋敷に忍び込むことにする。
この痩せこけた体ではなかなかの苦行だったが、何とか屋敷の前に来る。
どうやらあの小屋は屋敷の裏手にあったようで、豪華で大きな屋敷には少々不釣り合いな、飾り気の無い質素な扉を押す。
立て付けの悪い小屋とは違って音もなく扉は開き、簡単に私は屋敷に忍び込む事が出来た。