「領主様って酷い人」
そんな憂鬱な気分の私は、ランドリーハウスの庭で洗濯の道具や洗剤を他のメイドさんに渡したり、メイド達が使ってる比較的小さな物を洗ったりしていた。
その中メイドさん4に話しかけられる。
「あなた最近入った噂の子?」
「え?あ〜、たぶん?」
「それで何やってここにやってきたの?」
「休憩時間の時に貰える、自分の分のビスケットを2回程粉砕しまして…………。」
「プッ、え?それで?そんな事でここに来たの?」
「あ、ハイ……。」
「やだ何それ、面白……。まぁでもそんなんじゃ、明日からはまた元の担当に戻れるんじゃない?」
「あ〜、そうなんですかね。」
「それでそれで?どこの派閥でやらかしてきたの?」
「え?あ〜、どっちも………………?」
「え?!どっちも?!何それ、面白過ぎでしょ!!うわー何それ見たかった〜!!いい気味過ぎる!!」
「なになに、何の話し?」
「この子どっちの派閥でも休憩時間のビスケット粉砕してここに来たらしいわよ!!」
「やだ何それ、面白過ぎる!!いい気味だわ!!」
「あんたやるわねぇっ!ふふっ!本当いい気味っ!しかも粉砕って!!何したのよ!!」
「え?えーっと、1回目は転んで叩き割って2回目は転んで蹴った後に踏んでしまいまして…………。」
「た、叩き割っ…………、ッフ。」
「蹴った…………!ッフフ!」
「踏んだ………………ッ!!ブフッ!!」
「いや、別にわざとやった訳では……。」
「え〜、何?それでわざとじゃないの?益々面白いでしょ。本当にいい気味。」
「えっと、何かビスケット壊すと良い事でも起こるんですか?」
「いやいや、そんな訳じゃないけど。あいつらには普段色々言われてるからスッキリするわね。」
「ビスケットを壊すだけでですか?」
「そりゃあ、これから仲良くなりましょうね〜っていう時に出してあげたお菓子をたたっ、ッフフ!叩き割ったり、蹴ったり踏めば、そのお誘いとかを無下にしたって事じゃない。」
「しかも下手すれば、わざとやってるんじゃないかって思う可能性もあるでしょ。」
「まぁどっちにしろ、ちょっとはイラッと来てるでしょ。」
「しかも、イラッとさせられた相手はわざとじゃなくて無意識にって。」
「皆さんの分じゃなくて、自分の分だけなんですけどね…………。」
休憩時間に貰った自分の分のビスケットを落としただけでお仕置きって、普通に可笑しいし何それ。
何ならハウスメイドの方々は、別に自分達が作った訳でも無いし、何か被害を被った訳でも無いでしょうに。
キッチンメイドとのティータイムでは、掃除とか良いからとにかく早く出てってくれって感じだったし。
ハウスメイドとのティータイムではバカにしたように大勢に笑われた後、後片付けちゃんとしときなさいよって言われたからちゃんとしてから部屋から出たし。
メイドさん方がこれで誰かに怒られるって訳でも無いでしょうし。
でもそれ以外これといった理由も分からないし、半信半疑って感じだったんだけど、本当にそんな事でイラッとしてお仕置きしちゃうのか〜。
給料が減らされるとか何か被害を被った訳じゃないのに。
このお仕置き決めた人、何かよく分かんない思考してるなぁ。
「たとえ自分の分だけだとしてもよ。っていうか、全員分やってたら完全にこっちに回されてたわね。」
「ざーんねん、お仲間が増えるかもと思ったのに〜。」
「はぁ。」
「あっちでは凄い、散々な目に遭って来てるでしょ〜?こっちに来てもいいのよ〜?」
「はぁ。」
「…………ッチ」
「察しが悪いわねこの子。」
「確かに。頭弱いんじゃない?」
「プッ、何それ止めなさいよ。可哀想でしょ〜?」
「いやでも、そんなんで来るんだから元々よっぽど頭が弱いんじゃないの?」
「やだ〜、何それ止めなさいよ〜。」
「でも確かに。そんな子に来られちゃこっちも堪んないわね。」
「そうよそうよ、ッフフ!別に居ても居なくても今日入って来たばっかで変わんないだし、こんな子要らないって!フフッ!」
「そういえばそれで思い出したんだけど、領主様の娘ってどうなったの?あのボサボサ頭の汚い子。まだ生きてるの?」
「さぁ?小屋に行ってからは見てないわね。でも、生きてても生きてなくても変わんないでしょ。領主様達は興味も欠けらも無いようだし。」
「確かに。フフッ。」
「何なら赤ん坊の頃に煩いって子供部屋から追い出そうとしたの、奥様らしいじゃない?結局小屋に追い出したのは3歳頃かららしいけど。旦那様も何も言わないしさ。」
「子供部屋があるのは奥様が普段過ごす階とは違う階なのにね。そんなに煩かったのかしら。」
「そういえば最近、メイド内でもあの子の話は出てこないわね。ちゃんとご飯あげてないんじゃないの?」
「最初は殴ったり蹴ったりしたら泣いていて面白かったらしいけど、途中からは謝りもせず泣きもせずで、最近は表情が抜け落ちたかのようにぼーっとしてたらしいわよ。気味が悪い」
「やだ何それ、気持ち悪い。悪魔憑きなんじゃない?」
「まぁ、あんな見ただけで鬱陶しい子、居なくなって清々するわ。」
「見たら気分が悪いし、何か嫌な事でも起こりそうだものね。フフッ!」
「服とか汚かったしね〜。」
「あ〜!あれが無くなったとか清々する!」
「よくやったよね〜!」
「あいつの服隠してしばらく服着せなかったり、びしょびしょに濡らしたまま返したりね。」
「ちゃんと洗ってるんだし、生乾きのまま返してた時もあるんだし、感謝して欲しいぐらいだわー。」
「っブ。本当それ。」
「でも本当に死んでたりしてね!フフフッ!まぁ、その分のご飯も本当勿体なかったし。丁度良いわよ。これで少しはあの子の分も食べられるんじゃない?」
「誰が死体とか片付けたのかしらね?」
「さぁ?でも適当に山にでも放り投げたんじゃない?今頃魔物のお腹の中でしょ。」
「フフフッ、ありえる。まぁでも最後の最後まで手間かけさせて、本当に嫌になる子ね。」
「本当本当。まぁ、あのー、何だっけ?名前?忘れちゃったけど、あの子よりかはこの子はマシなんじゃない?」
「フフッ、名前覚えてないの?まぁ私も、名前も顔もほとんど覚えてないけど。確かにあの子よりかはマシかもね。」
「でも鬱陶しいし、役立たずなのは変わりゃしないわよ。」
「フフッ、確かに。」
「小さ過ぎて殆ど何も出来ずに役立たずもいいとこだし、ちまちまちまちま走ってて邪魔だし遅いしね。」
「お母さんの所に返してあげた方がいいんじゃない?そしたらママーって泣いて喜ぶわよ!」
「やだっ、止めなさいよっ!フフフッ!こんな所にこの歳で働きに来てるんだから、捨てられたのよ。そんな事言ったら可哀想でしょ?」
「フフッ、止めなって。もしかしたら最近流行った流行病とかで家族全員亡くなっちゃっただけかもしれないじゃない?」
「確かに。他と比べれば低賃金だけど、ここで働いている以上私達は安定的にお金も貰えるし、ご飯も食べられるじゃない?でも最近、領民達は税麦凄いらしいわよ?」
「あぁ、きっと薬とか買えなかったのよ。可哀想にねぇ。」
「あぁ確かに、最近また締め付けキツくなったんですって?領主様も酷い事するわよねぇ、可哀想に。」
ニコニコ顔のメイドさん達は、さも面白い話でもするかのように楽しそうに話をして、最終的には領主様ってやっぱり酷い人っていう終着地点に落ち着いた。
いつの間にかメイドさん達は、クスクスと笑いながら自分達の話に夢中になってどっかに行ってしまった。
いやいや、お前らも大概だけどな?
しかも何だったんだあいつら。
別に入りたいとは一言も言ってないんだが。
土足でズカズカと入り込んできたと思ったら、よくもまぁあんな酷い顔して本人の目の前で人の話しが出来たもんだわ。
嘲笑ってる暇があるなら鏡を見ろと言いたい。
お前らの顔、とんでもなく醜悪な顔してたぞ。
大体うちの親そんな事しないし、こっちに家族なんて居ないから、捨てられも病気にもなりようがないんだよ。
ばーか。




