貴族は面倒
おいおい、5歳児に何やらせてるんだ。
まだまだ遊び盛りのうら若き幼女だぞ。
なんて内心独りごちながら石窯まで走ってパンを取りに行くと近くに木で出来た、古ぼけた小さな踏み台があったので使わせていただく。
でも踏み台を使っても、私にはまだ背伸びしないと石窯は使えない。
使い古されたミトンで蓋を取ると、中から勢い良く熱気がブワッと出てくる。
中は凄い熱気でもうもうとしていて、左奥の方で火が明々と燃えている。
熱風が顔に当たってめっちゃ熱い。
大きくて重くて柄が長い、お好み焼きに使うコテみたいなやつで、苦労して石竈からパンを取り出す。
パンは良い色で焼き上がっていて、ふわりと焼きたてパンのいい匂いが辺りに立ち込めるので、思わずゴクリと喉が鳴った。
持ってきたカゴに、上からザザっとパンを滑り落とし入れて上から布をかぶせ、石窯の蓋を閉める。
きつね色のパンが入ったパン籠を持って、転ばないよう注意して走ってテーブルに置いて、またスープを混ぜに行く。
グルグル混ぜていると、徐々にもったりしてきて、重くて上手く動かせなくなる。
苦労して混ぜていると次は後ろから
スープは代わるから、フルーツ切って!と指示が出されたので大急ぎで手を洗って、桃やアプリコットっぽいやつを洗って、半月切りにして食べやすい大きさに切っていく。
皿に寝かせて円を作るように並べたら、さくらんぼもあったので洗ってついでにショートケーキみたいに上に乗せていく。
こんな所だろうか。
出されていた皿が2つあったので、2人分作ってテーブルに乗せる。
私が乗せたのを皮切りに、続々とメインやサラダ等々が乗った皿がテーブルに置かれていく。
料理人もキッチンの外で待機してたメイドも手が空いてる者が一緒になって大慌てで、装飾品でピカピカ光るたくさんのワゴンに料理を乗せメイドさん達が重そうに運んで行く。
あれ何人分なんだろう。
確実に2人分じゃないと思う。
料理人達は心底ほっとした様な顔で、自分たちの分を作って皿に乗せていく。
「お前も今のうちに食ってきな。今日はいつもとペースが違うし見習いはやる事が多いんだから、モタモタしてると食い損ねるよ。」
「あ、はい。ありがとうございます。」
疲れてぼーっとしてたからか、声をかけられる。
まるで戦場のようだった。
凄かった。
そんなにここの貴族は怖いのか。
嵐のような忙しさで疲れてる中、慌ただしく私達は朝食を終えて料理人さん達は一時休憩。
休憩を終えたら、料理人さん達は昼食の仕込みと後片付けに入るのだろう。
私はさっきのメイドさんに呼び出されると、今度は廊下の掃き掃除を申し付けられる。
このお城みたいに大きい大豪邸は、4階建てHの字型になっていて蓋の開いた箱みたいになってるのが居住区。
下の向かい合わせになってる縦の棒が客間。
居住区の近くには厩舎とテーブルセットがある中庭と温室がある。
ちなみに私が侵入した飾り気の無い質素な裏口は、裏手にあるのではなく左縦棒の真ん中辺りの入口らしい。
客間の方はお客さんを泊める部屋だったり、お客さんを相手にする応接室や談話室、大きなダンスホールがあるとか。
ただの応接室や談話室も、お客を相手にする用と自分達が使う用がそれぞれあって、自分達のは居住区。
客が使う用は、その貴族の位によって通す部屋が違うらしい。
だったら、豪華な部屋で全員済ませれば良いのではと思うがそれがそうもいかないらしく、難儀な物だ。




