潜入開始!!
夜ちょっと緊張のドキドキと、少しワクワクしながら眠りについた私は朝早くに起きた。
今日はメイドさんの格好で潜入だ。
もしかしたら、他のメイドさんとかから情報が収集出来るかもしれない。
最近はとにかくずっと、食べて太る事を念頭にしてきたので大きな一歩だ。
毎日濡らした布で身なりを整えたり水浴びしてきたので、匂いもそれほど悪くは無いだろう。
お屋敷で見つけた紐で髪紐を作り、邪魔にならないよう2つ縛りにして来たし、髪も切って整えた。
髪色と目の色も変えて変装もしたし、顔も洗ってメイド服に着替えて準備は万端!!
やっと次のステップだ!
出て行くにせよ、この屋敷を乗っ取るにせよどういう方向に向かうにしても、レティシアちゃんを幸せにする為にも情報は大事!!
急がずゆっくり、じっくりと、だ!
まずは初日、ここを乗り切らねば始まらない。
私は見張りのいない裏口からいつもの様にするりと入って、何食わぬ顔で館を散策する。
いつもは金切り声を上げて暴れる声の代わりに、今日は諸事に耽る日らしく遠くから女の人の声が聞こえてくる。
お盛んですね〜。
子供には絶対聞かせられないやつだわ〜。
ついつい現実逃避しながら歩いていると、そこの貴方!とすごい剣幕でメイドさんがこちらにやってくる。
ついに来たか!
今日からお世話になる事になっています!
レティです!
遠い田舎から奉公に来ました!
とか言えばいいかな?
それとも前の奉公先に捨てられたのに、拾って下さって感謝してますとどっちにしようかな。
そう考えてる間に後ろからツカツカとめっちゃ怖い顔して睨みながら歩いてきて、グイッと強引に手を引かれる。
「あなた何ここでうろうろしてるの!暇なら朝食作るの手伝って頂戴!!」
グイグイと引っ張る手は何かに気付く様子も無く、これだから最近の子はとか早く準備しないと怒鳴られるだとか、何やらブツブツと言っている。
うっそ、私まだ一言も喋ってないぞ。
こんなんで潜入出来ちゃっていいのか。
チョロ過ぎないかこの家。
しばらくメイドさんの文句を聞き流しているとキッチンに着く。
「早くしないと間に合わないから、あなたこのスープ焦げ付かせないように混ぜてて!」
メイドさんに強引におたまを握らされたので、とりあえず言われるがままスープをかき混ぜる。
良いんだろうか、私まだ5歳なんだが。
メイド見習い的な感じじゃないのか。
そもそも私、料理人じゃないんだが。
広い厨房でてんやわんやしてる料理人達は、猫の手も借りたいようで私には全く気付かないしなんなら怒声が飛び交ってる。
今日は料理人見習い2人が風邪でお休みらしく、ついでに料理長がご貴族様に呼ばれてご機嫌伺いをしているらしい。
何だろう。
もう既に準備してるみたいなのに。
貴族あるあるのワガママかな。
今日は○○じゃなくて、△△が食べたい!みたいな。
大変だな〜なんて他人事のようにグルグルとスープをかき混ぜていると
「何やってんだいお前は!!ちょっとそれもういいから、あっちの石竈からパン持って来て!!早くしな!!」
何処かからか怒鳴られて、スープをかき混ぜる手を一旦止めて指で指された方角に走って行く。
5歳児になんて剣幕だ。
私じゃなければ泣いてるぞ。




