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メスガキラー  作者: わっか
レオリィ編

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第75話 同調

 「そう言えばらむね、あんたって強かったのね」


 「えっ? どうしたの急に?」


 海水浴場を後にし、皆で海岸沿いの道路に並列する歩道を進む最中さなか、私は彼女にそんな言葉を投げかけた。


 さまざまな憑依体と敵キラードールとの戦闘を経て、個々の力量を当時よりかは理解できていたからだ。


 「クマ子やギャル子は私達の中じゃ強力な憑依体だから、そんなクマ子に勝ったあんたは凄かったんだなぁと思って」


 「……らむねは強いぞ」


 「やっ、止めてよぉ二人とも……。そもそも熊見くまみさんはあの時、特殊能力を使ってなかった訳だし」


 「……それを差し引いても、お前は私より多少威力が低い代わりに手数てかずを持ち合わせた憑依体だったからな」


 「クマ子の通常攻撃を連打できるって、相当よね……」


 「なぜ急にそんなお話を?」


 ハム子の問い掛けに私は答える。


 「最近の戦闘で、敵との相性について考えさせられたわ。クマ子が個体差を把握すれば戦闘を有利に出来ると言うのも分かる。

 一対一の場合、時には引かなきゃならない相手も居るってね。

 自分の憑依体の特性をもっと理解しておく必要があるわ」


 「……それで言えば、お前は特別なのかもしれないな」


 「えっ?」


 「それ、あーしも思ってた!」


 ギャル子まで同意してきたが、私は何の事を話しているのか分からなかった。


 「何? 何なのよ?」


 「……弥兎みう、お前は憑依体の腕を動かす時どうしている?」


 「どうって……、意識を送っているだけだけど?

 自分の腕と同じよ。そうしようと思った時点で出来ているでしょ」


 「……」


 クマ子は私の目を見据えて言った。


 「……お前はどうして意識するだけで動かせるんだ?」


 「えっ……? そんなこと言われても、あんたは出来ないの?」


 クマ子とギャル子は首を横に振る。


 だが、そもそも二人の憑依体の腕は、自身のひじや二の腕辺りまでめるような構造だ。

 外していた場合、単体で動かすのは難しいだろう。


 「らむねは? らむねは出来ないの?」


 彼女の憑依体は胴と腕が繋がっている構造だった。


 「ん~……試したことはないけど、無理なんじゃないかな?

 私は中から自分の腕を動かすことで憑依体の腕も動かせていたけど、頭で念じただけで勝手に動いたみたいなことは無かったよ」


 「ウサちゃん、腕を通すこと自体は出来るの?」


 「出来るんじゃない? 初めて憑依した時から、そうしようとは絶対に思わなかったけど」


 「何で?」


 「ロリポップが舐められないからっ!」


 「……」


 「あはは……」


 誰しもが納得する理由を述べたにも関わらず、乾いた笑いをされた。


 「腕を通さずに動かせるのは私だけってこと……? いや、待って!」


 自分以外にもこれに該当する人物を私は知っている。


 「ハム子! あんただって出来るじゃない!」


 「えっ!? 自分そんなこと出来ませんが?」


 「何言ってんの? あんただって腕を通さずに動かしていたでしょ?」


 「自分はハム蔵さんにお任せっスよ?」


 「えっ……?」


 そこで新たな疑問が浮かぶ。


 「どうかされました?」


 「あんた……今までの動きはハム蔵がやっていたって言うの?」


 「はい、そうですが? ああ、この間の自分の腕を通した時は別っスよ」


 私は三人へ問い掛けた。


 「憑依中にドールが動くなんてことある?」


 らむねとクマ子とギャル子は否定する。


 だが、思い返してみれば、ハム子は動作に移る前は必ずハム蔵に声を掛けていた。


 「……キラー・スタッフト・トイが勝手な行動を取ったことはあるか?」


 「いえ、それはないっスね。ハム蔵さんは自分がこうしてほしいと思ったことを実行してくれるだけっス。

 ウサさんとやり合った時も、自分が“逃げたい”と思ったらハム蔵さんが逃がしてくれました」


 「……契約者の意に反した行動は取らないということだな」


 「どういうことかしら、クマ子」


 「……他の憑依体に該当しないこの件は、憑依体が持つ固有能力という可能性を除き、お前達にだけ起きている特例なのかもしれない」


 「特例?」


 「……ああ、仮説に過ぎないが、もしも契約者とドールに相性のようなものが有るとしたら、互いの波長が合い同調が起きた時、想定外の力を発揮出来るのかもしれない。

 ……つまりこの件は偶発的なものだ」


 「それが私とハム子に起きている事だっていうの?」


 「……可能性の話だがな。

 ……中でもお前の意識だけで動かせるというのは、それだけ高い同調率を誇っているのかもしれない」


 私は後方から付いて来ている“ロリポップ”へ目をやる。


 初めて会ったあの時、コイツは私を待ち伏せるように立ち尽くしていた。


 (“ロリポップ”……。アンタは誰でも良かったの? それとも私を選んだの?)


 「……個体差で言えば、もう一つ気になっていることがある」


 私の思考をさえぎるように、クマ子は言葉を発した。


 「何よ?」


 「あっ、あの……。話の腰を折って悪いけど、この辺りじゃないかな?」


 らむねの声で周囲の状況に気付くと、前方には緑が生い茂る木々が姿を見せた――。




 弥兎みう達は歩き続けた先で、海岸沿いの森へと辿り着く。


 まばらな木漏れ日の奥には海水浴場から確認できた巨大な岩々が顔を覗かせ、このまま進めばちょうどその裏側に出られそうな気がした。


 「話は後で、取り敢えず降りられる所を探してみましょう」


 「そうっスね」


 林道は車が通れるくらいの幅があるため、人の出入りがあるのは確かであった。


 奥へ進む度に海辺の街のにぎやかさは遠のき、代わりに鳥の声と風の音が耳を打つ。


 しばらく行くと、先が下り坂になっている脇道を発見した。


 入り口には高さが腰まである柵が設けられていたが、車の通行を阻むだけで人が通り抜けるのは容易であった。


 「ほら、やっぱりあるじゃない! 行くわよ」


 「勝手に入って怒られないっスか?」


 「立ち入り禁止じゃないしぃ、平気っしょ!」


 三人がくだっていく中、花子はなこは柵の前で立ち止まり周囲を観察する。


 「……ん?」


 花子はなこが柵の脇にある木々の間へ目をやると、支柱が角材で出来た看板が根元から折れていた。

 看板の表面おもてめんは地面に伏せられているため、文面を確認することは出来ない。


 「熊見くまみさん、どうかした?」


 「……いや」


 らむねに促されると、花子はなこは皆の後を追っていった。




 獣道を抜けると小さな丘へ出る。


 「うわぁ~!」


 一同は情景の美しさに声を上げた。


 丘から延びる砂利が敷き詰められた坂道をくだると砂浜が広がり、周囲は岩壁で覆われていた。

 その正面中央には大穴が空いており、そこから海水が浜の方へ侵食している。


 「これは入江ってやつ?」


 「綺麗っスねえ」


 「んん~っ! 最っ高~っ!」


 テンションの上がった夏樹なつきに続き、四人は荷物を置いて浜へと駆け出した。


 花子はなこは一人、丘の上から全体を見渡す。


 砂利道をくだってすぐの脇には重しを付けて固定してあるビーチベッドが二台置かれ、近くには施錠された物置が設置されていた。


 (……私達以外の足跡はない)


 ビーチベッドの元まで来ると、花子はなこは表面を指でなぞる。


 (……砂が積もっている。しばらく使われていないな)


 「取り敢えずお昼にしようよ!」


 一頻ひとしきりはしゃぎきった夏樹なつきの呼びかけを受け、一同は昼食を取ることにするのであった――。




 ビーチベッドの表面を綺麗にしたのち、私達は全員そこへ腰かけ腹を満たす。


 私は自分の企みがバレないように保冷バッグの管理を名乗り出て、希望者には飲み物を手渡し、バッグの内部が見えないように努めた。


 その後、ギャル子が持ってきたビーチボールはクマ子の携帯空気入れのおかげで容易たやすく膨らませることができ、私達はビーチバレーを楽しんだ。


 クマ子は誘っても断り、終始ビーチベッドで横になりながらスマートフォンをいじる。


 貸し切り状態の入り江で気持ちの良い汗を流すと、疲れたらむねはクマ子の隣のビーチベッドへ向かった。


 全員が休憩のタイミングに入ったところで、私はハム子へのドッキリを実行に移すため保冷バッグの元へ移動する。


 「これ飲んじゃおう!」


 わざとらしい声を上げながら、私は自分の限定ドリンクを手に取った。


 キャップを開け炭酸が漏れる音を聞きつけると、ハム子も飲み物を取りにこちらへ近づいてくる。


 「えっ……」


 声を漏らすハム子を無視して、私は腰に手を当てながらわざわざペットボトルのラベルが彼女に見えるようにして大袈裟に飲む。


 「うん! 美味い!」


 「ひゃああぁぁ~っ!」 


 ハム子は私の方を見ながら、悲鳴のような声を上げる。

 予想以上のリアクションだ。


 「ぷっ! 冗談よ、ハム子。これは私の。あんたのは、ちゃんとあるわ」


 彼女の反応に満足した私は、保冷バッグに限定ドリンクを戻しながら早々にネタばらしをする。

 だが、ハム子は瞳孔が開いた状態で口をあんぐり開き、ビクつくポーズのまま固まっていた。


 「ハム子? ……はっ!」


 そこで彼女の視線は私ではなく、私の後方へ向けられていることに気付く。


 私がハム子の視線の先へ振り返ろうとした時――。

 背後からは砂利道をくだる音と共に、女の声が入江へ響いた。


 「驚きましたわ! まさか……わたくしと同じ力を有するかたが、これほどいらっしゃるなんてっ!」


 「っ!?」


 全員がその人物へ注目すると、彼女は砂利道の中ほどで立ち止まり、自分の胸へ手を当てながら名乗りだす。


 「自己紹介させてくださいまし――、わたくしは獅子上ししがみ 董華とうか

 以後、お見知り置きを」


 その傍らに居るキラー・スタッフト・トイをの当たりにして、私は声を漏らした――。


 「ライオンの……契約者……!」

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