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メスガキラー  作者: わっか
第一部 序章編
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第2話 遭遇

 しかし、危険がないと分かれば途端に優越感にひたれた。この世界でこんなヤツと接触出来た人間がいるだろうか。やはり世界は私を中心に回っているのかもしれない。


「アンタどこから来たの? 名前は?」


 いくつか質問してみる。

 ソレは質問するたび、左右へ首をかしげるだけで何も答えない。

 こちらの意図が理解できない犬がこんな反応をする。言葉が通じないのだろうか。


「名前が分からないんじゃ、私がつけてあげる」


 喋れないだけかもしれないが、とりあえず“分からない”ということにした。


「アンタの名前は“ロリポップ”」


 そう告げると慣れた手つきで、ウエストポーチから出したロリポップを私は口へ頬張る。

 ソイツにロリポップと似た箇所があった訳ではない。

 危険じゃないと分かった時から、とうに口内のロリポップを切らしている事を思い出し、早く次を舐めたいと頭の中はそのことでいっぱいだったのだ。

 とにかくどっと疲れた。早く帰ろう。私が歩き出すと“ロリポップ”もその後をついてきた。


 路地を抜けると予想通り駅前へ出られた。

ひらけた通りの先には広場があり、その奥に駅の入り口が見える。この時間は人の往来おうらいも激しい。

 駅へとあゆみを進めているとある事にはっと気づく、今日は動くぬいぐるみと一緒ではないか。

 後ろを振り返り周囲の人の反応をうかがうが、誰もコイツの事を不思議がってはいない。

 行きかう人がコイツに触れたかと思うと、接触した部分は半透明になりそのまま通過する。他の人にはれられず、見えもしない。

 私は手前へ曲がった“ロリポップ”の片耳を触ろうとする。


「あれ?」


 思わず間抜けな声がれた。

 私がれようとしても周囲の人と同様、接触したと思えば“ロリポップ”は透けてしまいさわれない。

 何とかれようと試みて、自分の腕をぷらぷらとさせる。周囲の人に今の私は、さぞ間抜けに見えていることだろう。


「さっきはさわれたのに……」


 そう疑問に思ったが、今はタイミングが悪いのだろうという事にした。

 いや、納得などしていないが今日はこれ以上深く考えたくなかった。

 今より訳の分からない事など起きるはずがないのだから。

 だが、その予想はまたたく間に打ち砕かれた。


 再び歩みを進めようとした先に奇怪なソレがいた。

 頭に被った麻袋あさぶくろには雑な顔がえがかれている。下半身や腕もまた大きな麻袋あさぶくろおおわれ、腕の先は釘のようなものが飛び出していた。

上半身からはかろうじて人肌が見えることから、中身は人間であるのだろうが、その血色けっしょくの悪さからとても生きているとは思えない。

 一枚の麻袋あさぶくろを両足でいているため歩きづらそうによたよたと、だが確実にソレはこちらへと近づいて来ていた。


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