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メスガキラー  作者: わっか
第二部 ベアリィ編
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第25話 事件

「あんたさっき、“契約者”って言ってたでしょ。どういう意味?」


 クマ子はスマートフォンをいじりながら言う。


「……私が勝手にそう呼称しているだけだ。ついでに言うと正体不明なコイツらの事は“キラードール”と呼んでいる」


 “キラードール”。確かにイメージとしてはぴったりだと思った。


「……お前、ドールと初めて接触した時……どうした?」


 私はサムズアップにした手を横向きにして、隣に突っ立っている“ロリポップ”をしながら答えた。


「どうって、コイツが手を差し伸べてきたから、思わずその手を取ったのよ。そしたら今のような状況に……」


「……私も似たようなものだ。私達ははからずも、あの時コイツらと何かしらの契約を交わしてしまったんだ。

だから、キラードールと契約した者を私は“契約者”と呼んでいる」


 たしかに、いつまでも私のような奴を“同じ境遇の者”と言った呼び方では面倒だ。


「あんたも着ぐるみみたいな姿になれるんでしょ? 私は取り憑かれているような見た目から、“憑依体”って呼んでいるけど」


「……憑依体か、私は“ドール化”と言っていたが、それでも構わない」


 その後私とクマ子は、話が迅速に進むように“アサブクロ”や“ゾーン”など、呼び方を統一していった。


 一旦いったん互いに飲み物を口にして、落ち着く。


 その隙に、クマ子はまたスマートフォンをいじり出した。


「さっきから何見てるの?」


「……んっ」


 クマ子は私の方に画面をさらした。


 そこに表示されていたのは、いわゆるSNSというものだろう。

 個々がアカウントを持ち、インターネット上で他の誰かとやり取りをする。


「ちょっと見てもいい?」


 クマ子は少し渋った様子だったが、画面を自分にも見えるように横向きにして、了承してくれた。


 私は適当に、誰かの投稿内容を見てみる。


 そこには誕生日を知らせる投稿があった。

 その内容に対しコメント欄では各々(おのおの)が投稿者を祝っていた。


 私はこれを見て鼻で笑った。


「こんな事して何が楽しいの?」


「……お前はやっていそうだがな」


「冗談止めて。少なくとも、私が誰かの誕生日を祝うことなんて絶対ないわね」


 自分の誕生日ならまだしも、他人の誕生日なんて祝ってどうする。私には到底理解できない行動だった。


「あんたがそんなの好きなんて、意外ね」


「……私は、今起きている出来事を知りたいだけだ。……情報は武器だ。

当然その信憑性しんぴょうせいは個人で判断していかなければならないが、ニュースで報道されないような事象は、ここを見るのが手っ取り早い」


「ふーん、それで何か調べてたの?」


 するとクマ子は、自分の方へ画面を戻し端末を操作し出した。


「……私は、ある学校のグループチャットを閲覧できる状態にある。“東征とうせい学園”、聞いたことは?」


「ない」


 私が端的に答えると、クマ子は話を続けた。


「……そこでは最近ある事件が話題になっている。東征とうせい学園の生徒が何者かに暴行を受けたというものだ。

……既に三件起きているこの事件の被害者はいずれも女子生徒で、一人でいるところを狙われている」


「おっかないとは思うけど、その地域に住んでいる変質者でしょ。犯人の顔は見られているだろうし、すぐに捕まるんじゃない?」


「……そうだな。被害者は全身にあざが出来る程殴られ、骨折している者までいる。皆、現在は病院送りだそうだ。

……だが、それほどやり合ったのなら相手の顔も当然見ているだろうが、誰一人犯人を知らないんだ」


「えっ……」


 私はそれを聞いて困惑した。そんなことがあり得るだろうか。


「眠らされたりしたんじゃ?」


「……フィクションの世界ならまだしも、実際すぐに人を眠らせるのは簡単ではない。

……ましてやその後、大怪我させる程殴っているんだ。街中でそんな事していれば目立つだろう。

……何よりこの事件で最も不可思議な点は、被害者が皆襲われた事を覚えていないんだ。

……気が付いたら、全身を負傷していたと口々に言っていたそうだ」


「もし事故ではなく、本当に犯人が居たとしたら、そんな事が可能なの?」


 私はクマ子に尋ねた。


「……私が知っている方法なら、可能だ」


 クマ子は私の目を見据えて言った。


「……契約者以外の者は、ゾーン内での記憶が残らない」


 私はそれを聞いて、わずかに心臓が跳ねた。


「それって犯人は契約者だってこと? アサブクロという可能性は?」


「……私の知る限りアレらが一般人を襲っているところは見たことがない。

……もし襲うのだとしたら、生きて返すとは思えない」


 それには同感できた。私が遭遇してきたアサブクロからは、明確な殺意を感じた。

 初めて奴に襲われた時、最悪な結末を覚悟した程だ。


 思考を巡らす私を見て、クマ子はさらに話を続けた。


「……少しは興味が出て来たようだな。だが、これを聞けばもっと興味が湧くだろう」


 私はクマ子の口から、次の言葉を待った。


「……この事件、最初の被害者の名は……中倏なかじょう 柑奈かんなだ」


「えっ……」


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