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メスガキラー  作者: わっか
ドックリィ編
26/112

第20話 妹

 私は再び街へ戻っていた。


 ひなたから聞いたゾーンの事、戦闘時に感じた減少と増幅、それらをより正確に理解しておく必要があるだろう。


 一番気に掛かったのは、ゾーンの再発動のための時間だ。

 今までは引き込まれる一方だったが、こちらが発動すれば相手に奇襲をかけられる。

 化け物に攻撃の手を許さず戦闘を終えられれば、危険も減るだろう。


 だが、本当にゾーンの再発動に4時間も要するなら、その後は後手に回らざるを得ない。

 ゆえに、その事実確認は必要だろう。


「“ロリポップ”」


 私の声を合図に、“ロリポップ”は七階ほどの高さのビルの壁を登っていく。


 私が頭の中でアサブクロを探すように念じただけで、“ロリポップ”はそれを理解し即行動に移した。

 実際は最初の声掛けすらいらないのだろうが、つい口に出してしまうのだ。


 当然ゾーンの発動は無駄にはできない。それを行使するなら必然的に戦闘という事になる。


 ビルの上で辺りを見回す“ロリポップ”の成果を待ちながら、私はロリポップを舐めて待っていた。



 今晩もヘルシーメニューのせいで、カロリー不足になる事を気に掛けていた時だった。


「あんた、東林とうばやし 弥兎みうでしょ」


 振り返ると見知らぬ少女が居た。見るからに私より年下といった感じだ。

 ラビットスタイルでシュリンプテールの髪型をし、低身長でとがった釣り目は生意気なガキといった印象だ。

 そいつは歯を食いしばって、私を睨みつけていた。


「誰?」


 私は咥えたロリポップを動かしながら、興味なさげに訊き返した。


「あたしは……、あんたに暴行を受けた中倏なかじょう 柑奈かんなの妹。中倏なかじょう 佳奈かなよ!」


(あぁー、そういえば末娘……つまりは妹が居ると聞いたな)


 私は少女の正体を知っても、特に驚いたりはしない。

 とにかく中倏なかじょうとは関わりたくなく、何より今となってはどうでもいい存在だからだ。


 中倏なかじょう妹は、一度歯ぎしりしてから言葉を続けた。


「あんたの所為せいで、あれからお姉ちゃんすごく気落ちしちゃって……、お姉ちゃんをしたっていた連中は離れていった。

それから、お姉ちゃんはクラスで孤立するようになっちゃったのよ!」


 あの取り巻きがしたっていたとは、とても思えなかった。

 中倏なかじょうがそうなっている最中さなか、支えになろうとしないのがいい証拠だ。


「あいつは私にいじめをしていたのよ」


「嘘をつけ! お姉ちゃんはそんな事をしない! そもそも、お姉ちゃんを不快にさせたお前が悪い!」


(……)


 支離滅裂しりめつれつ中倏なかじょうが私にした事を知っている口ぶりではないか。


「私は処分を下され、こうしてばつを受けてる」


「そんなんで納得するもんか! だいたいあんた停学中でしょ! 外をほっつき歩いて、反省なんてしている訳がない!」


「自宅待機は学校と同じ授業時間中だけ、今は外出しても問題ないのよ」


 本当は朝から出歩いていたが、中倏なかじょう妹に正直に話す道理はない。

 そもそも今日は休日だ。


「はぁ。それで、何の用?」


 私はめんどくさそうに訊いた。

 ダルそうに首を回しながら、屋上に居る“ロリポップ”に一瞬だけ目をやる。こちらに気づいているのを確認すると首を回し終え、再び中倏なかじょう妹へ視線を戻した。


「分かってんでしょ! これは復讐よ。

お姉ちゃんが受けた苦しみをあんたにも味わわせてやる!」


「ふーん、私より華奢(きゃしゃ)なあんたが、どうしようっての?」


 私は喧嘩には自信があった。ましてや私より小柄な中倏なかじょう妹に負ける気はしなかったのだ。


「ふん! 見てなさい、思い知らせてやる!」


 私の挑発に中倏なかじょう妹がひるむことはなかった。


 だが、中倏なかじょう妹の思惑おもわくむなしく、私は彼女のたくらみに気づいていた。


 なぜなら、そのかたわらに直立した犬のぬいぐるみが居たからだ。


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