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メスガキラー  作者: わっか
シープリィ編
23/112

第17話 制約

 寝転がると、屋上のフェンスは視界から消え、目に映るのは青空だけだった。


 まばらにある雲は、日差しを心地良く調整し、時よりほおを撫でるそよ風は、私達を歓迎してくれているように感じた。


 ひなたは、空に目をやりながら続けた。


「私はね、この辺りで一番空に近い所を“まくら”に探してもらってたんだぁ」


 自殺をほのめかしているのかと一瞬焦ったが、どうやら本当に空が見たかったらしい。


「こうしていると、何だか飛んでいるみたいでしょ。自由なんだぁと安心するよぉ」


「こんなの、見上げればいつでも見えるでしょ」


 私は冷めた返答をした。

 最初こそ感動したが、視界いっぱいに広がる空は、自分が沈んでいくような、はたまた空がこちらへ落ちてくるように感じて、何だか不安になってきたのだ。


 ひなたは空へ手をかざした。


「そうだねぇ、いつでも見れるから――良いよねぇ」


 ひなたは感傷にひたっていると、思い出したように言った。


「あっ、帰りは弥兎みうちゃんお願いねぇ~。どうしてもじかに見てほしくて、あのふわぁ~んって変わるの、閉じちゃったからぁ」


 ゾーンの事を言っているのだろう。


「そんなの、あんたがまた出せばいいじゃない」


「でも、今やっちゃったし。ほら、連続で使う事は出来ないでしょ?」


「そうなの?」


「うん。前に遅刻しそうだったからぁ、“まくら”にふわぁ~んってしてもらって、駅まで乗せていってもらったんだぁ。

それでも電車に間に合わなかったから、快速の止まる次の駅まで乗せてもらおうと思って、閉じちゃったアレをもう一回出してもらおうとしたらぁ、やってくれなくてね。

出来るようになったら、やってってお願いしたの。

しばらくしてから、“まくら”は突然ふわぁ~んってしてくれて、あれって私のお願い聞いてくれたのかなぁ?」


 私は、少し考えてから訊き返した。


「再発動したのって、どのくらい経ってから?」


「え~とぉ、あの授業中だったからぁ、4時間後くらい?」


(つまりゾーンを再度使用するためには、それだけ待たなければならないのか――)


 私は早急に確認しておく必要があると感じた。

 ひなたの話から、さらにゾーンに関して分かったことがある。



 “まくら”が再度ゾーンを使用したのは、ひなたが教室に居た時の事だ。

 突然の事に戸惑い急いで閉じたそうだが、周りの様子を確認した際、皆は挙動不審になったひなたを心配するだけだった。


 周りの人からすれば、ひなたは突然消え、その後また現れた事になる。

 しかし、誰もそう疑問に思わないという事は、消えたという認識が無いのかもしれない。

 私はこの点について、ひなたと話していた。


「実は、変わらず見えていたのかなぁ?」


「それはないでしょ。さっき下には、あれほどの人が居たのよ。私達が元の空間にも居たとしたら、ビルを垂直に登って行ったのを見られていた事になる。そしたら、もっと騒ぎになっているでしょ」


 おそらくだが、私達がゾーンに出入りするのを見た人は、初めから居たような、居なかったような曖昧あいまいな解釈になっているのではないか。

 それは、この事態に関わった者以外には、明るみにならないための策のようにも思えた。


 すると、突然ゾーンが展開されたため、ひなたは私へ言ってきた。


「あれっ? もう下りる?」


 戸惑っていたのは、ひなただけではなかった。


「違う、私じゃない……」


 私はそれらを目撃すると声を上げた。


「ひなた! 後ろ!」


「ふえ?」


 見ると、私達から距離をおいた後方に、2体の“麻袋”が現れたのだ。


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