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メスガキラー  作者: わっか
シープリィ編
22/112

第16話 空

 私達は、ひなたが“まくら”と呼ぶ羊のぬいぐるみの後について行った。


「さっきのアレ、何なのよ?」


「ん?」


 今度の質問の意図を、ひなたは察せなかった。

 私は自分の耳たぶをつまんで見せる。質問を理解し、ひなたは答えた。


「アレはねぇ。私を落ち着かせたり、安心させる時に、よくお母さんがやってくれたんだぁ」


「お母さん、ね……」


 ――ひなたのような奴は嫌いだ。

 ひた向きで真っすぐに、そして愛され、やりたい事がはっきりしている人を見ると、自分が悪者にされている気分になる。

 行動し、進み続ける彼女に対し、私は立ちまったままなのだ。

 その現実が、常に私の中の不安を掻き立てている。

 何より、こんな風に考えてしまう自分が嫌いだった。


「ここぉ~?」


 ひなたは“まくら”に確認を取る。どうやら目的の場所に着いたようだ。

 そこはこの辺りのオフィス街でも、ひときわ高いビルの前だった。真下から見上げても頂上が見えないほどだ。


「このビルの中?」


 ここまで来て、ひなたは目的を話してはくれなかった。


「うううん、屋上だよぉ」


 そう言うとひなたはゾーンを展開し、“まくら”の背に乗った。


「ついて来て!」


 すると、“まくら”はひなたを乗せたまま、どんどんビルを登って行った。


「……ったく」


 私は、仕方なく“ロリポップ”につかまった。

 “ロリポップ”は、顔の大きさが体とほとんど変わらないため、私はコイツの耳を掴んで、肩車のような状態となった。

 未だに正体不明なコイツらへの不信感は消えず、私はあまりさわりたくはなかった。


 やがて屋上に着いた。

 登っている最中、私は下を見ないようにしていた。人間が生存本能から、恐怖心を覚えるには十分過ぎる高さだったからだ。


芝生しばふだぁ~! お手柄だよぉ~“まくら”」


 このビルの屋上には一部に人工芝が敷かれていた。


 ひなたは芝生しばふに寝転がると、大きく伸びをした。


弥兎みうちゃんも寝てみてぇ、とっても気持ちいいよぉ」


 そう言うと、ひなたは自分の隣の芝をポンポン叩いた。

 私は仕方なく、ひなたにうながされるまま、隣に寝転んだ。


「ここで寝たかったの?」


 芝で寝るのか好きなのかと疑問に思った。

 それを聞いて、ひなたは答えた。


「うううん、これだよ。勿体ないけど、元に戻すね。前を見ててぇ」


 そう言われ、私は仰向(あおむ)けの状態で視線を正面に戻した。

 ゾーンが閉じられると、再び世界は元の色を取り戻した。


 眼前に広がるのは、青く広がる空だった。


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