第9話 いじめ
学校での私は女子には怖がられていたが、男子は気さくに話しかけて来ていた。
だがある日を境に、持ち物を無くしたかと思うとゴミ箱やトイレで見つけることが多々あった。その頃からクラスの連中の態度も素っ気無くなっていった、
私が事態を理解するのに時間は掛からなかった。クラスの連中には逆らえない奴がいた。
1年の頃に転校してきた中倏 柑奈だ。
中倏は父親の仕事を理由にこちらへ越してきたそうだが、何でも以前いた学校では中倏を筆頭としたグループが一人の子へ日常的に暴行を加えるいじめを行っていたようだ。
その子が病院送りになった後、中倏が咎められることはなかった。親がうまくやったらしい。
私はそんな奴のターゲットとなったようだ。
後から知ったことだが中倏には気になる男子がおり、その子と私が親しげに話したことが気に入らなかったようだ。
私は記憶にすら残っていない事だが、他者の言動を曲解する人間はいつだってタチが悪い。
中倏の取り巻きは私へは弱腰で、直接手を出すことはなかった。それゆえ行われるいじめは陰湿であった。
だが私は大事にしたくはなかった。
本当なら連中に掴みかかり思い知らせてやるところだが、問題を起こせば母に迷惑が掛かる。
気は進まなかったが、私は担任に現状を伝える事にした。
ひ弱そうなこの男教師は頼りなかったが、日を追って私への被害が増していたことは看過できなかった。
担任は中倏というよりその親とやり合う事を嫌い、私の話をまともに取り合ってはくれなかった。
それどころかこちらが話している最中、こいつの視線は私を値踏みするように全身にまとわりついた。
すると担任は横に立つと私の肩をさすりながら自分の方へ抱き寄せ、ささやいてきた。
「なるほど、……先生が詳しく話を聞こうか?」
感じたことのない嫌悪感で全身に鳥肌が立つ。
即座に担任の手を払いのけ、膝に蹴りを入れた。
「触んな! 死ねっ!」
私はその場を離れ、アイツに触られたところを手で払った。
それから担任は私の言うことを信じなくなった。
その日、担任が教室に入ると全員机の上に鞄を出すようにと指示してきた。それは持ち物検査だと説明するが、私がそれを訝しんだのは担任と一緒に来ていた中倏も見回っていたからだ。