第6話 契約者
(合体した?)
遠めに見ればぬいぐるみに食いつかれているような姿は、取り憑かれていると言ってもいい。
「行くっスよ!」
女が駆け出すと、“ロリポップ”が飛び掛かる。
“ロリポップ”が斬撃を食らわそうと振りかぶると、女の着ぐるみの手からヒマワリの種の形をしたナイフが両手に出現し、“ロリポップ”の攻撃を受け流した。
互いに相手へ切り掛かっては受け流し、周囲に激しい金属音が響き渡る。
女は後ろへ下がり高くジャンプした。
常人なら不可能であろうが、女は二階ほどの高さまで軽々と跳んでみせる。
浮遊している最中、両手の種型ナイフを次々と“ロリポップ”へ投げ付ける。
手から離れたと思えば新たなナイフが手元に現れ女の攻撃は止まない。
“ロリポップ”は両手の鉤爪を交差させ耐えきるので精一杯のようだ。
女がビルの縁に着地すると、私に視線を移しこちらへ向かって振りかぶる。
(……噓でしょ)
頭を下げながら横へ逃げると、その頭上を奴のナイフが通過した。
地面へ突き刺さり、コンクリートが砕かれる。あんなのが当たれば一溜りもない。
したり顔の女に恐怖よりも怒りが勝り、私は歯を食いしばる。
続けて数本、私目掛けてナイフを投げ飛ばすと“ロリポップ”がそれを防ごうとするが何本か体に命中し、倒れこんだ。
「っ!?」
駆け寄ると先程より動きが鈍り弱っているように見える。私は女に目をやり眼前の可能性に賭けてみる事にする。
「“ロリポップ”……、アンタもあいつ等みたいなこと出来んの?」
私は女から視線を外さず一歩前へ出る。
「私は、かばった相手を前にして黙ってないわ」
口に含んだキャンディ棒を投げ捨てると、新たなロリポップを口へ咥える。
「敵を取ってやるから、力を貸しな!」
アイツがして見せたように、私もコイツを纏うようなイメージを持って“ロリポップ”へ意識を送る。“ロリポップ”が私へ向け飛ぶと眩い光が身体を包んだ。
「何スか!? あんさんもスか!? ……そうはさせないっス!」
女がナイフを投げ付けるが、私はそれを弾き飛ばす。
「んなっ!?」
素っ頓狂な声を上げ、怯え始める女の前に私の姿が露になる。
“ロリポップ”の頭をかぶり、その両腕が肩から生えている。威嚇するように鉤爪で音を鳴らし、口から出したロリポップで相手を指しながら言い放った。
「私は甘くないから、……舐めないで」