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Regalia  作者: 山下愁
第7章:朽ち果てた玉座に座る傀儡の王

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【第11話】

 桃色のツインテールが特徴的な可愛らしい少女型レガリアが魔法の杖を振り上げると、ごうごうと燃え盛る炎が出現した。



 ――【推測】魔法を使用する形式の自立型魔導兵器『レガリア』であると予想します。【推奨】対魔法用兵装での応戦。


「【了解】その提案を受諾する。【要請】対魔法用兵装の優先展開、ならびに通常戦闘用兵装に魔力コーティングを」


 ――【了解】通常戦闘用兵装に魔力コーティングを施します。【報告】終了予定は2.58秒。



 頭部に搭載された人工知能が淡々とした口調で報告してくる。


 魔力コーティングとは、魔法を扱う相手と戦う際に通常戦闘用兵装に対して施す鎧のようなものだ。魔力を持つ者しか魔法を扱うことが出来ず、どうしても人間を基準として考えてしまうと才能に依存してしまうのだが、自立型魔導兵器『レガリア』なら魔法も簡単に扱える。

 魔法を主力武器として扱う自立型魔導兵器『レガリア』を相手にするなら、この魔力コーティングという鎧を施さないとすぐに兵装が破壊されてしまう。自分の保有する魔力で兵装を覆うことで、魔法によって破壊される確率を大幅に減らすことが出来るのだ。


 ユーバ・アインスは純白の盾を突き出すと、



「【展開】一方通行アクセラレーション



 少女型レガリアが放ってきた業火が、ユーバ・アインスの構える純白の盾に受け止められる。


 展開された兵装が起動し、受け止めた業火が逆再生されて少女型レガリアに襲撃した。相手を焼き尽くす為に放った魔法の炎も、ユーバ・アインスの兵装を使えば自分自身に戻ってくるとは皮肉なものだ。

 少女型レガリアからユーバ・フィーアの「【絶叫】ぎゃあああああ!?」という野太い悲鳴が響き、ユーバ・アインスの聴覚機能を刺激する。少女型レガリアの桃色のツインテールが片方だけ焼け焦げて、頭部から千切れ飛んだ。


 ワナワナと震える少女型レガリアは、ハート型の杖をユーバ・アインスに突きつけて叫ぶ。



「【憤怒】ちょっと兄者!? この娘は大事な当機せっしゃの配下ですぞ!?」


「【疑問】だからどうした」


「【疑問】だからどうした、ですとぅ!?」


「【疑問】手加減しろとでも?」



 ユーバ・アインスは「【展開】重機関砲ガトリング」と次なる兵装を展開し、少女型レガリアに銃口を突きつける。



「【回答】当機はすでに貴殿の敵だ、ユーバ・フィーア」



 ズガガガガガガガガガカガガガ!! という連続した銃声がアビサティヌ城に反響する。

 ただでさえボロボロなアビサティヌ城の壁に弾痕が残され、少女型レガリアは可憐なドレスの裾を翻しながら逃げ回る。逃げ回るだけで攻撃はしてこず、それが妙な印象を与えた。


 銀灰色の双眸を眇めたユーバ・アインスは、重機関砲で少女型レガリアを狙い撃ちしながら人工知能に問いかける。



「【疑問】あの機体が残した魔力痕跡を解析」


 ――【了解】解析します。



 1秒と置かずに人工知能は命令したことに対する報告を上げる。



 ――【報告】周辺に撒かれております。【補足】おそらく起爆剤のようなものとなり得ると推測。


「【了解】では兵装の展開を」


 ――【了解】兵装を展開します。



 重機関砲の展開を取り止め、次なる兵装を展開しようとしたところで少女型レガリアが引き裂くような笑みを浮かべた。

 勝利を確信したかのような笑みである。4号機であるユーバ・フィーアがよくやる仕草と似ているから、やはり彼女はユーバ・フィーアの為に作られた自立型魔導兵器『レガリア』と言っていい。戦う術を持たないユーバ・フィーアが唯一、他の弟妹機と同等に渡り歩けるようにと持たされた攻撃手段。


 残念ながらここで終わりである。



「【確信】これで終わりですぞ!!」



 少女型レガリアはハート型の石が据えられた杖を振り上げ、



「【展開】灼熱業火☆フェルノ=インフェルノ!!」



 次の瞬間、目の前が真っ白に染まる。



 ――【報告】膨大な熱源を感知。


「【疑問】損傷は?」


 ――【報告】兵装に施した魔力コーティングの剥離を確認。兵装そのものの修復は必要とせず、無傷の状態です。


「【了解】特殊戦闘用兵装『1-001』を展開準備」


 ――【疑問】該当兵装には展開まで10秒ほど要します。


「【肯定】構わない」


 ――【了解】特殊戦闘用兵装『1-001』を展開します。



 視覚機能の隅で『10』という数字が出現する。指示した特殊戦闘用兵装の展開が準備されているのだ。


 ユーバ・アインスはその数字が順調に減っていくことを確認してから、今まで展開していた兵装を解除した。

 ホロホロと崩れていく兵装。その崩れていく様はまるで雪のようで、見た目だけであればとても幻想的だ。真っ白に塗り潰されていた視覚機能が他の色を認識し、どこか焦げついた臭いも嗅覚機能が感知する。


 焼け焦げたアビサティヌ城のど真ん中で、少女型レガリアが唖然とした表情で立っていた。



「【疑問】何故生きているでござるか? 当機せっしゃの最大火力を叩き込んだのに!!」


「【肯定】確かに火力は高かったな」



 ユーバ・アインスはぐるりと周囲を見渡す。


 自分が『白壁天幕ドーム』を展開した箇所以外は、見事に焼け焦げている。壁も積み上げられた瓦礫の山も、ひび割れた床も、何もかもに黒い焦げ跡が残っていた。

 振り撒かれた魔力を感知したことから、こうなることはユーバ・アインスの中で推測されていた。推測されていたからこそ、自分自身を守るように魔力コーティングを施した『白壁天幕』を展開したのだ。まともに食らっていたら全身をこんがり焼かれるどころの騒ぎではない。



「【回答】だが、あの程度の火力などユーバ・ツヴァイであれば簡単に上回ることが出来る」


「【遺憾】ぐぬぬぬぬぬぬぬ……!!」



 少女型レガリアは悔しそうに歯軋りをすると、



「【回答】それなら何度でもやってやりますわ、当機せっしゃの魔力はまだ十分ですぞ!!」


「【指摘】それはユーバ・フィーア本体の魔力であれば、の話だ。【疑問】貴殿の駒である少女型レガリアの方は魔力も限界では?」



 ユーバ・フィーアは遠隔で操作するだけだから魔力の消費量はそこまで多くはないにしても、少女型レガリアの方はどうだろうか?

 魔力を大幅に削るような大きな攻撃を撃ち込んでおきながら、そう何発も可能なものなのだろうか。すでに少女型レガリアの方は動きが鈍くなっているので、下手をすれば自動回復機構を展開する魔力すら残っていないかもしれない。機能停止まで秒読みだ。


 ユーバ・アインスは悔しそうな表情を見せる少女型レガリアを見据えると、



「【警告】ユーバ・フィーア、投降するのであればその機体の完全破壊は見逃す」


「【拒否】嫌でござる。兄者には絶対に勝つ」


「【納得】そうか」



 ユーバ・フィーアの強い意思を汲み取って、ユーバ・アインスは何も言わなかった。


 視覚機能の片隅にあった数字が『0』を告げる。

 兵装の準備が終わった証拠だ。同時に人工知能が自分だけに聞こえる声で報告してくれる。



 ――【報告】特殊戦闘用兵装『1-001』の展開準備を完了しました。


「【要求】該当攻撃『灼熱業火☆フェルノ=インフェルノ』の威力を100倍に測定・反射を」


 ――【了解】計算を開始します。



 人工知能はすぐに計算完了を言い渡し、兵装が展開される。


 ごうッとユーバ・アインスの周囲が燃える。

 燃え盛る炎はユーバ・アインスを攻撃する為のものではなく、ユーバ・アインスが展開した兵装によるものだ。炎の量は徐々に増えていき、やがて荒れ果てたアビサティヌ城の玄関口を埋め尽くす勢いの炎が噴き出る。


 真っ赤な大地に立つユーバ・アインスは、



「【回答】ユーバ・フィーア、貴殿の健闘を讃えて当機の最大火力を叩き込む」


「【驚愕】え、ちょ、兄者? 兄者!?」



 わたわたと慌てる少女型レガリアをよそに、ユーバ・アインスは兵装を展開した。



「【展開】戦国無双ツァイヘンベルーグ



 ユーバ・アインスの周囲に用意された炎が一気に少女型レガリアへ襲撃し、可憐なその機体を見る影もなく真っ黒こげにしてしまった。

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