第2章
第2章
玄関のベルが鳴ったような気がして僕は我に戻った。しまった…寝ていたらしい。腕時計を見ると針は午前1時13分を指していた。こんな時間に誰だろう、少し不安だったが玄関のドアを開けた。ガチャァと少し年季のかかったドアを開けると、そこには同じ年くらいの男女が3人いた。一人は昔からの馴染みですぐに分かった。上谷 仁だ。こいつは年齢離れした肉体を持っていてさらにまあまあ賢い。うらやましいばかりだ。ピントを右へ合わせると、そこには梅田蒼の姿があった。彼女の自己紹介での関西弁は印象に残っている。次に左にピントを合わせると、やつがいた。桜だ。隣の印象に残っている人よりも深く、強烈に印象に残っているやつがいた。これは危険な香りがする。
「メンゴ池!数日止まらせてくれっ!」
「おねが~い いけぇ」
「ホンマ頼む!池!」
バンっ←猛烈なスピードで扉を閉めた音。
「知らない人は家に入れてはいけないってお父さんが…」
これであいつらも帰るだろう。
「おい池…お前自分のこと何歳だと思ってるんだよ…」
さすがにダメか。ならばこれでどうだ。
「…じゅっさいっ☆」
「・・・・・・・・・・・」
ドンッ←仁に扉をぶち破られる音。
「グファッ!」
「入るぞー池」
「邪魔するでー池」
「お邪魔しまーすー池」
「勝手に入んなッお前ら自分の家探しはどうなったんだよ!ていうか!?ホテルに泊まれよ!」
「いや~いろいろあってな」
「いや~いろいろあってん」
「いや~いろいろあってな」
『金なくした』
3人の宣戦布告並みの発言を受けて、絶句した。
しばらくして
「なんで入れてしまったんだ…」
僕は断りたかった…が三人の電撃的な勢いに負けてしまった。
「お~めっちゃ広いや~ん」
「そうですね~」
「すごいな池」
と早速我が家に駐屯する3人。もう受け入れるしかないか、と腹をくくった僕であった。
「ところで池、夜ご飯どうするんだ?」
「えっないに決まってるよ」
時間がなかったんだ。
「それだったら、私、トースト作ってきましたよ」
といったのは桜であった。そして彼女は持っていたカバンから箱を一つ取り出した。そしてその箱を開け中からトーストを取り出して…取り出したのは紫色の得体のしれない物体だった。そして彼女はもはや形すらもトーストからかけ離れていたそのものを僕に差し出し
「はいどうぞ」
と一言。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「早く食べてくださいよ」
そのものから煙が…煙が立ち上り始めた。
「そうだな池」
「はよ食えや、池」
「ちょっと二人…集合」
二人を別の部屋へ連れて行くと僕は言った。
「あの料理?からやばいオーラが見えるのは僕だけか!?」
「あたいも…見えるぞ…」
「池…あきらめて俺たちの生贄になってくれ…」
あ、
ガシッ←二人が僕の肩ををつかむ音。
バタバタバタ←僕が抵抗するもリビングへ連れていかれる音。
やばい、こぼままじゃ生贄になるのは僕だ。せめてこいつらを道ずれにしてやる!
僕は抵抗をやめたふりをした。
「ほらほら池、早く食べないと冷めるぞ」
「せやせや」
「いやでも、せっかくなんだし、二人も食べたら?」
ギクッと二人の目がこちらを向いた。
(おい、何するんだよ池)
(せやで、食べて死んだらどうすんねん)
(シナバモロトモ、フタリ、ミチズレニスル)
「そうですね、さあ二人もどうぞ」
そういって二人にも同じものを差し出された。
「池がたくさん食べるかなっと思ってたくさん作ってたんですよ」
危なかった。あれをもう2つ食べさせられるところだったなんて。
「さあ一緒に食べようじゃないか二人とも!」
よし、覚悟はできた
(しかたない、このまま玉砕するしか…)
(あたい…まだ死にたくない…けど…もうあきらめるしかないのか…)
二人も何とか覚悟ができたようだ。
(よしみんな、3、2、1の合図で食べるよ)
(3・・・2・・・1)
パク
劇物を摂取したのは僕だけであった。そして、目の前の光景がだんだんとぼやけていく、目の前が真っ暗になった。そして、まるで、水の上に浮かんでいるような、いやそんなものとは比べようのない脱力感に見舞われた。目の前に懐かしい光景が映し出される。小学校入学…あいつとけんかした日…ん!?これは走馬灯!?いやだ、いやだ、まだ死にたくない!突如、重力がかかった。落ちていく・・・
気が付くと、河原にいた。浅そうな川の向こう側には大勢の人がいた。みんな幸せそうだ。すると向こう側にいた一人がこっちに手招きしてきた。ん?これはもしや三途の川ではないのか?いや、そんなことどうでもよくなってきた。しあわせになりたい。ハッ!戻れ僕!気が付くと川に足を踏み入れていた。やばい、僕はそう直感し、川の反対側に猛ダッシュした。うしろからただならぬオーラを感じながら。
ー第2章完
あとがき特になし