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キノコ食したあの日から  作者: スバラシキロクデナシ
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第8話 地獄のわんちゃん


 まだ暗いうちに叶詩カシちゃんの部屋へ忍び込む。音を立てないように細心の注意をはらい、冒険者カードに手を伸ばし、職業の欄をかくにんする。そこには『テイマー』と書かれていた。毎日早起きして確認するのは大変だが、職業を知ってさえおけば昨日みたいな目にあうことはないだろう。私は部屋へ戻り、安心して再び眠りにつく。


 再び目を覚ますと窓から明るい日が差し込んでいた。私は叶詩カシちゃんを起こし、朝食の準備を始める。しばらくすると眠たそうに目を擦りながら叶詩カシちゃんがリビングへやってくる。


 「おはよう!叶詩カシちゃん。今日こそは討伐依頼にいくよ!」


 「おはよう。そうだね。」


 今日は久しぶりに依頼を受けることができそう。今まで休んだ分、しっかり働かないと!


 二人は朝食と簡単な身支度を済ませ、酒場へ向かった。


 「アギル山での依頼がちょうど六つあるからこれ受けようか。」


 叶詩カシちゃんの了解を受け、私は梨乃リノの元へ向かい、挨拶を交わす。


 「こんなに沢山依頼をうけるの!?気をつけてね!」


 「うん、ありがとう!行ってきます!」


 私達は手を振ってアギル山を目指す。


 「叶詩カシちゃん、目は覚めた?」


 「うん、ねぇ大香ハルカ、テイミングってどうやるの?」


 「テイミングはテイムしたいモンスターが弱っている時、又は警戒心がない状態の時にテイミングの呪文を使って、ターゲットに魔力を送ると出来るって聞いたことがあるわ。成功すると首輪みたいなのがつくんだって。テイミングされたモンスターは主人には逆らえなくなるみたいよ。」」


 「なるほど、本当に何でも知ってるんだね。」


 「昔読んだ本に書いてあっただけだよ!実はテイマーって希少な職業なんだよ。」


 いろいろと話しているうちにアギル山へと入る。


 「よし、まずはフォレストモンキー二十体から狩って行こうか!」


 四、五体のフォレストモンキーが襲いかかってくる。私は遠距離の魔法攻撃で敵を倒していく。叶詩カシちゃんは近づいてきたモンスターを剣で仕留めていく。


 「火弾丸ファイアショット!」


 最後の一体を片付ける。


 「よし、次はマウンテンゴブリンだね!」


 すると突然背後から聞き覚えのある声がする。」


 「よう、貴様ら。」


 振り返るとそこには以前エルヤ地区の先にあった神殿で倒したはずのケルベロスがいた。私は叶詩カシちゃんに寄っていつでも魔法を打てる準備をした。


 「待て待て、今の俺に戦う気は無い。以前俺を倒したのは

貴様らだよな。全く油断したぜ、まさか『再利用リユースが使えるなんてな。」


 「リユース?一体なんのこと?」


 叶詩カシちゃんが聞き返す。


 「まさか知らずに使ってたのか?使い魔の再利用だよ。一度召喚し、倒されるとそれがエネルギーとなり蓄積して行き、新たな化け物を作り出すって言うネクロマンサー特有の技だ。」


 「なるほど、そう言うことだったのか。で、なんのようだ?」


 「俺はこの世界のモノでは無いのだよ。俺は地獄の番犬だ。」


 「地獄のわんちゃん…?じゃあなんで四天王なんてやってたの?」


 「わんちゃん言うな!いや、ただ暇だったからこの世界へ遊びに来ていただけだ。魔王とやらが四天王を募集してたのでな、何だか面白そうだと思って立候補したわけだ。」


 叶詩カシちゃんは話に興味がないのか、ケルベロスの周りをウロウロしだした。


 「ならばどうしてあの神殿に篭っていたの?」


 「本来俺はこっちの世界に干渉してはいけないことになっていてな、こっそりとやってきたわけだ。だからあまり大暴れするとすぐに見つかって連れ戻されちゃうんだ。だから極力大人しくしてたってわけ。本当はこの世界の魔王よりも強いんだぜ。」


 「ならどうしてあんなにあっさりやられたの?」


 「あぁ、あの娘の技で俺は死んだ。本来ならあの程度のことで俺はやられたりしない。だがな、アヌビス様と言う冥界の神が俺を連れ戻すためにあの娘の技に宿って全力で斬りかかって来たってわけよ。そのまま冥界に引っ張られてこっ酷く叱られちゃってな。おい小娘、さっきから俺の周りでちょろちょろと何をやってるんだ?」


 叶詩カシちゃんがぶつぶつと何かを言っているが声が小さくてよく聞き取れない。


 「ならどうしてわんちゃんさんはまたこの世界へ?」


 「簡単なことだ。罰として弱体化され、この世界へ送り出されたのだよ。」


 「なるほど〜、で、要件は何だったの?弱体化されて獲物も取れないから何か恵んで欲しいの?」


 「バカにするな!弱体化されてもそれなりに戦えるわ!お前らなんて簡単に捻り潰すことだって出来るぜ、言葉には気をつけな。それに俺は食事を必要としない!」


 『テイミング。』


 突如ケルベロスの首元が光出す。


 「な、何事だ!?」


 光が消えるとケルベロスに首輪が付けられていた。


 「ある程度強くて食事を必要としない乗り物なんて最高じゃん!これからよろしくね!奴隷のわんちゃん。」


 「巫山戯るな!さっき言ったよな、言葉にk…」


 「おて。」


 するとケルベロスは叶詩カシちゃんの手に右手を乗せる。その光景はとてもシュールだった。


 「なっ!?…一体なにが!?」


 「わんちゃんは私のペットになったの。これから精一杯働いてね。」


 「やめてくれ!俺に乗るな!解放しろ!」


 「嫌だ。」


 四天王をペットにするなんて…本当に叶詩カシちゃんって…


 「大香ハルカ!いい乗り物が手に入ったね!これで貯金する必要も無くなったね!」


 「う、うん…。そうだね…。」


 私は苦笑した。


 「弱体化って言ってたけどどれくらい戦えるの?」


 「冥界の力が使えなくなっただけだ、貴様らのゴーレムと戦った時ほどの力は使える…。頼むから降りてくれ。」


 「嫌だ。なるほど、じゃぁそこのゴブリンを一掃してくれ。」


 『火炎息吹ファイヤブレス!』


 「わー、便利なわんちゃん!」


 「くそっ、背けねえ!!」


 「それじゃマウンテンスライムとマウンテンスネークもよろしくね、ちょっと眠いから寝る…。」


 「ちくしょぉぉぉおっ。」


 〈どんまい、わんちゃん…〉


 残りのクエストも片付けてイシクルの街へとケルベロスに乗り帰る。思った以上に足が早く、あっという間に着いてしまった。すると街の人達がざわめき始める。


 「お、おい!これって確か四天王のケルベロスだよな!?」


 「どうして!?神殿からでないんじゃなかったの!?」


 「ママ〜、怖いよ〜。」


 街中がパニックになってしまった。当然だろう。すると叶詩(カシ)ちゃんが突然立ち上がり大声で叫ぶ。


 「皆さん。安心してください。私のドレ…ペットです。絶対に皆さんに危害は加えません。」


 「誰が奴隷だっ!」


 「ペットなら良いんだ?」


 「良いわけなかろう!ここは地獄だっ!」


 このままでは目立って仕方が無い。今更もう遅いがとりあえずケルベロスの容姿を変えておこう。


 『返信(トランスフォーム)


 ケルベロスは可愛らしい子犬の姿になった。


 「あぁ…助けてください、アヌビス様ぁ〜…」


 「叶詩(カシ)ちゃん!これで遠くの依頼も受けられるね!」


 「え?なに言ってるの?もう貯金する必要無くなったからそんなに稼がなくても良いじゃん…。」


 「えー…。」


 久しぶりに依頼を受けたら叶詩(カシ)ちゃんは腐ってしまったようだ…

 「やれやれ、この先も苦労しそうだ…。」

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