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キノコ食したあの日から  作者: スバラシキロクデナシ
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第15話 正射必中!

 「叶詩(カシ)ちゃん、そろそろ起きよっか。」


 いつもと違うふかふかのベットで叶詩(カシ)ちゃんはまだ気持ち良さそうに寝ていた。


 「ケルベロスさん、おはよう!見張りありがとね!」


 「あぁ。相変わらず小娘、朝に弱いな。」


 「そう見たいね。今日は袴姿ね…。一体今日はどんな芸を見せてくれるのかしら?」


 しばらくすると部屋のドアが叩かれる。


 「朝食が出来上がっています。いつでも降りて来てくださいね。」


 「ありがとう!すぐ行くわ。」


 朝食まで用意してくれるんだ…。接待が良すぎて逆に警戒してしまう。私は寝ている叶詩(カシ)ちゃんを無理矢理起こして食堂へと向かう。


 「魔獣さんたちって結構食事にこだわりとかあったのね…?」


 「いつものトーストより美味しい。正直毎朝トーストばかりで飽きてた。」


 「ちょっと叶詩(カシ)ちゃん!自分で作ってないくせに酷いよ〜。」


 すると魔獣口を開く。


 「サモクレーヌ様がとても美食家だったので、料理のみを専門とする魔物が居るのですよ。」


 なるほど…。


 「あ、そうだ!四天王って後一人居るのよね?それについての情報なんか持ってないかしら?」


 「申し訳ありません…。私共も全く存じ上げません。噂では戦闘自体はあまり得意では無く、とても知力優れているお方とか…。」


 「そうか。ならば倒さずとも魔王を倒しに行っても問題はないか。」


 「あ、あの…。失礼ながらそちらの方は…?」


 「そうか。まだ話していなかったな。別に隠す必要も無いし大香(ハルカ)、簡単に説明してやってくれ。」


 「自分ですれば良いでしょ!まったく…。」


 そう言いながらも私は魔物達に叶詩(カシ)ちゃんの身に起こった事を説明する。


 「なんと…。そんなに危険なキノコが存在するのですか。」


 「まぁ、そんな話はどうでもいいとしてだ。これからどうしようか。」


 「そうね、ずっと此処にいるわけにも行かないものね。いつ魔王に見つかるかもわからないし。」


 「まさか人間も敵になるとはな。魔王か王かどちらかと言えば王を倒す方が楽だと思うのだが…」


 「だとしても王様を倒した後がどうなるか分かったもんじゃないし…。」


 「ならば魔王を倒すとして、後一人の四天王を倒すべきか否か。一応倒すべきではあるとは思うが居場所どころかどんな奴かすらもわからないとなると…。」


 「きっと魔王を倒そうとすれば自ら姿を現すと思うわ。もしそれによって戦況が悪くなれば空間移動で逃げてまた新しい案を立て直せばいいわ。」


 「そうだな。とりあえず今日はもう少し魔王城の近くにいつでも空間移動できるようにこのあたりを探索しよう。」


 「じゃ、さっさと行きますか!」


 私達はサモクレーヌのお城を出て、魔王城の方へと足を進める。やはりここら辺は敵の数が多くて手強そう。


 「敵に気づかれたら厄介そうだな。下手に大きな魔法を使うとすぐに気付かれるだろう。ここは私に任せておけ。」


 叶詩(カシ)ちゃんはどこからか自分の身長よりも長い弓を取り出す。


 「今日は弓使いなのね!」


 叶詩(カシ)ちゃんはとても綺麗な姿勢で弓を打ち起こした。


 「あれ?矢がないけどいいの?」


 私の質問は聞こえているはずなのに何も言わず、弓を引き分ける。すると魔力が凝縮され、矢の様な形を作り上げる。すると何も無いところで右手(めて)を離し、勢いよく矢が放たれる。


 「ちょっと何処に放ってるのよ!」


 すると放たれた矢が一瞬姿を消し、現れたかと思ったら魔物の頭を貫いていた。


 「射込中に話しかけるな。矢は結構高いんだよ。あと番える時間もかかるから魔力で作る方がいろいろと効率がいいと思ったんだ。」


 「な、なるほど…。」


 「それにこんなことも出来るしな。」


 そう言って叶詩(カシ)ちゃんはまた弓を引き分ける。すると先程よりも太くて丈夫そうな矢が作られる。


 そしてパッと右手を離すと矢が何本にも分裂して、沢山の魔物を倒してみせた。


 「すごい!私にも弓貸して!」


 「素人には無理だ。こう見えてめちゃくちゃ難しいぞ。」


 「引っ張って離すだけでしょ!そんな大袈裟な!一本矢作って!」


 「仕方ないなぁ…」


 私は叶詩(カシ)ちゃんから一本の矢を受け取る。


 「よし。この矢を弦に引っ掛けて…」


 「番える場所が悪い!もっと上だ。」


 「そしたら弦を引っ張って…。ぐぬぬ!おもい!」


 「ただ引っ張るだけじゃ無い、左右均等に割ってくる感じだ。」


 「そして離す!…っ。いっ痛い!」


 大香(ハルカ)の放った矢はまっすぐ飛ばず、地面を滑っていく。


 「弦が腕にあたった!痛いよ〜!耳も顔も痛いよ〜!」


 「ちゃんと左手(ゆんで)で弓を巻く様にして弓返りさせないと。」


 「もういい!怖いから返す!」


 「だから言っただろ。難しいんだよ。」


 叶詩(カシ)ちゃんは弓を使ってどんどん魔物を片付けていく。いつの間に魔王城が見えて来た。


 「これが魔王城ね…。サモクレーヌのお城とそっくりね。」


 「あぁ、色が違うだけの様だな。とりあえず今日はここまでで引き換えそう。今日の私では到底勝ち目がない。」


 「十分強そうなのに!?」


 「あぁ、特に技とかが無いからな。威力も毎回大体同じだし。魔物は当たりどころによっては一撃で倒せたが魔王ともなれば大したダメージを与えられないだろう。」


 「そうなんだ?」


 「とりあえず今日は魔王城のすぐ近くに移動できる様になっただけで大収穫だ。魔王との交戦は明日にしよう。」


 「え!?もう明日!?」


 「まぁ、私の職業によっては延期もあり得るが。ただ、私に起きてる毎日の変化がこれからも続くとは限らないし、明日も生きているかすらわからない状態だからな。出来るだけ早く挑みたいと思うんだ。」


 「…そっか。でもまた前みたいに一人で行かないでね…?」


 「あぁ、約束する。明日はよろしく頼むよ。」


 「うん!頑張ろうね!」


 ◇


 「おぉ、無事に戻ったか。」


 「ただいまケルベロスさん!魔王城見て来たよ!」


 「そうか。」


 (娘達の死期が思ったよりも近づいて来ているな。何かしてやりたかったがやはり、見届けることしかできそうに無いか。)


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