第13話 悪党のお金は私のモノ!
「おはよう叶詩ちゃん…って何でお部屋こんなに散らかってるの!?」
「おそよう大香。それは言えないなぁ。」
部屋には沢山の宝石やら武器やらが置かれていた。
「…ちょっと冒険者カード見せなさい。」
「それはできないなぁ。」
叶詩ちゃんはカードを見せる事を頑なに嫌がる。
「昨日、私にした事忘れたわけじゃないわよね…?」
「そ、それを言われるとなぁ…。」
そういうと叶詩は渋々冒険者カードを差し出す。私は職業の欄を確認する。そこには〈盗賊〉と書かれていた。
「もう一度聞くわ。ここにある物、どうしたの?」
「盗んできましたっ!てへっ♡」
私は一発ゲンコツを喰らわせる。
「今すぐ返してきなさい!」
「い、いや…これは職業柄仕方がなくてですね…。」
大香はゴミを見るような目で叶詩を見る。
「はい…。すみませんでした…。」
そういって叶詩ちゃんは空間移動を使って、盗んできたものを元のところへ返却して行く。
「あ、あの…大香…。この綺麗な水晶球だけ残しておいちゃ駄目ですかね…?」
「駄目に決まってるでしょう!早く返してきなさい!」
すると突然水晶球が輝き出し、私達は目を瞑る。目を開けるとそこには先程いた場所とは間違いなく違う所に居た。どうやら空間移動したらしい。
「叶詩ちゃん!ここはどこなの!?」
「分からない…空間移動を使ったのは私じゃないわ!?」
私達は牢屋の中に入っている様だった。すると鉄格子の外から声が聞こえてくる。
「ようやく見つけたぞ。貴様が我ら魔王軍四天王の二人を屠った物だな。」
「や、やばいよ大香!どうやらもう特定されてるみたいよ!?」
「あ、貴方はどちら様ですか?」
「俺は魔王軍四天王の一人、サモクレーヌだ。」
さ、サモクレーヌ!?魔王軍幹部の中で最も強いと言われている化け物じゃない!
「か、叶詩ちゃん!これはピンチよ!」
「何故私たちのことを特定する事ができたんだ?」
「今朝貴様がケルベロスがいた神殿から持ち出した水晶球のお陰だ。あれはな、この世界には五つしかない代物でな。魔王様と我ら四天王が各一つずつ持っている。これで遠くにいたとしても会話が出来るのだよ。」
「ちょっと!やっぱり叶詩ちゃんのせいじゃない!悪いことをするからこんな事になるのよ!」
「あはは…ごめんねっ♡」
「おい、貴様、置かれている状況がわかっているのか!」
「あ、ごめんごめん。それで?空間移動であんたが私達をここまで連れてきたってわけ?」
「正確にはこの水晶球がな。この球は一度だけ物体を空間移動させる事ができるのだ。一度使うと消滅してしまうのだがな。まぁ兎に角、貴様の容姿が目撃情報と一致していたので確信して連れてきたというわけだ。ここで確実に死んでもらう。」
流石に今の私じゃ勝てる気がしないな…。ここは一旦引かせてもらうか。
「あ、因みに、ここは何処です?」
「そんなこと聞いて何になる?まぁいい。此処はクレマスディールだ。」
「何ですって!?魔王城のすぐ近くじゃない!」
大香が驚いて声を上げた。
「いかにも。ただ貴様らは魔王様を見ることもなく此処で朽ち果てるのだがな。」
「なるほど、情報提供ありがとうございました。それでは失礼しますね。」
叶詩は大香と手を繋ぐと空間移動で家に移動した。
「なっ!?奴ら、今何をしたんだ!?まさか自在に空間移動を使えるというのか!?。」
「いやー、びっくりしたね、まさかいきなり四天王さんに呼び出されるなんてね。」
「そ、そうね…。でも逃げてこなくても叶詩ちゃんなら戦えたんじゃないの?」
「あ、無理無理!今日の私は忍び込む事が得意なだけで、戦闘力はそんなに高くないからね。それにしてもこれでいつでもクレマスディールまで行ける様になったのは大きな収穫だったね!」
「そうだね、あんな遠くまで歩いて行くのは骨が折れるからね。魔物も強力だし。」
「うんうん、もし勝てそうな気がしたらまた行ってくるね!」
「私も連れてってね!出来ることは限られてるけど…」
「うん!その時はよろしくね!」
「でも本当に焦ったわよね…。魔王軍も空間移動が自在に使えるのかと思ったよ…。」
「そうだね、もしそうだったら今日私達死んでたかもね!」
叶詩ちゃんが笑いながら物騒なことを言ってくる。
「さてと、せっかく盗賊なんだし、仕事してくるか。」
「こら!もう盗みは駄目だってば!」
「分かってるよ!でも、悪いことして稼いでる奴らを懲らしめるのなら話は別でしょ?」
「義賊ってわけね…。ま、まぁ、それなら仕方ないわね。気をつけて行ってきてね。」
すると叶詩ちゃんは窓から飛び出て何処かへと駆けて行った。私はお晩御飯の買い物でも行ってこようかな。
さて、そろそろ晩御飯を作り始めようかしら。
「叶詩ちゃん全然帰ってこないけど大丈夫かしら…。また悪事を働いてないといいけどなぁ…。」
「人聞きの悪いこと言わないでよ!」
私は驚いて振り向く。そこには叶詩ちゃんが立っていた。
「え!いつのまに!?」
「たった今よ。」
「あららごめんなさい、ご飯できたからたべよっか!」
「今日は働きすぎて疲れたよ…。いろいろ調べてたけどこの街にクズが沢山居たわ。だから手当たり次第金品奪って悪事をバラして衛兵に突き出してやったわ!」
「その奪った金品は何処へ…?」
「あ、そこは内緒ね!」
やれやれ…。
食事を終えた叶詩ちゃんはさっさと入浴を済ませ、すぐに部屋へ行き眠りについた。私は叶詩を起こさない様に部屋に侵入し、収納棚を開ける。そこには悪党から奪ってきたであろうモノが雑に詰められていた。
(こんな簡単に…。隠すつもりないのかな?まぁ、叶詩ちゃんも頑張って働いてたわけだし、少しだけ残しておいてあげようか…。)
私は少しだけ金品を棚に残して、残りを酒場へ寄付しに行った。