第12話 理性無くしたあんたは獣よ!
寝ていると急に首に違和感を感じた。なんだろう、なんだかチューチューと音が聞こえる。私は気になって目を開けるとそこには叶詩ちゃんがいた。
「な、なになに!?」
「あ…えっと…これはその…。おはようございます…。」
「おはよう。で?何してたわけ?お口真っ赤だよ。」
「えっと…お腹が空いてしまって…。つい…。」
事情を聞くとどうやら空腹で目が覚め、冷蔵庫をあさったが何故か食べる気が起きず、冒険者カードを見るとそこには吸血鬼と書かれており、血を欲してるのだと気付き私の部屋に侵入したところ、我慢できずにこの行為に及んたとのこと。
「なるほどね…。」
〈拘束〉
私はスキルで叶詩ちゃんを拘束する。
「は、大香さん…?これは一体…?」
さらに何やら首輪を取り付ける。
「これでよしっと。」
「大香さん…お腹が空きました。」
「一日くらい我慢しなさいな。」
「あ、あれ!?空間移動できない…」
「無駄よ。この首輪を付けている間、一番最初に使おうとした魔法を使えなくする事ができるの。」
「人でなし!お腹をすかした私を見殺しにするつもり!?」
「今の叶詩ちゃんは理性の効かないモンスターよ!そこで大人しくしてなさい!」
そのまま扉を閉めて大香は何処かへ行ってしまった。
「うぅっ…おなか空いたよ〜…。誰か〜…。ひどいよ!わざわざ拘束することもないじゃないか!拘束が解けたら思う存分血を吸ってやる〜ぅ!」
しばらくもがいて居るとケルベロスがやってきた。
「うるさいぞ小娘。いったい何をやっているんだ。」
「地獄のわんちゃん!ちょうどいいところに来た!この拘束を説いてくれ!」
「断る。」
あっさりと断られた。
「ご主人様の言う事だぞ!?何で聞かないんだ!?」
「残念だったな。先程主人が書き換えられたのだよ。小娘が俺に助けを求めることはお見通しだったみたいだな!はーっはっはっはっは!ざまーみろ!これまでに俺をコキ使った罰だ!そこで大人しくしてろ!」
「くそぉっ!拘束が解けたら覚えてやがれ!じゃあ大香を呼んでこい!」
「残念だがお出かけ中だ。」
「なっ!この状態の私を置いて呑気にお出かけだと…。絶対に仕返ししてやるんだから!」
すると突然、部屋が広くなった。
「あれ?何がおきたんだろう?」
「小娘が消えた!?」
私は体を見渡す。なるほど!コウモリに変身したんだ!私は羽を広げ、地獄のわんちゃんに乗り、首元に牙を突き立てた。
「痛っ!まさか!小娘が化けたのか!?やめろ!俺の血を吸うな!俺が悪かったから許してくれ!」
そう言って家の中を走り回る。
あぁ、空腹が満たされていく…。すると突然大香が部屋に入ってきた。
「ちょっと!何暴れてるの!?」
私はびっくりして、元の姿に戻る。
「大香!さっきはよくも!」
大香の首元に噛みつこうとする。すると突然何かを取り出した。
「あ、はいこれ。亀の血。これで空腹が満たされるでしょ?」
そう言って真っ赤な液体の入った瓶を差し出してきた。
「もしかしてこれを買うためにお出かけに…?」
「そうよ!あとでちゃんとこのお部屋掃除しといてよね!」
「アイアイ!」
適当な返事をして、亀の血を飲んだ。
「美味しくない…もしかして血によって味が違うのか!?」
私は他の血の味も試したくなってアギル山へ空間移動した。そして一体のフォレストモンキーを見つけ、背後から気配を消して忍び寄り、勢いよく牙を突き立て仕留める。
「よし、いただきまーす!」
やっぱり味が違う。しかしこいつも美味しくないな…次っ!」
「ゴブリンだ!よし。」
マウンテンゴブリンを簡単に仕留め、血を吸って見る。
「おぇえっ…不味い!」
「次!マウンテンスネーク!」
そうして何種類かの魔物の血を吸ってある事に気づいた。
[大香が一番美味しい…。]
「駄目だ、どうしてももう一度味わいたいっ!」
想像するだけで体が震えてきた。私は急いで大香の元へ向かった。かと言って、どうしたら吸わせてくれるのだろう…。
「ね、ねぇ大香…。人間って四リットルの血が流れてるんだってさ。」
「へー。それがどうしたの?」
「でね、そのうちの八百ミリリットルが出血しちゃうと危険なんだって!」
「へー。それで?」
「だ、だからね…その、四百ミリリットルくらい血を分けてくれないかな〜なんてね…。」
「まだお腹空いてるの?さっきあげたのじゃ足りなかった?」
「いや…実は血によって味が違って…。大香のはとても美味しかったんだよ!思い出すだけでも震えが止まらない!」
「え?もう一回拘束されたいですって…?」
「じょ、冗談です…ごめんなさい…。」
駄目だ!説得は無駄っぽい!あぁ、大香の血が欲しい…。大香といるとどうしてもその事で頭がいっぱいになってしまう!気を紛らすために討伐依頼でも行ってこようかな…
「ちょっと、討伐依頼に出かけてくるね。」
私は空間移動で酒場へ飛んだ。
「ふぅ。よかった…私昔から血が苦手なのよね〜…血を吸われるなんてなんだか気持ち悪いじゃない!はぁ…叶詩ちゃんに朝早くから起こされたせいで眠い…。出かけてる今のうちにお昼寝しておこう…」
そう言って大香は横になり目を閉じた。
「さて、なんの依頼を受けようかな…。どの魔物の血が美味しいかな…。」
はっ!また血の事を考えてしまった。だめだ、頭から離れない!こうなったら土下座でも何でもして血を吸わせてもらおう!私はそう決心して家へ戻る。
「大香!おねg…」
大香が寝ている!これはチャンスなのでは!?
「いっただっきまーす♪」
私は迷う事なく大香の首元に顔を近づけると、突然大香のネックレスが光出す。
「な、何事!?」
気付くと私は縄でぐるぐる巻きの状態になっていた。私は慌てて空間移動をしようとするがいつの間にか首輪もつけられていたみたいで、なす術が無くなる。
「は、大香!助けて!」
私は大香を起こす。
「叶詩ちゃん…また私を襲おうとしたのね…。」
「し、してないよ!」
「嘘つきっ!このネックレスは特殊な防具でね、私を襲おうとしたものに自動でバインドとその首輪をつけるようにしておいたのよ!」
こうなっては言い逃れは出来ない…。
「ごめんなさい…。襲いました。」
「やっぱりね!そのままここで反省していなさい!」
うぅ…血が…大香ノチガホシイ…もう我慢できない…。意識がもうろうとする。すると突然私はまたコウモリの姿になりバインドから逃れた。それどころか私を拘束していた縄が大香に巻き付いたのだ。
「ちょ、ちょっと!なんなの!?」
しばらくすると変身が解け、動けない状態の大香が目に映る。
「か、叶詩ちゃん!お願いだから解いて!」
私は不敵な笑みを浮かべて大香の首に顔を近付ける。
「お願い!やめて…!叶詩ちゃん!しっかりしてよっ!」
そして私は大香の首に牙を立て、血を吸い始める。
「あっ…あぁ…。や…めて…。」
大香が弱々しい声で泣いている。それでも私は夢中で大香の血を吸い続ける。美味しい…あぁ…美味しい。
「あぁぁぁ…。」
大香が気絶したところで私は我に帰る。
「は、大香!?大丈夫!?」
大香からの返事はない。
「や、やばい!ごめんね!?本当にごめんね!」
この後目を覚ました大香から全力の正拳突きを喰らい、そのまま明日まで眠ることとなりました。