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夢と夢 ~自我に問え~  作者: 神果みかん
短編集 1話~6話 番外編
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「夢④」交差点

「夢④」交差点

「…はっ!?」


目を開けた彼女は数分間ぼーっと天井を見上げながら、少しずつ意識を戻していく。

窓から差し込む光に目を焦がしながら覚醒させていく。


「今、何時だろ…」


枕元で充電されているスマートフォンを片手で持つと、画面を光らせて時間を確認する。


【10:35】


「はぁ…寝すぎた。」


起きた時刻の遅さに驚きつつも、内心では少し優越感に浸りながら横だった身体を起こす。

優越感はもちろん(よく眠れた)という自分の睡眠欲求に対して従順でいられる事への喜びである。


「…起きよっと」


彼女はベッドから立ち上がる。

ピンクのナイトブラ・ピンクのドロワーズを身に纏っている彼女は一度、勉強用の椅子に座る。

身に纏っている下着は、彼女が大好きであるアイドルグループ【AKD48】のメンバーが愛用している寝間着を参考にしている。

彼女は無類のアイドル好きで、いつしか自分もアイドルになりたいと夢見て、日々を過ごしている。


「今日もliveかぁ…行きたかったなぁ」


椅子に座りながら、アイドルグループのSNSを確認する。

丁度、live日程表が流れてくる。

いつもなら飛びついて、血眼で日程を確認している彼女だが、今日だけは違った。


「よしっ、準備しよ」


そう言うと、彼女は立ち上がって着替え始めた。

大好きなアイドルグループの歌を口ずさみながら、リズミカルに着替えていく。


「今日…頑張らなきゃね、絶対に成功させてみせるっ!」


そう、今日は憧れのアイドルグループに入る為のオーディションがある。

そのオーディションへの高揚感と緊張感が少しずつ湧いている為、好きな曲を歌って気を紛らわしている。

私服へと着替えると、扉の向こうから声が聞こえてくる。


月雲つくも~!今日オーディションでしょ?起きなさいよ~!」


母親が声を掛けに来ていた。


「今着替えてるって~!」


「早くしなさい!遅くなるよ!」


「大丈夫だって~!」


そんな会話を交わして、彼女はいそいそと支度をしてリビングに向かう。


「も~、もっと早く起きなさいよ!」


リビングに行くと、既に朝食が作られて並べられている机があった。

サケの煮つけ・ご飯・納豆・お味噌汁

そんな、the日本人の朝食が並んでいた。

彼女は椅子に腰を掛けて、食べ始める。


「大丈夫だって、間に合う時間なんだし」


「オーディションも面接も第一印象が大切なのよ、朝早くから座って待ってたら印象も良いでしょ?」


「うーん、別にそうは思わない」


母の言葉を否定的にして返すのは日常茶飯事

現在高校生の彼女は、母に反抗することが多くなっていた。

いわゆる、思春期だ。


「なんで、こんなに沢山作ったの?朝食」


「だって、オーディションに行くならお腹なんて鳴らしたらいけないもの」


「だからって多いよ、こんなに朝は食べれないよ…」


「あんたが夜食ばっかり食べてるからでしょ?」


「それは関係ないもん!」


「はぁ…アイドルになるなら、夜食は撤廃しなきゃね」


「そんなの分かってるもん!いちいち言わないでよ!」


そんなよくある喧嘩に一区切りを入れるかのように、朝食を食べ終えた彼女は箸を置く。

どこにもやれない怒りを抱いたまま、勢いよく扉を開けて一度自分の部屋へ戻る。


「ほんっとに煩い!いちいち言われなくてもやってるって…!」


そんな愚痴を零しながら部屋に入る。

そして準備を終えている鞄を背負って、オーディション会場に向かう…


☆~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~☆


「はぁ…良い天気。絶好のオーディション日和♪」


スキップをしながら、歩行者用道路を歩く。

その光景に、周りの人間たちは彼女の方を振り向く。

電光掲示板には、好きなアイドルグループの宣伝ムービーが流れ

大都市東京を彩っている。


そんな幸せ空間の中で


スクランブル交差点の赤信号で止まる彼女は


とある、異変に気付く。


「…なんでみんな、“仮面”を被ってるの…?」


そう、後ろも前も横も

見渡す限りに見える人間は、全員‟仮面”を被っている。

更に、その仮面は不気味な笑みを浮かべている為に


「怖い…」


恐怖で、心が押しつぶされそうになる。

だが彼女はその恐怖に耐えながらも、青になった交差点を進む。

すると、


対面と後ろから来る大勢の仮面人間に身が流されていき、あっという間にもみくちゃにされてしまう。


「うっ…前に、進めない…」


そんな中


「ひぐっ!?」


腹部から来る、猛烈な痛みを受けて彼女は倒れ込む。


何者かに、腹部を殴られた。


「なんで…なんで、こんなこと…するの…」


交差点で交わっていく仮面人間達は、誰一人としてその問いに答えない。

答えないどころか、彼女の体を蹴りながら進んでいく。


「痛い…痛い!やめてよぉ!!」


どれだけ嘆いても、蹴られ続ける。

誰一人として、手を差し伸べてくれない。


そして、仮面集団が通り過ぎて横断歩道には赤信号が灯る。


「…ひぐっ…痛い…」


涙を流しながら、彼女は力を振り絞って体制を立て直す為に、座り込む。


周りを見渡すと


全ての色が消えて、灰のような色になっていた。


ビルに飾られている掲示板には


【今のお前には夢なんて叶えられない】


【これが現実だ】


【お前にそんな覚悟はあるのか?】


そんな言葉ばかりが表示されている。


「そんな…私は、本気でアイドルを目指そうと頑張ってるのに…!」


意味も分からず、只、涙を流す。


彼女は自分でもわかっていない。


そんな、言葉の一つ一つが棘のように心を突き刺している。


そして、目の先にある一つの大きな掲示板だけが、別の画面を表示する。


それは


『今夜未明某アイドルグループ所属の桜井月雲さんが、自宅の一室で遺体として発見されました。死因は首吊りでの自殺と判明しました。』


「‥‥っ!?」


そう、ニュース番組だった。


『桜井月雲さんは遺書で「アイドルがこんなに大変だとは思わなかった、着いていけなくなりました、役立たずな私は死にます。さようなら。」と、書かれていたと発表しています。』


「…‥‥」


彼女は座り込んだ。


未来への恐怖ばかりが、彼女に降りかかる。


涙の粒は一つまた一つと落ちていく。


そして彼女は


「私は…私は…あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


発狂した。


そうして、彼女の意識は遠のいていく。


少しずつ、闇に吞まれながら…。


‥‥‥‥


‥‥



「はっ…!?」


目を開けた彼女は数分間ぼーっと天井を見上げながら、少しずつ意識を戻していく。

窓から差し込む光に目を焦がしながら覚醒させていく。


「今、何時だろ…」


濡れている枕元で充電されているスマートフォンを片手で持つと、画面を光らせて時間を確認する。


【8:15】


「‥‥」


速く目が覚めたことに驚く。

だが彼女は、動こうとしない。

言葉も発しない。

未来への目標を失ったからだ。

夢で見た、あの光景が幾度となく頭を過る。


涙を浮かべながら、憧れだったアイドルグループのSNSを見ようとスマートフォンを点ける。

すると、ロック画面の背景に何やら文字が書いている。


「‥‥変えたっけ?」


彼女は涙を袖で拭って、その文字を読んだ。


【今を全力で生きろ。未来なんて決まってない、未知数の恐怖だ。だけど、今をどう生きるかで人は幾らでも変われる。】


と、書いてある。


これを読んで彼女は


ベットから勢いよく起きた。


「…それなら、今から変えていかないとね…!」


私服へと着替えた彼女は


扉を開けて、部屋を出た。


「」を変える為に・・・


☆~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~☆


大歓声の中


彼女はセンターに立って


「それでは聞いてください。チャレンジする事を諦めないで欲しい、そんな願いを込めて歌います。」


一拍


「【challenge days】」



いつかキラキラに芽吹いた花

その花弁を掴み取るまで

走り続ける

私たちはchallenge runner


明日に夢を打ち込んで

手を繋いだ先のゴールへ


深く魅入られた

その花を

薙ぐように突っ走る


どんな時でも


challenge nowadays

見つけた居場所で

私自身が花を咲かせるの


challenge future

信じてるさ

続けた先の未来へと

芽吹かせるの






歓声はホール内を包み込む。




彼女の事を支持する人が増え、彼女は着々と人気を博していった。




彼女は「」を変えた。

【人間は誰もが主人公だ】


「」の部分は、自分で入れてみて下さい。

どうでしたか・・・?感想などして頂けると嬉しいです!

誤字脱字の報告もよろしくお願いします。

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