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夢と夢 ~自我に問え~  作者: 神果みかん
短編集 1話~6話 番外編
3/18

「夢③」映画館

夢③

気が付くと俺はそこに座っていた。


広い映画館の中の椅子。


白く、色のない映画館の中に座っていた。


目の前には巨大なスクリーンがある。


そして、左右の壁には非常口と書かれた扉がある。


それだけが俺の視界に映る。


声を出そうと試みたが、一つも声が出ない。


俺自身で映画館に来た記憶も、もちろんない。


何せ、俺は ”自分の部屋”に居ることで救われるからだ。


少しづつ気味が悪くなってきたから、非常口へ行こうと試みた。


だが、椅子から立ち上がることができない。


どれだけ力を入れようとも、椅子に張り付けられているように微動だにしない。


これは、、なんだ。


監禁・拘束・誘拐のどれも当てはまっている。


自分の部屋から出ていることに気持ち悪さがあるが、警察を待つしかない。


その間、だらだらして過ごすことにした。


あー、ゲームしてぇ・・・


ランキング上げしねぇといけねぇのに・・・


くそ!こんなところで油売ってる暇はないのによ!




その時、映画館内に微かに点いていた電気が一気に落ちた。


映画でも始まるのか、と心の中でジョークを放った。


だが、そのジョークは


現実となった。


そこに居たのは、


か、、母さん、、、?


そう、そこに居たのは紛れもなく、俺の母親だった。


しかも、


見せられている映像は、母親が・・出産している光景だった。


踏ん張って、苦しみ続けて、それでも頑張っている姿がそこにはあった。


なんとも言えなかった。


その光景には、俺の心を突き刺してくるような感覚を感じさせるようだった。


俺は、学校では点数が良いほうだ。


だから、この映像を見て拒絶するような外道ではない


ただ、心当たりがあるということだ。


この映像を見て、心が痛くなる何かが。



すると、映像が別のに切り替わる


次は、赤ちゃんを抱っこしている父親の映像だった。


優しく包み込み、鼻歌を歌っている。


その光景は、誰がどう見ても幸せそのものだ。


痛みは更に増していく・・・。



そして、また映像は切り替わる。


次は、絵本を読んでくれている、お姉ちゃんの映像だった。


ベッドの上で、俺が寝るまで読んでくれている。


俺が眠りについた時、優しく頭を撫でて一緒に寝てくれていた。


そんな事があったなんて・・・


と、初めて見た光景により、心への痛みが激化する。



・・・・・



もう・・・やめてくれ・・・


俺はその後も、昔の映像が沢山映し出されていくのを見続けた。


初めて見る映像から、見たことある映像の何から何まで。


幼児期・保育園・小学生・中学生、そして高校生。


その全てが、幸せに満ち溢れていた。


一つ一つ振り返っていくごとに、心が苦しめられていく。


俺の心は、悲鳴を上げているようだった。


だが、すべてを理解するのは遅すぎた。



そして、映像は今を映していた。


毎日ゲームに没頭して、


学校も不登校になり、


部屋に籠り切りで、


家族で食卓を囲む事も無くなり、


毎日、ご飯をドアの前に置いて貰い、


なにか不都合があると、親を怒鳴る。


そんな、現在が映像に映る。



そんな今を振り返ると、堪えていた涙が決壊する。


溢れ出して、止まらない。


俺は、知らな過ぎたんだ。


家族がどれだけ俺に愛をくれていたのか。

どれだけ俺に優しさをくれていたのか。

どれだけ俺に温かさをくれていたのか。


全てを理解するのは遅すぎた。


もう、家族は俺の事なんて見捨てている。


そう考えると、



一つの映像に切り替わった。


その光景は俺を除いた家族3人の食卓だった。


何やら会話が聞こえてくる。


・・・


「今日も・・・は自室か」


「そうね、いつから引き籠るようになったのかしら」


「学校でも、引き籠りだと噂になってるよ・・」


・・・


俺の話をしているようだ。


どうせ、失望して愚痴を言っているのだろう。


・・・


「でも父さんは、・・・が、扉も心も開けて出てきてくれることを信じてるよ」


「私もよ」


「私も!唯一の弟を信じてあげなくちゃ!」


・・・


ほら、失望して・・・え?・・・


・・・


「また、家族揃ってご飯食べれるといいね」


「そうね、私も、もっと料理を頑張って、美味しすぎて部屋から出てくるような料理を作らなくちゃ」


「私も、弟と映画館とか行って遊びたい!だから、出てきて欲しいな」


・・・


その時、心が解き放たれたような気持ちになった。


悩んでる事が阿保らしくなった。


そして、


俺にはやるべきことがあるのだと心に訴えた。


それは・・・!


・・・・


・・・


・・



「はっ!?」


目を覚ますと自室のベッドに寝ていた。


意識が覚醒する。


身体・声、両方とも問題がない。


「夢・・・だったのか」


だが、夢の内容は、はっきりと覚えている。


俺には、しなければならない事がある。


そう思い、徐に布団を跳ね除け、


時計を確認した。


時刻は、午後6時前


夕飯を準備している時だ。


俺は、ゲームを起動したまま寝ていたのを思い出し、シャットダウンをしようと画面を見る。


すると、そこには開いた筈のないメモ帳が開かれていた。


そこに、何かが書いてある



「行動は心を映す」



と、書かれていた。


俺は、不意に涙が零れそうになった。


だが、涙は全てを成してからに取っておこう。


そして、“扉”を開いて階段を駆け下りた。


「母さん!」


俺はリビングに勢いよく入った。


そして、驚いてる母の前で、


「今までご、、、ご、、」


「ご?」


「ご、、ご飯、一緒に食べたい、、4人で」


やってしまった。


謝罪の一言も言えなかった。


それでも、母さんは、


「信じてたわよ・・お帰り」


と、泣いていた。


それを見た俺も釣られて泣きそうになったが、そうはいかない。


俺は、食事の配膳を行う。


まずは、小さな手伝いから始めていくことを誓った。


「」を変える為に・・・

【映し出された心は人を映す】


「」の部分は、自分で入れてみて下さい。

どうでしたか・・・?感想などして頂けると嬉しいです!

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