レオナルド
評価とブクマ、ありがとうございます。
細々と書いていくのでよろしくお願いします。
レオナルドは僕と同じくステータスポイントに手をつけていなかった。
彼曰く、何をどう振りわければいいかサッパリで、友人から教えて貰うつもりだったらしい。
STRやDEXの意味も理解してない。
この手のゲームは初めてなのだろう。
レオナルドのジョブ・墓守はSTR・VITに割り振り、コンボを途切れさせないのが基本的な立ち回りだ。
攻撃(ATK)を高めるのも悪くはないが、モンスターに攻撃がヒットし続けると、相手が怯んだりするので。
無理してポイントを入れるよりか、武器でATKを上げる。
もしくは、僕の薬で攻撃を上げればいい。
クエストが終了し、続けて簡単なクエストを消化しようとパーティを継続したまま、次のクエストに入る前に。
僕はレオナルドにアドバイスする。
「すみません。VITを100、STRを50に設定してみて下さい。武器を振り続けても疲れないですよ」
だが、初対面の僕に対するレオナルドの心情は半信半疑のようだ。
「適当なこと言ってねーだろうな、お前」
「でしたら、STRだけ30にしてみて下さい。振った時、軽く感じるはずです」
現在、レオナルドのSTRは25ある。ポイントを5入れるだけなら、さほど問題ない。
僕に絡まれて面倒に感じた風に「STR?」と再度尋ねつつ、ポイントを入れるレオナルド。
次のクエストステージも森だった。
僕たちが挑戦している一面のクエストは、森のステージで統一されているようだ。
先程と同じ、剣士たちが前線に出ているうちに、僕はレオナルドと素材集めを始めた。
レオナルドに頼んで、草木を刈って貰うと。
やはり広範囲の草木を巻き込んで攻撃。
素材元になる草木の耐久は低いので、面白いくらいに草木は粒子となって消失。素材に変化し、地面に残されていく。
「おぉ、なんか振りやすくなってるな」
一通り草木を刈って、レオナルドはSTRが上がった実感を得る。
ついでに隠されていた宝箱を発見。僕は素材の回収に重点を置きたいので、宝箱の中身はレオナルドに回収して貰った。
レオナルドは、素材を効率的に落としてくれる。
僕は素材を元に薬を作り、彼をサポートする。
そう。
重要なのは強さではなく、相性。
他のジョブ同士も薬剤師と墓守のような関係を築けるが、僕にはどうでもいい。
僕が指摘しなくても、この界隈なら気づく者が現れるから。
武器のバスケットに重さが増した頃、レオナルドが改めて話しかけてきた。
「えーと……ルイス、だっけ? お前、こういうゲーム詳しいんだな」
「ええ、他のVRMMOで非戦闘のジョブやってました」
嘘だけど。単に専門用語など事前知識に目を通しただけだ。
しかし、レオナルドは前よりは警戒心を解いた様子。
「疑って悪かったな。初心者相手に不利なこと吹き込む奴がいるって、ダチに聞かされてよ」
「いえ。実際、そういう人もいます。イベントやギルドで上位の報酬狙いとか、冗談半分の嫌がらせして実況動画のネタにしたり」
無論、『マギア・シーズン・オンライン』も期間限定のイベント、ギルドと呼ばれるプレイヤー同士の集まりが存在する。ギルドを設立、加入で得られるメリットはある。
だけど……
「僕はギルドに入るつもりはないです。ああいうのはトラブルの原因になりますので」
VRMMOのような常時ボイスチャットの形態では、人間関係のトラブル。ギルド同士の、イベント外での争いや、通報、PK、例を挙げればキリない。
たかがゲーム。
現実の疲れを癒す、ストレス発散に使う娯楽の一つでトラブルなんて論外だ。
レオナルドは界隈の知識や常識を共感しにくい為か「ふーん」と他人事のような反応だった。