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嵐の前の

バンダースナッチ戦です。

長くなるので分割することにしました。


 メインクエスト六面ボスエリア。

 舞台は桜や梅などの春の華やかな花々がある山の中腹。そこにある廃墟の街。

 廃墟と言っても、白煉瓦の美しく舗装された道と、清楚な白壁が特徴の建築物無数に残されている。

 人間が一人っ子いないのを除けば、美しい街並みだ。


 僕とレオナルドは、街の大通りにポツンと取り残されるように、転移される。

 遂に来た難関。

 『ブライド・スティンク』をクリアして以降、すぐにも挑戦できたが、僕ら二人の装備を整えるのも含めて、作戦準備を念入りに計画するのに時間を要してしまった。

 今までの中で、最も余裕のない緊張巡らす戦いが始まる。


 この先に待ち受ける強敵を前に、コミカルな妖精『しき』が僕らの前に登場する。


「ついにここまで来たヨン……あそこに見えるのが、貴方たちの目指す『マザーグース』が住む館ヨン」


 彼女がそう説明すると。

 僕の顔と視点が勝手に向けられた山頂。そこに、怪しげな灯でぼんやり照らされる館がある。

 気乗りではない声色で『しき』は続けた。


「『マザーグース』は怒ってしまったヨン。もう人間の味方にならないと言ってるヨン……皆、妖怪だからきっとこうなるって分かってたみたいに言うヨン。本当にそうだったヨン?」


 珍しく個人的な意見を述べる『しき』。慌てて彼女は、僕らに助言を与えた。


「ここから先、何が起こるか分からないヨン。気を引き締めて行くヨン!」


 以上。

 肝心の『バンダースナッチ』の情報を与えずに『しき』は立ち去る。

 どうやら、設定で『バンダースナッチ』が表に現れる機会が少ない為、情報が少ないから『しき』もヒントを与えられなかった。らしい。

 これは考察の一つ。公式の情報ではないので、真相は定かではない。

 メタ的に「ノーヒントで攻略しろ」と運営からの挑戦状だと僕は解釈しているが……


 それはさておき。

 ボスである『バンダースナッチ』は、この時点で捕捉することができる。

 廃墟の街は僕たちが転移された通りを含め、四つの大通りがあり、それらは中央にある噴水広場に繋がっている。


 『バンダースナッチ』はだらしない恰好で、古びたこげ茶の中折れ帽で顔を覆って、ベンチに横たわって爆睡している。

 外見は、ラフな上着に白のタンクトップにジーンズ。

 ズボンや上着は所々、破けた痕が残されている。

 金髪のショートカット。顔立ちは日本人と異なる鼻の高い二十代の白人男性。


 僕たちが一定距離まで接近しなければ、バンダースナッチとの戦闘は開始されない。

 まず、四つある大通り全てに廃墟の建物内に袋詰めされた『砂』と庭などにある湿った『泥』を撒く。

 これで大通りに敷き詰める事で、最初の攻撃を対処する。

 他にも様々な対処方法があるが、僕達のジョブでは不可能だ。

 むしろ、これしかない。


 次にレオナルドのスキル構成。


 まず、先ほど入手した『無欲の寵愛』。

 攻撃速度上昇スキル『疾風の手腕』『山谷風の手腕』、夏エリアで購入可能な『赤城颪の手腕』。

 ダメージを受けない限り攻撃速度を超上昇させる『胆勇無双』『勁勇無双』。


 魂食い専用のスキル『霊魂不滅』。

 『ソウルオペレーション』発動時、装備する武器の本数分、ステータスが上昇。

 もう一つ。『鎮魂歌』というスキル。スキルによるMP消費中、攻撃力アップ。


 事前に食した新薬は主に攻撃力アップを中心にしたもの。

 本来なら『白金の鎧』も装備したかったが、仕方ない。

 武器は『季節石』を使った青薔薇の逆刃鎌から始まり、鉄と銀、木製の逆刃鎌。

 そして、ジョブ武器『死霊の鎌』だ。

 青薔薇の逆刃鎌は攻撃メインで使用する為、レオナルド自身が乗るのは木製の逆刃鎌になる。


 そして、最後に僕だ。

 最悪な事に、バンダースナッチに『挑発香水』は効かない。

 その理由は後に分かる。奴自体が色々と特殊極まっているせいだ。

 とにかく『挑発香水』が通用しないという事は、レオナルドに攻撃を集中させれない。


 僕に向けられるバンダースナッチの攻撃を、僕自身が回避しなければならない。

 レオナルドを『魔力水』などの薬品でサポートする為には、僕も生き残る必要がある。

 今回はとくにスキルを多用するから、僕がやられたら最初からやり直しだ。


 薬剤師系の長所であるVITの高さがあるので、スタミナは問題ない。

 食した新薬や使用する薬品もAGIアップ中心の構成だ。

 ステータスは万全。あとは、僕自身のプレイスキルだけ。

 今日までに、レオナルドと同じく三面のロンロン戦を利用した回避訓練を行った。

 ……彼と違って、僕は時間かかってしまったが。


 『ソウルオペレーション』を発動し、木製の逆刃鎌に乗ったレオナルドに僕が言う。


「奴が消えたら、砂が舞うかどうか見る。泥の音が聞こえるか耳を澄ます。わかったかい」


「おう……俺が聞くのもアレだけど。大丈夫か? ルイス」


「怒るに怒れない状況だからね。今回に限っては、僕の方が失敗できない。むしろ緊張しているよ」


 いよいよ、僕らはバンダースナッチに接近する。

 すると強制的に僕らは動きを止め、喋れなくなった。演出が入るからだ。 

 僕らに気づいたバンダースナッチが面倒臭く体を起こす。


「あ~あ……メンドくせ」


 奴が欠伸をかいた瞬間に姿()()()()

 それ以降、バンダースナッチの姿を捉える事はできなくなり。

 正体不明の攻撃がプレイヤー達に襲い掛かる……


 その正体を見抜くのに時間を要した原因が、かなり際物な理由で。

 SEすら聞こえないうえ、通常の視覚でも認知不可。

 自棄になったプレイヤーがエリア全て破壊しまくっても、何も分からず。一方的にやられたとか。

 色々、噂ばかり出回ったのは、バンダースナッチの性能が規格外すぎるが故だ。


 僕らは噴水広場を中心に、四方の大通りを注意深く観察し続けた。

 僕が警戒していた大通りに、ふわっと軽い砂が巻きあがる。

 「レオナルド!」と僕が彼に呼び掛けると、レオナルドは即座に鉄と銀の逆刃鎌、二本を『ソウルオペレーション』を回転させながら飛ばす。


 二本の鎌が大通りに入り、最終的に『何か』と衝突した。

 逆刃鎌の回転攻撃を幾度も受け続け、やがて『何か』が破壊され、小規模の暴発と共にその姿を現す。


 それは――四つ足の()()()()()()()()だった。


皆様、感想・誤字報告・評価・ブクマありがとうございます。

ギリギリ投稿ですみません。

明日も投稿しますので、よろしくお願いします。

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