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速さ

今回は少々長めです


 ギャラリーが集まっていたせいもあって、レオナルドが勝利を収めてからは騒がしかった。

 アイドル目当ての女性ファン達ほどじゃないが……

 他プレイヤーが地上に降りたレオナルドに近づこうとしたので、慌てて素材や武器を回収したり。

 ステータスポイントをどうしているとか、逆刃鎌のコツを聞かれたり……


 仕方なく一つ一つ対応終えてから、漸くホノカの元に迎えたレオナルド。

 ホノカは空中から降り、ギルドメンバー達に囲われている。

 受けたダメージや疲労を回復して貰っていたのだろう。


 ぎこちなく彼女達に向かったが、ついさっきまで友好的だったサクラが敵意剝き出しに魔法を飛ばす。

 レオナルドはギリギリで回避。

 だが、ミカンが「サクちん!!」と怒っている。

 流石に攻撃したサクラには、ギルドメンバーも擁護の姿勢はせず「駄目でしょ!」と叱っていた。


 レオナルドは憤りや然りじゃなく、申し訳ない思いで「ごめんな」と謝罪する。

 サクラは、ホノカが負けたのが悔しかったのだろう。顔真っ赤で泣きそうだ。

 ホノカも一息吐き、サクラの頭を撫でてやる。


「……ったく、気持ちはありがたく受け取っておくけど。ちゃんと謝れ」


 恥ずかしいのか、謝りたくないのか、大した速度ではない駆け足で逃げ出すサクラ。

 そこから、相変わらずブレブレ軌道の箒で上空に飛び立つ。

 凪が「私、追いかけます!」と逆刃鎌で追いかけて行った。

 代わりにミカンが謝罪する。


「サクちんがごめん……ダメージ受けてない?」


「あ、ああ。大丈夫、避けたから」


 ホノカが咳払いして「負けは負けだからな」とレオナルドを気にかけて言う。


「勝ったのはお前だよ。こっちが読み負けた。……気にするんじゃねーぞ」


「お、おう、なんか悪い。ありがとう」


「……参考にしたいから、色々聞いてもいいか」


「えっと……俺でよければ」


 ミカンを含めたギルドメンバーが、今の内にサクラを探すと二人を残して場から離れる。

 広々としたマルチエリア。

 風が吹き抜ける音が耳につく中、話は先ほどの手合わせの内訳になった。


「……さっきの不意打ち。狙ってたのかよ」


「狙って……何から説明すればいいだろ。最初は武器を警戒してんのかなって思ったけど、武器じゃなくて()()()()()()()()()()()()んだよな?」


「…………」


「色々試したけど、ステータス的に考えてもホノカの方が距離取れるぐらい速いのは分かったから、不意打ちしかねーかなって」


「そんなもんか」


「ああ、うん。心理的な作戦してくるかって期待してたなら、悪い。どっちかってと、何でお前が俺に手合わせして来たのか、勝っていいのか負けた方がいいのかって考えててさ」


 ホノカが一度は目を丸くするが、即座に呆れと憤りが混じった表情で「お前なぁ」と言う。

 しかし、レオナルドなりに結論は導いている。


「俺に苛立ったのも、あるんだろーけど」


「マジでイラッてきた」


 正直にホノカが返答してくるものだから、素直に「ホント悪かった」と謝罪するレオナルド。

 ともあれ、彼は話を続けた。


「俺と手合わせする理由があんなら、特訓相手に選んだのかなってさ」


「………」


現実(リアル)で修業したって聞いたけど、大鎌みてーなデカくて自在に動く障害物を回避する練習とか、普通は無理だよな。それにホノカんところのメンバーって戦闘特化じゃないって聞いてたから、練習相手もいなかったんだろうし。だからその、勝ってもさっきの事、ちゃんと謝ろうって」


「小学生かよ。お前」


 そんな突っ込みを中学生にされたレオナルド。

 一方で、彼自身は一つ心残りがある。


「聞きたかったんだけどさ。あの不意打ち、避けられたって事はそんなに速くねぇってことか……?」


「あん?」


 ホノカが顔をしかめ、しばし悩んだ後に答える。


「あれな。銃弾よりは遅かった」


 比較対象を聞いて、反応に困るレオナルド。

 つまり、速くないのか。平均的には速い部類に属するのか。

 率直にレオナルドは尋ねる。


()()使()()()()と比べたらどうだ?」


「箒ぃ? ステータス次第かもしんねーけど、さっきの『ソウルターゲット』込みの奴だったら余裕で追い越せるな」


「箒に魔法陣みてーなアレで加速しても余裕か?」


「………『弥生山』にいる暴走族か」


「おう。調べても魔法陣の奴が、全然わかんなくてさ」


 レオナルドがホノカ相手に試したかったのは『速さ』。

 素材を採取できず、未だに足を運んでいない『ネモフィラ弥生山』で追いまわしてきた暴走族の魔法使いをどうにかしたいと考えており。

 自分よりも速い相手だと分かれば向こうも諦めてくれるか、ちょっとした切っ掛けで話が出来るかも。

 そんな希望を、レオナルドは抱いていた。


 ホノカは更に険しい表情を浮かべる。


「強くなりてぇのは、()()()やっつける為かよ……」


「ああ、いや。俺の目標はカサブランカだよ。多分、お前と同じ。アイツは、素材集めを邪魔してくるから、どーにかしたいってだけで……通過点?」


 ふと、レオナルドが気づく。


「アイツと会った事あんのか?」


「ウチらで素材集めした時、邪魔して来たからな。あのよくわかんねぇブーストも、どういう原理か他の奴らも知らねぇ。チートじゃねぇかって運営に確認してる奴いるけど、アカウント停止されてねぇならチートじゃねぇんだろうな」


 そっぽ向きながら、更にホノカは付け加える。


「ウチのスキルにAGIだけ爆上げする『疾風迅雷』ってのがあるけど、それ使っても追い付けねぇんだよ。あん時は新薬も食ってたから、マジで納得いかねー。……粘って追い詰め続けたら、向こうから離脱したけどな」


「マジかよ……今日、行かなくてよかった。教えてくれてありがとう」


 これ以上、速度を上げるには――

 いっそのこと、新たに『季節石』の逆刃鎌を作って『大鷲の加護』を五積みするか。

 ジョブスキルを見直すべきか。

 改良の余地はありそうだ。色々と考えるレオナルドに、ホノカは言う。


「あのいけ好かない『ヤクザ』に取って来いとか言われてんのか? 嫌だったら嫌って言い返せよ」


「や、ヤクザ?」


()()()! あの白髪の奴。涼しい顔して、平気で嘘つく糞野郎じゃねーか」


 間違いなくルイスの事だと、レオナルドは思った。

 しかし、仮面を被り、フードで身を包んでいるので、本当にホノカがレオナルドだと気づいているか分からない。

 所謂、ハッタリかもしれない。

 レオナルドは頭をかきつつ、彼女に返事をする。


「……多分、人違いだと思うんだけど」


「馬鹿かよ。声と行動でバレバレだっつーの」


 声はともかく、行動とは。

 レオナルドがどう対応するべきか悩んでいると、ミカン達がぐずっているサクラと共に戻って来た。

 凪が控えめな態度でサクラに促す。


「サクラちゃん……」


「…………………………………………ごめんなざい」


 嫌々謝罪をする少女に自分が情けなく、レオナルドも「俺こそごめん」と返事をするが。

 再び、サクラはレオナルドをどついて逃げるものだから。

 全員がやれやれな気分になったのは、言うまでも無かった。

皆様、感想・誤字報告・評価・ブクマありがとうございます。

本日も投稿が遅れてしまい申し訳ありません。


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