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出会い

 

 僕が移動させられたのは、春の陽気を感じさせられる穏やかな自然あふれる最初の町。

 ゲームでは第一層と呼ばれる『春エリア』だ。

 綿毛になっていない黄色の花を咲かせるタンポポに、桜や梅の木が植えられ。

 建物は構造が様々あるけど、掲示板から橋まで木製だけ。レンガや石造りのものは一切無い。


 さて。

 色々散策をしたいが、余裕ある時にでもすればいい。

 今だけは誰もが僕と同じ、ログインしたてのプレイヤーばかりだ。

 報酬が貰えるクエストを受けられる『集会所』に足を運んでみると、様々なジョブのプレイヤーで満員状態である。混み合った中に入りにくそうな素振りをするプレイヤーも外に幾人もいた。


「君。これからクエスト受ける感じ?」


 自然に話しかけてきた剣士の男性。

 僕が「そうです」とにこやかに答えれば、彼は持ち掛けてきた。


「なら、俺と一緒にパーティ組まないか? 君の――薬剤師は戦闘向きじゃないだろ」


「ありがとうございます。そうだ。折角ですから他にも誘いましょう。最大何人までパーティを組めますか?」


「12人だな。人数多い方が楽だし、いいぜ」


 ノリがいい剣士の彼は、僕がお願いする必要なく、面白さがてらで他のジョブのプレイヤーを誘ってくれた。


 自ら初心者と名乗った鍛冶師の少女、盾兵の初老男性、武士の女性。


 リアルで顔見知りっぽい雰囲気を持つ魔法使い、弓兵、盗賊の女性三人組。


 無口で会釈するだけの銃使いの女性。


 よろしくと愛想ない挨拶する墓守の青年。


 一人一人に丁寧な挨拶で回って来た刺繡師の女性。


 早くクエストに行きたいと訴えるように画面を開いたり閉じたり、忙しない格闘家の少女。


 リーダーを務める剣士。そして、薬剤師の僕。




 クエスト開始早々、先陣を切って飛び出したのは案の定、格闘家の少女だった。

 しかし、彼女は動きが機敏だ。

 バーチャル慣れしているみたいで、他のVRMMO経験者だと分かる。

 遅れてリーダーの剣士。魔法使い、弓兵、盗賊の女性三人組が先頭を走る。


「くっそ早いな。AGIに極振りしてるのか、アイツ……!?」


 剣士の彼がそうボヤいているのが聞こえる一方。

 前に出ようか戸惑い気味の鍛冶師の少女と武士の女性に、盾兵の老人が「俺が盾になってやるから」と安心させている。


 銃使いの女性は前線の邪魔にならないよう、遠距離射撃で援護。

 精度ある腕前なので、彼女もVRMMOかVRのシューティングゲームをやり込んでいるようだ。


 刺繡師の女性は、武器の大鋏を興味深く観察し続けている。


 最後に、墓守の青年はつまらなそうに欠伸をかいていた。

 僕は墓守の彼に話しかける。


「行かないんですか?」


「あぁ? 邪魔になるだろ。俺の武器」


 墓守の武器は『大鎌』。攻撃範囲が広いのが特徴で、攻撃力は控えめ。

 パーティを組んでいるプレイヤー同士は、ダメージは与えないが、広範囲攻撃の巻き込みや吹き飛ばしが邪魔になる。前線にああもプレイヤーが密集していると、参戦しにくい。


 にしても。

 積極性がないのは、彼自身興味なくゲームを始めたからに違いない。

 差し詰め、親しい友人に誘われて、仕方なくと言った様子。

 アバターも、当たり障りない顔立ちだが眉間にしわを寄せた金髪のショートヘア。

 墓守の初期装備服のボロマフラーとダボダボしい長袖長ズボンの容姿で、貧困民やホームレスを彷彿させるやぐされた印象を与える。


 無難。

 いいや、薄々感づいていたが、僕――薬剤師に必須なのは墓守の仲間だ。


「あの、少し手伝って欲しいんですが」


「は? なにを」


 ぶっきらぼうな返事をされたが臆することなく、僕は彼に素材集めの協力を頼んだ。

 これが彼、墓守のプレイヤー・レオナルドとの出会いだった。

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